転生王子は何をする?
第73話 入学前 9
「さて、じゃあ入ろうか。」
「りょーかい。」
ホルスが先行して森へと入って行く。これはほぼ自然になっていたのだが、絶対に攻撃を食い止める前衛のホルスに、その隙に確実に仕留める後衛のトリス。この2人は人間としての相性だけではなく、どうやら連携の相性もこの上なく良かったようで、合わせているつもりも無いのに息がピッタリなのだ。
そんな陣形を考慮して、トリスがホルスに続いて森に足を踏み入れる。
それから20分ほど後、トリス達は頭を悩ませていた。
「う〜ん、特に変わった様子は無いけどな?」
「だな。強いて言うなら、何故こうも綺麗に獣道みたいなものが続いているのかっていうことだな。」
「確かに。異様にクネクネしていて、まるでくるっと回って元の場所に戻って来てるかのような…。」
トリス達が森に入ってからすぐに、獣道と思しき道を発見したのでそこを辿っているのだが、不自然にその道だけ踏み固められているのだ。普通ならでこぼこしているのだが、木の根すら出ていない。しかも曲がりくねっていて、方向音痴で無くても数分で方角が分からなくなりそうな程だ。また、木々が生い茂っているため、太陽が見えないため方角を知る手段が無いのも状況を悪くしていた。
「むぅ〜。これ以上深入りは危険かな?」
「おや?ホルスらしくない弱気発言だな。理由は?」
弱気発言と言っているものの、トリスは真剣な顔付きで問う。
「理由としては、このままだと間違いなく戻れなくなるという事かな?まぁ、イザとなれば上空に飛べば方角くらいは分かるだろうけど。」
「そうだな。まだまだ時間はあるんだし、焦る必要は無いか。それに来るまでの間に分岐もあった事だし、これ以上進むと本当に帰れなくなると思う。」
そう。ここは獣道である筈なのに、綺麗に倒れた巨木という目印付きで分岐点があったのだ。その様子にそこはかとなく嫌な予感を覚えたトリスは、ホルスの言う事に全面的に賛成のようだ。
その日は結局1時間ほどの探索で、屋敷に戻ることになったのだった。
「まるで迷わせるのが目的の、迷路みたいな道だったな…。」
「はぁ、ホントだよね。もはや悪意しか感じられないよ…。」
森から戻った後、トリスとホルスの2人はテラスで紅茶を飲みながらだらけていた。暗い森の中のクネクネした道を、注意しつつ探索するというのは、化物じみたステータスを以てしても非常に疲れることらしい。
「なぁ、ホルス。ここの領主は探索隊とか組んだこと無かったのか?」
机に突っ伏しながら、トリスはずっと疑問に思っていた事を口にする。するとホルスからは予想通りの回答が返ってくる。
「勿論出したよ。10年くらい前だったと思う。でも1人も帰ってこなかった。鬱蒼としているだけあって、どうしても少人数編成にせざるを得なくて多くはないんだけど、未だに見つかっていないんだ。」
「…ゾッとしないな。そういえば、ずっと彷徨ってた人から話は聞けないのか?」
「何か皆必死だったとか何とかで、イマイチ要領を得ないんだけど、唯一分かるのは、『洞窟は危険』という事らしいよ。他は記憶が曖昧すぎて分からないってさ。」
トリスは手がかりらしき単語が出てきた事に、思わず聞き返してしまう。
「洞窟?そんなものがあるのか?」
「あるらしいよ?確認しようにも、場所が分からないんだけどね。」
何とも不明確な手がかりに、トリスはため息をつきながら言う。
「はぁ、しょうがない。こうなったら、明日あたり被害者から直接話を聞いてみようか。」
「うん、そうだね。丁度屋敷に居ることだし、今から呼ぶね。」
ホルスが、席を立ちながらメイドさんを呼ぶ。
「じゃあ、明日から…何だって!?屋敷に居るのか!?」
あまりに自然に衝撃の事実を言ったので、思わずスルーするトリスだったが、漸く何を言ったか理解したため叫んでしまう。
いきなり大声を出したトリスにホルスは驚いたが、気を取り直して言う。
「う、うん。ほら、メラニーっていうメイドが馬車に居たじゃん?あの人は昔は他家の諜報員だったんだけど…。あれ?何で笑顔で右手を蠢かしながら近づいてきてるの?え?何でそのまま僕の頭の上に手を置くの?って!ぎゃああああ!!」
大事な情報を教えなかったホルスに、お仕置きの意味を込めてアイアンクローをするトリス。彼の握力はステータスに比例して半端ないものになっているため、日常で痛みを受ける事のないホルスの耐久力を破ってダメージを与える。
「…情報は、命だ。未知の場所に行くなら尚のこと。怠ってはいけないよ?ふふふふふ…。」
「は、放して〜!ちょ!トリスの握力はマジで化物…ひぃっ!更に力を!?や、やめい!止めてください!じょ、情報大事ですから!次からは気をつけますから〜!」
本気で痛かったようで、涙目で必死に謝ってくるホルス。トリスとしてもそこまで怒っているわけでは無いので、すぐに放してやる。
「痛い…。頭がズキズキする。」
「…。」
涙目のホルスは、存外威力が高い事を知ったトリスは、ニヒルを気取って空を見上げるのだった。
「りょーかい。」
ホルスが先行して森へと入って行く。これはほぼ自然になっていたのだが、絶対に攻撃を食い止める前衛のホルスに、その隙に確実に仕留める後衛のトリス。この2人は人間としての相性だけではなく、どうやら連携の相性もこの上なく良かったようで、合わせているつもりも無いのに息がピッタリなのだ。
そんな陣形を考慮して、トリスがホルスに続いて森に足を踏み入れる。
それから20分ほど後、トリス達は頭を悩ませていた。
「う〜ん、特に変わった様子は無いけどな?」
「だな。強いて言うなら、何故こうも綺麗に獣道みたいなものが続いているのかっていうことだな。」
「確かに。異様にクネクネしていて、まるでくるっと回って元の場所に戻って来てるかのような…。」
トリス達が森に入ってからすぐに、獣道と思しき道を発見したのでそこを辿っているのだが、不自然にその道だけ踏み固められているのだ。普通ならでこぼこしているのだが、木の根すら出ていない。しかも曲がりくねっていて、方向音痴で無くても数分で方角が分からなくなりそうな程だ。また、木々が生い茂っているため、太陽が見えないため方角を知る手段が無いのも状況を悪くしていた。
「むぅ〜。これ以上深入りは危険かな?」
「おや?ホルスらしくない弱気発言だな。理由は?」
弱気発言と言っているものの、トリスは真剣な顔付きで問う。
「理由としては、このままだと間違いなく戻れなくなるという事かな?まぁ、イザとなれば上空に飛べば方角くらいは分かるだろうけど。」
「そうだな。まだまだ時間はあるんだし、焦る必要は無いか。それに来るまでの間に分岐もあった事だし、これ以上進むと本当に帰れなくなると思う。」
そう。ここは獣道である筈なのに、綺麗に倒れた巨木という目印付きで分岐点があったのだ。その様子にそこはかとなく嫌な予感を覚えたトリスは、ホルスの言う事に全面的に賛成のようだ。
その日は結局1時間ほどの探索で、屋敷に戻ることになったのだった。
「まるで迷わせるのが目的の、迷路みたいな道だったな…。」
「はぁ、ホントだよね。もはや悪意しか感じられないよ…。」
森から戻った後、トリスとホルスの2人はテラスで紅茶を飲みながらだらけていた。暗い森の中のクネクネした道を、注意しつつ探索するというのは、化物じみたステータスを以てしても非常に疲れることらしい。
「なぁ、ホルス。ここの領主は探索隊とか組んだこと無かったのか?」
机に突っ伏しながら、トリスはずっと疑問に思っていた事を口にする。するとホルスからは予想通りの回答が返ってくる。
「勿論出したよ。10年くらい前だったと思う。でも1人も帰ってこなかった。鬱蒼としているだけあって、どうしても少人数編成にせざるを得なくて多くはないんだけど、未だに見つかっていないんだ。」
「…ゾッとしないな。そういえば、ずっと彷徨ってた人から話は聞けないのか?」
「何か皆必死だったとか何とかで、イマイチ要領を得ないんだけど、唯一分かるのは、『洞窟は危険』という事らしいよ。他は記憶が曖昧すぎて分からないってさ。」
トリスは手がかりらしき単語が出てきた事に、思わず聞き返してしまう。
「洞窟?そんなものがあるのか?」
「あるらしいよ?確認しようにも、場所が分からないんだけどね。」
何とも不明確な手がかりに、トリスはため息をつきながら言う。
「はぁ、しょうがない。こうなったら、明日あたり被害者から直接話を聞いてみようか。」
「うん、そうだね。丁度屋敷に居ることだし、今から呼ぶね。」
ホルスが、席を立ちながらメイドさんを呼ぶ。
「じゃあ、明日から…何だって!?屋敷に居るのか!?」
あまりに自然に衝撃の事実を言ったので、思わずスルーするトリスだったが、漸く何を言ったか理解したため叫んでしまう。
いきなり大声を出したトリスにホルスは驚いたが、気を取り直して言う。
「う、うん。ほら、メラニーっていうメイドが馬車に居たじゃん?あの人は昔は他家の諜報員だったんだけど…。あれ?何で笑顔で右手を蠢かしながら近づいてきてるの?え?何でそのまま僕の頭の上に手を置くの?って!ぎゃああああ!!」
大事な情報を教えなかったホルスに、お仕置きの意味を込めてアイアンクローをするトリス。彼の握力はステータスに比例して半端ないものになっているため、日常で痛みを受ける事のないホルスの耐久力を破ってダメージを与える。
「…情報は、命だ。未知の場所に行くなら尚のこと。怠ってはいけないよ?ふふふふふ…。」
「は、放して〜!ちょ!トリスの握力はマジで化物…ひぃっ!更に力を!?や、やめい!止めてください!じょ、情報大事ですから!次からは気をつけますから〜!」
本気で痛かったようで、涙目で必死に謝ってくるホルス。トリスとしてもそこまで怒っているわけでは無いので、すぐに放してやる。
「痛い…。頭がズキズキする。」
「…。」
涙目のホルスは、存外威力が高い事を知ったトリスは、ニヒルを気取って空を見上げるのだった。
「転生王子は何をする?」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
5,217
-
2.6万
-
-
6,681
-
2.9万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
8,191
-
5.5万
-
-
2,534
-
6,825
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
6,199
-
2.6万
-
-
1,000
-
1,512
-
-
3,548
-
5,228
-
-
2,860
-
4,949
-
-
6,044
-
2.9万
-
-
104
-
158
-
-
14
-
8
-
-
398
-
3,087
-
-
450
-
727
-
-
2,629
-
7,284
-
-
215
-
969
-
-
88
-
150
-
-
3,653
-
9,436
-
-
62
-
89
-
-
614
-
1,144
-
-
344
-
843
-
-
71
-
63
-
-
86
-
288
-
-
23
-
3
-
-
89
-
139
-
-
33
-
48
-
-
4
-
1
-
-
3,224
-
1.5万
-
-
218
-
165
-
-
164
-
253
-
-
183
-
157
-
-
27
-
2
-
-
9,173
-
2.3万
-
-
614
-
221
-
-
2,799
-
1万
-
-
4,922
-
1.7万
-
-
1,658
-
2,771
-
-
5,039
-
1万
-
-
42
-
52
-
-
62
-
89
-
-
116
-
17
-
-
6,237
-
3.1万
-
-
34
-
83
-
-
51
-
163
-
-
1,301
-
8,782
-
-
7,474
-
1.5万
-
-
42
-
14
-
-
1,391
-
1,159
-
-
408
-
439
-
-
265
-
1,847
-
-
83
-
2,915
-
-
2,431
-
9,370
-
-
220
-
516
「ファンタジー」の人気作品
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
9,545
-
1.1万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
9,173
-
2.3万
コメント
血迷ったトモ
コメントありがとうございます。
期待に応えられるよう、これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。
クレクレル
久しぶりに当たりの話が読めて嬉しいです。応援してます。
血迷ったトモ
コメント、ありがとうございます!ちょっとコメントの書き方が分からなくて、返信が遅くなってしまいすみません!
ノベルバユーザー114788
いつも楽しく見させてもらってます!
これからも頑張ってください!
いつも更新楽しみにしてます!