転生王子は何をする?
第97話 少しは実力を見せないとですね
高まる緊張の中、それを破ったのはホルスだった。
「ふっ!」
手刀で胴を薙いでくるホルス。
「っ!」
それを素早くしゃがみ込み、トリスは避ける。そしてそのままホルスの懐に潜り込み、軽くジャブを放つが案の定軽くいなされてしまう。
「トリス、本気でやってる?」
「いや?というか本気出したら駄目でしょ。確実に皆さん目で追えなくなるし、下手したらここじゃあ狭すぎる。」
お互いに果敢に攻めながらも呑気に会話する。常人ならばとっくにへばっているような運動量をこなしていながらも、2人は汗を一切かいていない。
このテニスコートの約1.5倍ほどの広さの試合会場では、彼らは本気で動けないらしい。
「そんな事よりも、トリス少し攻めあぐねてるよね?」
「ん〜、まぁね〜。俺どっちかと言えば、カウンターの方が得意だし。」
「あ〜、やっぱり?トリスはいつも相手の動きを読んで、弓で射抜いてるけど、自分からはあんまり攻めてないよね。」
トリスにとって天敵となるのが、ある程度の実力がある持久戦を行う相手だ。因みにホルスはオールラウンダーなので、相手に合わせて戦いやすいように動くので、特に不得手とする相手は居ない。
そのためトリスにとってホルスは、少々戦いづらい相手となっている。
「う〜ん…。つまらないから、攻めてくんない?」
トリスは面白くなさそうに提案する。
するとホルスは満面の笑みで言う。
「りょーかい。僕は攻撃仕掛ける方が好きだから、全然問題は無いよ。」
「知ってるよ。ホルスはドSだもんな。」
「どえす?何それ?」
「ホルスみたいな奴のことを、とある業界ではそう呼ぶんだよ。」
「む。何か気に入らない。それ、絶対悪意あるよ…ね!」
ホルスは一層笑みを濃くすると、最初の時のように勢い良く飛び込んでくると同時に右ストレートを放つ。
-待ってました!-
トリスは内心そう思いながら、ホルスの右手首に左手を添え、右手で腕を掴むとそのまま体の向きをホルスと正反対にする。
「え?」
「どりゃぁ!」
そう。所謂背負い投げである。こちらの世界には、関節をキメたり、普通に殴る武術の流派はあるものの、日本の柔道のような流派は無い。
そのため何をするのか判断のつかなかったホルスは、その一瞬の迷いのため綺麗に体が宙を舞ってしまう。
-これか!トリスが狙っていた事は!確かにこのままいけば背中から落ちる!けど!-
「な!?」
決まったと思っていたトリスは、ホルスの対処に思わず驚きの声をあげてしまう。それはそうだろう。何故ならばホルスは、地面についた左手1本で全ての衝撃を吸収してしまったのだから。
-おいおい!どこの漫画だよ!…あ、この世界はファンタジーなんだったな。-
心の中で現実逃避していると、ホルスの驚異的な力によって逆にトリスの体はホルスによって投げられてしまう。
「ふん!」
「のわっ!」
だが体勢が悪かったためか、地面に叩きつけるとはいかずに、そのまま空中に投げ出す形となってしまう。そのためトリスは何とか空中で体勢を整え、次のホルスの攻撃に向けて構える。
だがその瞬間、いつの間にか背後に回っていたホルスが、トリスの首筋に手刀を当てていた。
「僕の勝ちで良い?」
「…降参だ。あ〜あ、決まったと思ったんだけどな。」
構えを解いたトリスは、脱力しながら呟く。
「僕も一瞬何が起こったのか分からなかったよ。トリスのさっきの技凄いね!どこかで習ったの?」
ホルスは笑顔で聞いてくる。どうやら背負い投げが、彼はお気に召したようだ。
「え〜っと、何かの本で書いてあったのを、実践してみただけだよ。特に習っちゃいないけど。」
「え?さっき初めてやったの?そのわりには、結構流れるように綺麗にきまったよね?」
トリスの言葉に驚くホルス。確かに熟練者とは言えないようなぎこちなさはあったが、それでも一度もやった事が無いというのは、到底信じられない動きだったからだ。
「あ〜、その、多分俺が相手の動きを読むのが得意だからじゃないか?ホルスが右ストレートで来るのは、大体予想してたから、結構脳内で動きを試せたし。」
柔道は体育の授業で習ったきりではあるが、こちらの世界で敵を傷付けずに無力化する時に便利なため、ここ10年で何回かは使っているトリス。
しかし今更言葉を訂正するのもなんなので、若干吃りながらも、どうにかそれらしい事を言う。
「あ〜、確かにそうだよね。僕はさっき結構楽しんでたから、攻撃が直線的になるのは当然トリスは読んでたよね。となれば後は向かってくる僕に合わせて動けばいいだけだし。うん、納得した。」
「そう?なら良いけど。他に質問は?」
「あ、じゃあ他に技は無いの?」
「お〜、あるぞ〜。んじゃあ、こういうのは──」
周囲が呆然としている中、トリスは軽く柔道のレクチャーをホルスにしていく。
こうして、新学期早々のイベントは幕を下ろしたのだった。
「ふっ!」
手刀で胴を薙いでくるホルス。
「っ!」
それを素早くしゃがみ込み、トリスは避ける。そしてそのままホルスの懐に潜り込み、軽くジャブを放つが案の定軽くいなされてしまう。
「トリス、本気でやってる?」
「いや?というか本気出したら駄目でしょ。確実に皆さん目で追えなくなるし、下手したらここじゃあ狭すぎる。」
お互いに果敢に攻めながらも呑気に会話する。常人ならばとっくにへばっているような運動量をこなしていながらも、2人は汗を一切かいていない。
このテニスコートの約1.5倍ほどの広さの試合会場では、彼らは本気で動けないらしい。
「そんな事よりも、トリス少し攻めあぐねてるよね?」
「ん〜、まぁね〜。俺どっちかと言えば、カウンターの方が得意だし。」
「あ〜、やっぱり?トリスはいつも相手の動きを読んで、弓で射抜いてるけど、自分からはあんまり攻めてないよね。」
トリスにとって天敵となるのが、ある程度の実力がある持久戦を行う相手だ。因みにホルスはオールラウンダーなので、相手に合わせて戦いやすいように動くので、特に不得手とする相手は居ない。
そのためトリスにとってホルスは、少々戦いづらい相手となっている。
「う〜ん…。つまらないから、攻めてくんない?」
トリスは面白くなさそうに提案する。
するとホルスは満面の笑みで言う。
「りょーかい。僕は攻撃仕掛ける方が好きだから、全然問題は無いよ。」
「知ってるよ。ホルスはドSだもんな。」
「どえす?何それ?」
「ホルスみたいな奴のことを、とある業界ではそう呼ぶんだよ。」
「む。何か気に入らない。それ、絶対悪意あるよ…ね!」
ホルスは一層笑みを濃くすると、最初の時のように勢い良く飛び込んでくると同時に右ストレートを放つ。
-待ってました!-
トリスは内心そう思いながら、ホルスの右手首に左手を添え、右手で腕を掴むとそのまま体の向きをホルスと正反対にする。
「え?」
「どりゃぁ!」
そう。所謂背負い投げである。こちらの世界には、関節をキメたり、普通に殴る武術の流派はあるものの、日本の柔道のような流派は無い。
そのため何をするのか判断のつかなかったホルスは、その一瞬の迷いのため綺麗に体が宙を舞ってしまう。
-これか!トリスが狙っていた事は!確かにこのままいけば背中から落ちる!けど!-
「な!?」
決まったと思っていたトリスは、ホルスの対処に思わず驚きの声をあげてしまう。それはそうだろう。何故ならばホルスは、地面についた左手1本で全ての衝撃を吸収してしまったのだから。
-おいおい!どこの漫画だよ!…あ、この世界はファンタジーなんだったな。-
心の中で現実逃避していると、ホルスの驚異的な力によって逆にトリスの体はホルスによって投げられてしまう。
「ふん!」
「のわっ!」
だが体勢が悪かったためか、地面に叩きつけるとはいかずに、そのまま空中に投げ出す形となってしまう。そのためトリスは何とか空中で体勢を整え、次のホルスの攻撃に向けて構える。
だがその瞬間、いつの間にか背後に回っていたホルスが、トリスの首筋に手刀を当てていた。
「僕の勝ちで良い?」
「…降参だ。あ〜あ、決まったと思ったんだけどな。」
構えを解いたトリスは、脱力しながら呟く。
「僕も一瞬何が起こったのか分からなかったよ。トリスのさっきの技凄いね!どこかで習ったの?」
ホルスは笑顔で聞いてくる。どうやら背負い投げが、彼はお気に召したようだ。
「え〜っと、何かの本で書いてあったのを、実践してみただけだよ。特に習っちゃいないけど。」
「え?さっき初めてやったの?そのわりには、結構流れるように綺麗にきまったよね?」
トリスの言葉に驚くホルス。確かに熟練者とは言えないようなぎこちなさはあったが、それでも一度もやった事が無いというのは、到底信じられない動きだったからだ。
「あ〜、その、多分俺が相手の動きを読むのが得意だからじゃないか?ホルスが右ストレートで来るのは、大体予想してたから、結構脳内で動きを試せたし。」
柔道は体育の授業で習ったきりではあるが、こちらの世界で敵を傷付けずに無力化する時に便利なため、ここ10年で何回かは使っているトリス。
しかし今更言葉を訂正するのもなんなので、若干吃りながらも、どうにかそれらしい事を言う。
「あ〜、確かにそうだよね。僕はさっき結構楽しんでたから、攻撃が直線的になるのは当然トリスは読んでたよね。となれば後は向かってくる僕に合わせて動けばいいだけだし。うん、納得した。」
「そう?なら良いけど。他に質問は?」
「あ、じゃあ他に技は無いの?」
「お〜、あるぞ〜。んじゃあ、こういうのは──」
周囲が呆然としている中、トリスは軽く柔道のレクチャーをホルスにしていく。
こうして、新学期早々のイベントは幕を下ろしたのだった。
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