転生王子は何をする?
第115話 突撃開始です 4
「注文は?」
席に着くとマスターが聞いてきたので、事前にしていた打ち合わせ通りにトリスが応対する。
「う〜ん、そうだな。取り敢えずコーヒーを。こっちの連れにもね。後は、壁に耳あり、だな。」
呑気にコーヒーを頼むトリスを見て、『え?』という顔をするホルス。しかし本来の目的まで忘れている訳では無いので、ちゃんとマスターに目的を伝える。
「障子に目あり。…合格だ。コーヒーにミルクと砂糖は?」
正しい合言葉である事を確認した両者は、お互いに視線を合わせて頷く。しかしすぐには本題に移るつもりは無いらしく、テキパキとコーヒを淹れる準備を整えながら、トリスに聞いてくる。
「うん?あ〜、俺はブラックで。連れには砂糖1杯、ミルクは2杯で。」
「分かった。取引はその後だ。暫く待ってろ。」
「おう。美味いコーヒーを淹れてくれよ?」
「分かってる。手は抜かないさ。一応こっちが本業だからな。」
そう言いながら、マスターは自信ありげな様子で豆を挽き始める。
この世界では、コーヒーは元々無かったのだが、数年前とある迷宮に入っていた冒険者トリスが、たまたま火属性魔法で敵を仕留めたところ、たまたま近くに生えていた、それまで食用にもならないとされていた植物に燃え移らせてしまった。そしてその燃えカスの実から、非常に芳ばしいいい香りがしてきたため、口に運んだところそのままでは食べられたものでは無かったため、これまたたまたま持ち歩いていたお湯、牛乳、砂糖に種を砕いたものを入れて飲んだところ、とても美味しかったので、そのまま様々な人に広まったとされている。
勿論トリスが意図的にやった事なのだが、何でコーヒーというものを知っていたのかの説明が面倒くさかったため、前世でのコーヒーにまつわる有名な逸話(山火事の後、コーヒーの実からいい匂いがしたので、実を割いて種を食べたところ、美味しかったので火で炙って食べるようになった)を参考に、嘘をでっち上げたのだった。
結果として、ここ数年でトゥール王国内外問わず様々な国で愛飲されるようになってきているため、別に悪いことではないのだろう。
長々と説明している内に、どうやらコーヒーが完成したようだ。注文通り砂糖とミルクを調整して、2人に差し出してくる。
「待たせたな。」
「ありがとう。」
「あ、ありがとうございます。」
中々話が進まない事にホルスは若干焦りを感じるが、飲まなければ勿体無いので受け取って礼を言う。しかしそんな気分は一瞬で吹き飛ばされてしまう。
「うん、これは美味いな。」
「美味しい…。」
思わず目的も忘れ、その美味しさに感動する2人。暫くそのまま、コーヒーに舌鼓を打つのだった。
「で、何が聞きたい?とはいえ、一応依頼は受けてるんだったな。依頼主からは、黒髪と金髪の2人組が来たら伝えろとの事だったが、そっちで寝てる女性、フロレンティーナ様に関しては気にしない方が良いのか?」
トリス達がコーヒーを飲み終わると、早速マスターが本題を切り出す。が、その前にホルスが抱えてきた人物が気になったようで、視線をカウンター席の椅子を利用して寝かせているフロレンティーナに目を向ける。
「おう、気にしないでくれ。マスターも、面倒ごとに巻き込まれるのは嫌だろ?」
そんなマスターに、実ににこやかな笑顔で、『気にするな』と圧力をかけるトリス。並大抵の者であれば、その圧力に怖気付くところだが、マスターは何の気負いも見られない様子で、普通に口を開く。
「まぁな。じゃあ、手短に話すぞ。
まず、フロレンティーナ様などに暗示をかけているのは、トートと呼ばれる女の宮廷魔導師だ。平の魔導師なんだが、何故か王城の一角に部屋を貰って、そこに住んでいる。」
「フロレンティーナ様、などに?」
マスターの言い方に、若干引っかかりを覚えたトリスは、話を遮って質問を挟む。
「ん?あぁ、そうだ。トートは王族全員に、多少の深さの違いはあれど暗示をかけている。そのせいで王城どころか国内のどこでも好き放題出来るみたいだな。」
顔色一つ変えずに、マスターは淡々と情報を語っていく。
「ほほぅ、なるほど。道理で大人しく暗示がかけられる訳だ。普通なら誰か親しい人間が気付いてもいいだろうしな。んで?」
「トートはどうやら、オリジナルの闇属性魔法を使うらしいな。」
「!オリジナルか。そりゃ厄介だな。」
「うん、そうだね。ちょっと厳しい戦いになるかもね。」
オリジナル、という言葉を聞いて、難しい顔をするトリスとホルス。
この世界では詠唱により魔法が体系化されているが、個人個人で開発する者も少なくない。しかしそれらの効果は基本的には大したこともなく、また魔力の消費量も一般のものに比べ多かったりなど、実用化には耐えられないものばかりだ。
しかし、一国を裏から操れるとなると、余程強力な魔法を使えるとみて良い。そして強力な魔法がつかえるのならば、スキルレベルも高いはずだ。恐らくはホルスに匹敵するだろう。そんな魔導師のオリジナル魔法がヤワな筈がない。そのためトリス達は戦略の練り直しが必要となったのだ。
そんな事を考えている内に、マスターは話を続ける。
「トートって奴の正体は、恐らくは元のフォルツ王国王家の直系一族だ。分かりやすく言えば、自身の血筋の復興を狙う、旧王家の生き残りってとこだな。」
「「な!?旧王家は滅んでいなかった!?」」
衝撃の事実に、トリスとホルスは息ぴったりに叫ぶのだった。
席に着くとマスターが聞いてきたので、事前にしていた打ち合わせ通りにトリスが応対する。
「う〜ん、そうだな。取り敢えずコーヒーを。こっちの連れにもね。後は、壁に耳あり、だな。」
呑気にコーヒーを頼むトリスを見て、『え?』という顔をするホルス。しかし本来の目的まで忘れている訳では無いので、ちゃんとマスターに目的を伝える。
「障子に目あり。…合格だ。コーヒーにミルクと砂糖は?」
正しい合言葉である事を確認した両者は、お互いに視線を合わせて頷く。しかしすぐには本題に移るつもりは無いらしく、テキパキとコーヒを淹れる準備を整えながら、トリスに聞いてくる。
「うん?あ〜、俺はブラックで。連れには砂糖1杯、ミルクは2杯で。」
「分かった。取引はその後だ。暫く待ってろ。」
「おう。美味いコーヒーを淹れてくれよ?」
「分かってる。手は抜かないさ。一応こっちが本業だからな。」
そう言いながら、マスターは自信ありげな様子で豆を挽き始める。
この世界では、コーヒーは元々無かったのだが、数年前とある迷宮に入っていた冒険者トリスが、たまたま火属性魔法で敵を仕留めたところ、たまたま近くに生えていた、それまで食用にもならないとされていた植物に燃え移らせてしまった。そしてその燃えカスの実から、非常に芳ばしいいい香りがしてきたため、口に運んだところそのままでは食べられたものでは無かったため、これまたたまたま持ち歩いていたお湯、牛乳、砂糖に種を砕いたものを入れて飲んだところ、とても美味しかったので、そのまま様々な人に広まったとされている。
勿論トリスが意図的にやった事なのだが、何でコーヒーというものを知っていたのかの説明が面倒くさかったため、前世でのコーヒーにまつわる有名な逸話(山火事の後、コーヒーの実からいい匂いがしたので、実を割いて種を食べたところ、美味しかったので火で炙って食べるようになった)を参考に、嘘をでっち上げたのだった。
結果として、ここ数年でトゥール王国内外問わず様々な国で愛飲されるようになってきているため、別に悪いことではないのだろう。
長々と説明している内に、どうやらコーヒーが完成したようだ。注文通り砂糖とミルクを調整して、2人に差し出してくる。
「待たせたな。」
「ありがとう。」
「あ、ありがとうございます。」
中々話が進まない事にホルスは若干焦りを感じるが、飲まなければ勿体無いので受け取って礼を言う。しかしそんな気分は一瞬で吹き飛ばされてしまう。
「うん、これは美味いな。」
「美味しい…。」
思わず目的も忘れ、その美味しさに感動する2人。暫くそのまま、コーヒーに舌鼓を打つのだった。
「で、何が聞きたい?とはいえ、一応依頼は受けてるんだったな。依頼主からは、黒髪と金髪の2人組が来たら伝えろとの事だったが、そっちで寝てる女性、フロレンティーナ様に関しては気にしない方が良いのか?」
トリス達がコーヒーを飲み終わると、早速マスターが本題を切り出す。が、その前にホルスが抱えてきた人物が気になったようで、視線をカウンター席の椅子を利用して寝かせているフロレンティーナに目を向ける。
「おう、気にしないでくれ。マスターも、面倒ごとに巻き込まれるのは嫌だろ?」
そんなマスターに、実ににこやかな笑顔で、『気にするな』と圧力をかけるトリス。並大抵の者であれば、その圧力に怖気付くところだが、マスターは何の気負いも見られない様子で、普通に口を開く。
「まぁな。じゃあ、手短に話すぞ。
まず、フロレンティーナ様などに暗示をかけているのは、トートと呼ばれる女の宮廷魔導師だ。平の魔導師なんだが、何故か王城の一角に部屋を貰って、そこに住んでいる。」
「フロレンティーナ様、などに?」
マスターの言い方に、若干引っかかりを覚えたトリスは、話を遮って質問を挟む。
「ん?あぁ、そうだ。トートは王族全員に、多少の深さの違いはあれど暗示をかけている。そのせいで王城どころか国内のどこでも好き放題出来るみたいだな。」
顔色一つ変えずに、マスターは淡々と情報を語っていく。
「ほほぅ、なるほど。道理で大人しく暗示がかけられる訳だ。普通なら誰か親しい人間が気付いてもいいだろうしな。んで?」
「トートはどうやら、オリジナルの闇属性魔法を使うらしいな。」
「!オリジナルか。そりゃ厄介だな。」
「うん、そうだね。ちょっと厳しい戦いになるかもね。」
オリジナル、という言葉を聞いて、難しい顔をするトリスとホルス。
この世界では詠唱により魔法が体系化されているが、個人個人で開発する者も少なくない。しかしそれらの効果は基本的には大したこともなく、また魔力の消費量も一般のものに比べ多かったりなど、実用化には耐えられないものばかりだ。
しかし、一国を裏から操れるとなると、余程強力な魔法を使えるとみて良い。そして強力な魔法がつかえるのならば、スキルレベルも高いはずだ。恐らくはホルスに匹敵するだろう。そんな魔導師のオリジナル魔法がヤワな筈がない。そのためトリス達は戦略の練り直しが必要となったのだ。
そんな事を考えている内に、マスターは話を続ける。
「トートって奴の正体は、恐らくは元のフォルツ王国王家の直系一族だ。分かりやすく言えば、自身の血筋の復興を狙う、旧王家の生き残りってとこだな。」
「「な!?旧王家は滅んでいなかった!?」」
衝撃の事実に、トリスとホルスは息ぴったりに叫ぶのだった。
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コメント
血迷ったトモ
えぇ、たまたまデス。ハイ。
かオース⤴︎
たまたまw