転生王子は何をする?
第111話 学園モノといえば、やはり転校生ネタですね 9
「えっと、マジでやるの?」
呆れるほど手際の良いトリスにより準備が整った2人は夜になってから、作戦の遂行に必要なので、とある要人の居る屋敷の敷地内にある、見張り用(警戒態勢中のみ使用)の小高い塔の屋根の上に居た。
「えぇ、やりますとも。その方が効率的かつ確実なのはホルスも分かってるっしょ?」
「う、うん…。はぁ、しょうがないか。ふぅ…。」
イマイチ釈然としないが、トリスの言うことは間違っていないのでホルスは覚悟を決めて感覚を研ぎ澄ませる。
そして辿るは覚えのある魔力。ホルスはスキル『魔力感知』というものを使い、敷地内の隅々に注意を向けていく。『魔力感知』とは、ありとあらゆる生物が個々に発する魔力の波長を感じ取るというスキルだ。通常(スキルのレベルが3〜4)では『あ、あそこに魔力ある』くらいの精度であるのに対して、ホルスの場合は『あ、この魔力は〇〇のだ』となるのだ。
そんな馬鹿げた性能のスキルで、とある人物の位置を確認する。
「…どう?」
「ん。あったよ。トリスの紹介してくれた情報屋の言う通り、あそこの屋敷の一角に1人で居るみたい。」
トリスからの問いかけに、ホルスは塔から100メートルほど離れた場所にある屋敷を指差して答える。
「ほほぅ。周囲に人は居ないのか。こりゃ好都合だけど、物騒な気がしないでもないけどな。」
侵入した身で物騒も何も無い気がするのだが、トリスは呆れたように呟く。
「まぁまぁ。警備兵の方々も、まさか結界を素通りして来るとは到底考えないでしょ。本当にあの飛行船はぶっ壊れ性能だよね…。」
どこか遠い目をしているホルス。『怠慢じゃね?』とでも言いたげなトリスとは違い、寧ろ警備兵を哀れんでいるようだ。
彼らの会話から分かるように、魔道具により要塞のように張り巡らされた結界(レーダーによる感知のようなもの)を素通りして上空からやって来たのだ。
世に出回っている魔道具では、結界の完全無効化など出来ないので、警備兵達の一定の油断は仕方の無い事だろう。
「よし、じゃあ作戦通りで行こうか。」
「うん。…くれぐれも彼女を傷付けないように気をつけようね。」
「おうとも。」
トリスの返事を最後に、2人は無言で頷き合い同時に屋根から飛び降りる。
高さは20メートルほどであったのに、一切音を立てずに降り立ち、これまた音もなく一気にターゲットが居る部屋のすぐ外まで辿り着く。
窓から灯りが漏れているので、まだ彼女が起きている事が分かる。
「…(スッ)。」
「…(コクコク)。」
手で突撃と合図したトリスに、ホルスは無言で頷いてから、不用心にも鍵が開いている窓からスルリと忍び込む。
そしてトリスもそれに続き、部屋に入っていく。土足だが、ヨーロッパに近い文化を持っているトゥール王国では、全く問題無く躊躇せずに入れるのだ。
「どうも、こんばんは。」
トリスの入った先では、ホルスがベッドに座っているターゲットに向かって挨拶をしていた。
そしてそのターゲットは、男2人がいきなり部屋に乱入して来たというのに、悲鳴をあげることも無く呑気にホルスに笑顔を向ける。
「あら、ホルスト様。こんな時間に、夜這いにでもいらしたのですか?」
「あら、フロレンティーナ様。私の事は完全に無視でございますか?」
ターゲット、フロレンティーナに無視をされたトリスは、彼女自身の言葉で無いと分かっていながらも、言い返さずにはいられなかったようで、コメカミに青筋を浮かべながら、フロレンティーナを真似して言う。
「ホルスト様?襲っては下さらないのですか?」
しかしフロレンティーナはトリスの事など一切意に介さずに、ホルスを誘うように蠱惑な笑みを作る。
「…完全に決まりだね。」
「…だな。」
そんなフロレンティーナを見て、やはり操られているという事を完全に確信した2人は、眉を顰めながら頷いている。
「さて、フロレンティーナ様。」
「ご同行願いますよ。『睡眠』。」
「え…。」
ホルスによる闇属性中級魔法により、意識が刈り取られてしまうフロレンティーナ。操られているとはいえ、思考を抑えられているだけなので眠らされては洗脳の効果をなさずにいるようだ。
「うし。作戦完了だな。おい、誰かが来る前に、さっさとずらかるぜ。」
「トリス…。それ完全に悪役のセリフだよね…。」
作戦開始前に、人1人抱えた状態で上手く移動出来るか分からんというトリスの主張により、ホルスが抱えることが決定していたため、フロレンティーナを優しく抱きかかえつつ、ホルスはトリス物言いにツッコミを入れる。
「あ、そこ足跡消しとかないと。あ、窓枠の指紋も消しとくか。」
嬉々として特製の魔道具で証拠隠滅を図るトリス。
一方フロレンティーナを抱えているホルスは、トリスのやっている事が具体的には分からないようだったが、意味は伝わったようで虚ろな目をしてボヤいていた。
「よく分かんないけど、絶対犯罪者をイメージしてるよね…。そして僕が共犯者…。うぅ…。言い逃れ出来ないよね…。」
うら若き女性の部屋に侵入した挙句、眠らせて連れ去るという鬼の所業に加え、トリスの謎の行動により嘆くしかないホルスであった。
呆れるほど手際の良いトリスにより準備が整った2人は夜になってから、作戦の遂行に必要なので、とある要人の居る屋敷の敷地内にある、見張り用(警戒態勢中のみ使用)の小高い塔の屋根の上に居た。
「えぇ、やりますとも。その方が効率的かつ確実なのはホルスも分かってるっしょ?」
「う、うん…。はぁ、しょうがないか。ふぅ…。」
イマイチ釈然としないが、トリスの言うことは間違っていないのでホルスは覚悟を決めて感覚を研ぎ澄ませる。
そして辿るは覚えのある魔力。ホルスはスキル『魔力感知』というものを使い、敷地内の隅々に注意を向けていく。『魔力感知』とは、ありとあらゆる生物が個々に発する魔力の波長を感じ取るというスキルだ。通常(スキルのレベルが3〜4)では『あ、あそこに魔力ある』くらいの精度であるのに対して、ホルスの場合は『あ、この魔力は〇〇のだ』となるのだ。
そんな馬鹿げた性能のスキルで、とある人物の位置を確認する。
「…どう?」
「ん。あったよ。トリスの紹介してくれた情報屋の言う通り、あそこの屋敷の一角に1人で居るみたい。」
トリスからの問いかけに、ホルスは塔から100メートルほど離れた場所にある屋敷を指差して答える。
「ほほぅ。周囲に人は居ないのか。こりゃ好都合だけど、物騒な気がしないでもないけどな。」
侵入した身で物騒も何も無い気がするのだが、トリスは呆れたように呟く。
「まぁまぁ。警備兵の方々も、まさか結界を素通りして来るとは到底考えないでしょ。本当にあの飛行船はぶっ壊れ性能だよね…。」
どこか遠い目をしているホルス。『怠慢じゃね?』とでも言いたげなトリスとは違い、寧ろ警備兵を哀れんでいるようだ。
彼らの会話から分かるように、魔道具により要塞のように張り巡らされた結界(レーダーによる感知のようなもの)を素通りして上空からやって来たのだ。
世に出回っている魔道具では、結界の完全無効化など出来ないので、警備兵達の一定の油断は仕方の無い事だろう。
「よし、じゃあ作戦通りで行こうか。」
「うん。…くれぐれも彼女を傷付けないように気をつけようね。」
「おうとも。」
トリスの返事を最後に、2人は無言で頷き合い同時に屋根から飛び降りる。
高さは20メートルほどであったのに、一切音を立てずに降り立ち、これまた音もなく一気にターゲットが居る部屋のすぐ外まで辿り着く。
窓から灯りが漏れているので、まだ彼女が起きている事が分かる。
「…(スッ)。」
「…(コクコク)。」
手で突撃と合図したトリスに、ホルスは無言で頷いてから、不用心にも鍵が開いている窓からスルリと忍び込む。
そしてトリスもそれに続き、部屋に入っていく。土足だが、ヨーロッパに近い文化を持っているトゥール王国では、全く問題無く躊躇せずに入れるのだ。
「どうも、こんばんは。」
トリスの入った先では、ホルスがベッドに座っているターゲットに向かって挨拶をしていた。
そしてそのターゲットは、男2人がいきなり部屋に乱入して来たというのに、悲鳴をあげることも無く呑気にホルスに笑顔を向ける。
「あら、ホルスト様。こんな時間に、夜這いにでもいらしたのですか?」
「あら、フロレンティーナ様。私の事は完全に無視でございますか?」
ターゲット、フロレンティーナに無視をされたトリスは、彼女自身の言葉で無いと分かっていながらも、言い返さずにはいられなかったようで、コメカミに青筋を浮かべながら、フロレンティーナを真似して言う。
「ホルスト様?襲っては下さらないのですか?」
しかしフロレンティーナはトリスの事など一切意に介さずに、ホルスを誘うように蠱惑な笑みを作る。
「…完全に決まりだね。」
「…だな。」
そんなフロレンティーナを見て、やはり操られているという事を完全に確信した2人は、眉を顰めながら頷いている。
「さて、フロレンティーナ様。」
「ご同行願いますよ。『睡眠』。」
「え…。」
ホルスによる闇属性中級魔法により、意識が刈り取られてしまうフロレンティーナ。操られているとはいえ、思考を抑えられているだけなので眠らされては洗脳の効果をなさずにいるようだ。
「うし。作戦完了だな。おい、誰かが来る前に、さっさとずらかるぜ。」
「トリス…。それ完全に悪役のセリフだよね…。」
作戦開始前に、人1人抱えた状態で上手く移動出来るか分からんというトリスの主張により、ホルスが抱えることが決定していたため、フロレンティーナを優しく抱きかかえつつ、ホルスはトリス物言いにツッコミを入れる。
「あ、そこ足跡消しとかないと。あ、窓枠の指紋も消しとくか。」
嬉々として特製の魔道具で証拠隠滅を図るトリス。
一方フロレンティーナを抱えているホルスは、トリスのやっている事が具体的には分からないようだったが、意味は伝わったようで虚ろな目をしてボヤいていた。
「よく分かんないけど、絶対犯罪者をイメージしてるよね…。そして僕が共犯者…。うぅ…。言い逃れ出来ないよね…。」
うら若き女性の部屋に侵入した挙句、眠らせて連れ去るという鬼の所業に加え、トリスの謎の行動により嘆くしかないホルスであった。
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コメント
血迷ったトモ
ありがとうございます。
これから8月の最初の方までは、諸々の事情で鬼忙しくなってしまうので、更新の頻度が今以上に不定期になってしまいますが、その間も応援してくだされば有難いです。
かたりあ
面白いです。
次も期待しています!