転生王子は何をする?
第84話 入学前 20
「バカなバカなバカなバカな!有り得ん!あんなガキ共に我らが傑作を倒せるわけが無い!貴様!何故このような虚偽の報告をする!?」
マッドは、偵察を行っていた部下からの報告に、半狂乱になりつつも問い詰める。
「し、しかし、現に奴らはこちらに真っ直ぐ進んで来ています!」
問い詰められていた部下は、半ば悲鳴に近い声をあげながら、必死に真実であると言い張る。だがマッドには全くの効果をなさなかったようだ。
「五月蝿い!もう黙っていろ!貴様の処分は奴らの死体を確認した後、追って通達する!それまで自室で待機していろ!」
「ぐっ!了解です!もう私は知りません!元々あんたとは馬が合わなかったんだ!最後まで付き合って心中するなんて馬鹿馬鹿しい!なんなら暗殺者に狙われる未来の方がまだマシだ!ここに居たら確実に死ぬか、若しくは捕えられて処刑だからな!」
部下はマッドの無能さに完全に失望し、そう言い捨てると緊急脱出用の出入口に駆けていくと、そこから外に出てしまう。
そこは人が1人通るのがやっとなくらいの広さの穴で、森の中に出ることが出来る。しかしそこから抜け出たところで、国を裏切ったとなれば見せしめとして暗殺者を送り込まれ、明るい未来は望めないものとなる。
だがそんな事を承知で外に出るなど、その様子を見ていた周囲の研究員達の脳裏に1つの疑念が浮かぶ。
『本当にあの検体は倒されたのではないか?』と。しかし実際に見ないと信じられないのは皆同じなので、仕方無くマッドに従うしかない。
「おい!今すぐ検体番号234にリンクを張って、こちらに帰還させろ!」
「了解です!…!?駄目です!どうやら核が完全に破壊されたようで、全くリンクが繋がりません!」
マッドの指示に従った部下の1人が、専用の魔法陣の前に立ちリンクを繋げようとするが、うんともすんとも言わない事に驚愕して、思わず叫んでしまう。
「何だと!?クソっ!おい!貴様!確か侵入者の内1人は、ここから脱走した者だったな!?」
「は、はい!確か今捕らえている検体に、その者の姉が居ると。」
その報告に、マッドはニヤリと狂気的な笑みを浮かべて指示する。
「そうか。ならば貴様はその者をここに連れて来い。他の者はこの研究室の内、奥側半分に結界を張れ。検体番号234を倒せる訳はないが、仮に奴が怯んだ隙にこちらに来るのであれば、そ奴らは魔法が得意な筈だ。」
「了解です!」
「分かりました!」
「それならどうにか…。」
「人質か…。」
部下達は口々に呟きながら、マッドの指示に従い行動を開始する。こうして、彼らの地獄の時間は幕を開けたのだった。
「あれ?何か嫌な予感がする。」
「え?急に何を言ってるの?とうとうトリスはおかしくなったちゃったの?」
「え!?そうなんですか!?先程の戦闘で、頭に魔法が当たったのでは!?」
一方その頃、トリス達は研究室の奥を目指してひたすらに洞窟内を歩いていた。そんな時、トリスは何となく虫の知らせ的な何かを感じ取り、思わず口に出してしまったのだ。
「い、いや、大丈夫ですよ。全部あの盾で防げましたし。」
「あ〜、確かにそうですね。でも、あれならホルスさんに助けを借りることなく、私も守れたのでは?」
リアは引っかかっていた事をトリスに問う。するとトリスは意地の悪い笑みを浮かべて、リアの耳元で囁くように言う。
「そう?俺としてはグッジョブだと思ったんだけど?」
「な、何がですか?」
「ほら、分からない?あのホルスに抱き締められたんだよ?嬉しくないの?」
トリスの言葉に、リアは一気に顔を真っ赤にする。
「そ、そ、それは!」
「それは何?それとも俺に抱きしめられたかった?それは無いよね?だって君はホルスが好きだから。」
「!な、一体何を言ってるんですか!?」
初々しい反応を見せてくれるリアを楽しみながら、トリスは更に言葉を重ねていく。
「俺が分からないとでも?リアがホルスに助けられて以来、ずっと目で追っているでしょ?それに俺と話す時よりも、ホルスと話している時の方が息が荒いよね?それと目を見開いて、完全に緊張した感じだし。」
「わ、私は…。」
「私は?…痛い!」
トリスは涙目状態のリアを見て、そろそろ潮時かなと思い引こうとした瞬間、タイミング少し遅かったようで後からホルスに鞘に入った剣で叩かれてしまう。
「トリス?女の子を泣かせているの?」
「ひっ!ちょっと待ってくれ!やり過ぎたのは感じたから、もう質問は終わりにしようとしたところだ!ほら!言っただろ!?引き際は弁えているって!」
物凄く目の笑っていない笑顔を浮かべているホルスに、慌ててトリスは弁明する。
「って言ってるけど、リアさんはどう?許す?」
「は、はい。多分トリスさんは、悪意のみで言っていた訳では無いと思うので。」
「リ、リアさん!ありがとうございます!貸一にしといてください!」
「はい、分かりました。」
あっさりとトリスを許したリアを見て、ホルスはため息混じりに言う。
「…全く。トリスはリアさんの優しさに、もっと感謝すべきだと思うよ?」
「めっちゃ感謝してますって!だからこその貸一だよ!」
トリスはホルスの責めるような目線に、必死に反省してますアピールをする。
この貸一が、トリスやホルスの運命を変えることとなるのは、まだ先の事である。
マッドは、偵察を行っていた部下からの報告に、半狂乱になりつつも問い詰める。
「し、しかし、現に奴らはこちらに真っ直ぐ進んで来ています!」
問い詰められていた部下は、半ば悲鳴に近い声をあげながら、必死に真実であると言い張る。だがマッドには全くの効果をなさなかったようだ。
「五月蝿い!もう黙っていろ!貴様の処分は奴らの死体を確認した後、追って通達する!それまで自室で待機していろ!」
「ぐっ!了解です!もう私は知りません!元々あんたとは馬が合わなかったんだ!最後まで付き合って心中するなんて馬鹿馬鹿しい!なんなら暗殺者に狙われる未来の方がまだマシだ!ここに居たら確実に死ぬか、若しくは捕えられて処刑だからな!」
部下はマッドの無能さに完全に失望し、そう言い捨てると緊急脱出用の出入口に駆けていくと、そこから外に出てしまう。
そこは人が1人通るのがやっとなくらいの広さの穴で、森の中に出ることが出来る。しかしそこから抜け出たところで、国を裏切ったとなれば見せしめとして暗殺者を送り込まれ、明るい未来は望めないものとなる。
だがそんな事を承知で外に出るなど、その様子を見ていた周囲の研究員達の脳裏に1つの疑念が浮かぶ。
『本当にあの検体は倒されたのではないか?』と。しかし実際に見ないと信じられないのは皆同じなので、仕方無くマッドに従うしかない。
「おい!今すぐ検体番号234にリンクを張って、こちらに帰還させろ!」
「了解です!…!?駄目です!どうやら核が完全に破壊されたようで、全くリンクが繋がりません!」
マッドの指示に従った部下の1人が、専用の魔法陣の前に立ちリンクを繋げようとするが、うんともすんとも言わない事に驚愕して、思わず叫んでしまう。
「何だと!?クソっ!おい!貴様!確か侵入者の内1人は、ここから脱走した者だったな!?」
「は、はい!確か今捕らえている検体に、その者の姉が居ると。」
その報告に、マッドはニヤリと狂気的な笑みを浮かべて指示する。
「そうか。ならば貴様はその者をここに連れて来い。他の者はこの研究室の内、奥側半分に結界を張れ。検体番号234を倒せる訳はないが、仮に奴が怯んだ隙にこちらに来るのであれば、そ奴らは魔法が得意な筈だ。」
「了解です!」
「分かりました!」
「それならどうにか…。」
「人質か…。」
部下達は口々に呟きながら、マッドの指示に従い行動を開始する。こうして、彼らの地獄の時間は幕を開けたのだった。
「あれ?何か嫌な予感がする。」
「え?急に何を言ってるの?とうとうトリスはおかしくなったちゃったの?」
「え!?そうなんですか!?先程の戦闘で、頭に魔法が当たったのでは!?」
一方その頃、トリス達は研究室の奥を目指してひたすらに洞窟内を歩いていた。そんな時、トリスは何となく虫の知らせ的な何かを感じ取り、思わず口に出してしまったのだ。
「い、いや、大丈夫ですよ。全部あの盾で防げましたし。」
「あ〜、確かにそうですね。でも、あれならホルスさんに助けを借りることなく、私も守れたのでは?」
リアは引っかかっていた事をトリスに問う。するとトリスは意地の悪い笑みを浮かべて、リアの耳元で囁くように言う。
「そう?俺としてはグッジョブだと思ったんだけど?」
「な、何がですか?」
「ほら、分からない?あのホルスに抱き締められたんだよ?嬉しくないの?」
トリスの言葉に、リアは一気に顔を真っ赤にする。
「そ、そ、それは!」
「それは何?それとも俺に抱きしめられたかった?それは無いよね?だって君はホルスが好きだから。」
「!な、一体何を言ってるんですか!?」
初々しい反応を見せてくれるリアを楽しみながら、トリスは更に言葉を重ねていく。
「俺が分からないとでも?リアがホルスに助けられて以来、ずっと目で追っているでしょ?それに俺と話す時よりも、ホルスと話している時の方が息が荒いよね?それと目を見開いて、完全に緊張した感じだし。」
「わ、私は…。」
「私は?…痛い!」
トリスは涙目状態のリアを見て、そろそろ潮時かなと思い引こうとした瞬間、タイミング少し遅かったようで後からホルスに鞘に入った剣で叩かれてしまう。
「トリス?女の子を泣かせているの?」
「ひっ!ちょっと待ってくれ!やり過ぎたのは感じたから、もう質問は終わりにしようとしたところだ!ほら!言っただろ!?引き際は弁えているって!」
物凄く目の笑っていない笑顔を浮かべているホルスに、慌ててトリスは弁明する。
「って言ってるけど、リアさんはどう?許す?」
「は、はい。多分トリスさんは、悪意のみで言っていた訳では無いと思うので。」
「リ、リアさん!ありがとうございます!貸一にしといてください!」
「はい、分かりました。」
あっさりとトリスを許したリアを見て、ホルスはため息混じりに言う。
「…全く。トリスはリアさんの優しさに、もっと感謝すべきだと思うよ?」
「めっちゃ感謝してますって!だからこその貸一だよ!」
トリスはホルスの責めるような目線に、必死に反省してますアピールをする。
この貸一が、トリスやホルスの運命を変えることとなるのは、まだ先の事である。
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