転生王子は何をする?
第65話 入学前 1
釈然としない気持ちを抑え、トリス達は番号の記された紙を手に受付に向かう。
受付付近には早くも合格者達がグループを作り、浮ついた空気で和気藹々と会話していた。
しかし、そんな和気藹々とした空気も、トリス達(主にホルスとローゼマリー)の登場により姦しいものとなってしまう。
「う、美しい…。」
「白馬の王子様…。」
「誰かしら?」
「あ、見たことある!確かレンバッハ家のホルスト様と、アルトナー家のローゼマリー様よ!」
「え!?お2人とも侯爵家の方なの!?」
「ローゼマリー様のファンクラブ作ろうぜ!」
「玉の輿…。」
幾人か意識がとんでいる者や危ない発想をする者もいるが、彼らの雰囲気にのまれる多くの合格者達。
「う…。」
一斉に視線が集中し、自身に向けられたわけでは無いのに居心地が悪くなるトリス。ホルスとローゼマリーは慣れているようで、全く動じていない。
「さ、行きましょうか。」
少し足が止まってしまっていたトリスを、ローゼマリーが促し受付へと足を進める。
「あの〜、合格したんですが…。」
「はっ!?は、はい。番号札をお願いします。」
ホルスに見蕩れていた受付の女性に、トリスが声をかけて現実に引き戻して処理してもらう。女性は番号札を受け取ると奥に引っ込んで、ゴソゴソと何かを探しているようだ。
「お待たせ致しました。」
暫く待っていると、大きめな紙袋を3つ抱えて受付の女性がやって来る。
「こちらの紙袋に、学園に関する諸々の書類が入っているのでお持ちください。」
「はい、どうも。」
ホルスやローゼマリーが応対すると、間違いなく話が進まなくなるのでトリスが受け取る。受け取る時、つい笑顔を浮かべてしまったのだが、トリス自身もそれなりに美形であるので、女性の意識が一瞬とんでしまった。
「ん?大丈夫ですか?」
「は、はい!大丈夫です!…あ、そうでした!ホルスト様はどちらですか?」
少々上ずった声で返事をする女性。すぐに何かを思い出したかのように叫び、トリスとホルスとの間を視線が行き来している。
「はい?えっと、ホルストは僕ですが。」
トリスの後ろにいたホルスは、不思議そうにその声に反応して名乗る。
すると女性は緊張で身体を固くしながら言う。
「じ、実は、その、毎年首席の方には、新入生代表として入学式でスピーチをしてもらっているのですが、ホルスト様にお願いできますか?」
「え!?そ、それって断ったりは…?」
「断られた場合は、次席の方が…。」
危うい空気になってきたので、トリスは慌てて流れをぶった斬る。
「ちょっと待った〜!ホルス!君がやるべきだ!」
いきなり叫んだトリスに周りは驚いたが、ホルスは動じずに反論する。
「え〜!皆の前でスピーチって緊張するじゃん!こういう事なら、トリスの方が向いてると思うんだけど!」
「いやいや!まさか平民が新入生代表だなんて恐れ多いし!やるなら首席のホルスか、3位のローゼマリーさんでしょ!」
「え!?私ですか!?」
唐突に名前が挙がったローゼマリーは、驚いた表情で叫ぶ。それを完全に無視してトリスは話を続ける。
「次席も断った場合は、3位に移りますよね?」
「え、えぇ。前例はないけれども、そうなると思います。」
それを聞いたトリスは、満足気な笑みを浮かべてホルスに話しかける。
「聞いた?まさかホルスはローゼマリーさんを犠牲にするような真似はしないよね?あ、因みに俺は全力で拒否するんで。」
ホルスの逃げ道を次々と塞いでいくトリス。その表情はドSとしか言いようのないものであった。
「ぐっ!と、トリスならそんな事はしないと…いや、その目は本気だ!僕がやるしかないのか…。」
そんなに長い付き合いでもないのに、トリスの表情から本気度を感じ取り、諦めの境地に入るホルス。幾ら嫌でも女の子にその重荷を背負わせるほど落ちぶれていないようだ。
「い、嫌でしたら私がしますが。」
「え!?いや、大丈夫!受付さん!僕がスピーチやるんで大丈夫です!」
ローゼマリーの心配そうな声に、ホルスは慌てて受付の女性にそう伝えるのだった。
その頃、トリス達を見ていた合格者達は驚きの声を挙げていた。
「あの3人がトップを独占しているの!?」
「あの黒髪の人は平民!?貴族のじゃないの!?」
「へ、平民が次席…。そんな馬鹿な…。」
「平民め。許すまじ…。我らがローゼマリー様をさん付けで呼びやがって。」
「何故平民が、侯爵家の方々と対等に話しているだ!?無礼だ!」
…驚きの声というよりは、主にトリスに対する悪感情であった。大半の愚痴はトリスが正体を明かせば簡単に解決するのだが。こうして、トリスの学園生活はマイナス値からスタートするのであった。
受付付近には早くも合格者達がグループを作り、浮ついた空気で和気藹々と会話していた。
しかし、そんな和気藹々とした空気も、トリス達(主にホルスとローゼマリー)の登場により姦しいものとなってしまう。
「う、美しい…。」
「白馬の王子様…。」
「誰かしら?」
「あ、見たことある!確かレンバッハ家のホルスト様と、アルトナー家のローゼマリー様よ!」
「え!?お2人とも侯爵家の方なの!?」
「ローゼマリー様のファンクラブ作ろうぜ!」
「玉の輿…。」
幾人か意識がとんでいる者や危ない発想をする者もいるが、彼らの雰囲気にのまれる多くの合格者達。
「う…。」
一斉に視線が集中し、自身に向けられたわけでは無いのに居心地が悪くなるトリス。ホルスとローゼマリーは慣れているようで、全く動じていない。
「さ、行きましょうか。」
少し足が止まってしまっていたトリスを、ローゼマリーが促し受付へと足を進める。
「あの〜、合格したんですが…。」
「はっ!?は、はい。番号札をお願いします。」
ホルスに見蕩れていた受付の女性に、トリスが声をかけて現実に引き戻して処理してもらう。女性は番号札を受け取ると奥に引っ込んで、ゴソゴソと何かを探しているようだ。
「お待たせ致しました。」
暫く待っていると、大きめな紙袋を3つ抱えて受付の女性がやって来る。
「こちらの紙袋に、学園に関する諸々の書類が入っているのでお持ちください。」
「はい、どうも。」
ホルスやローゼマリーが応対すると、間違いなく話が進まなくなるのでトリスが受け取る。受け取る時、つい笑顔を浮かべてしまったのだが、トリス自身もそれなりに美形であるので、女性の意識が一瞬とんでしまった。
「ん?大丈夫ですか?」
「は、はい!大丈夫です!…あ、そうでした!ホルスト様はどちらですか?」
少々上ずった声で返事をする女性。すぐに何かを思い出したかのように叫び、トリスとホルスとの間を視線が行き来している。
「はい?えっと、ホルストは僕ですが。」
トリスの後ろにいたホルスは、不思議そうにその声に反応して名乗る。
すると女性は緊張で身体を固くしながら言う。
「じ、実は、その、毎年首席の方には、新入生代表として入学式でスピーチをしてもらっているのですが、ホルスト様にお願いできますか?」
「え!?そ、それって断ったりは…?」
「断られた場合は、次席の方が…。」
危うい空気になってきたので、トリスは慌てて流れをぶった斬る。
「ちょっと待った〜!ホルス!君がやるべきだ!」
いきなり叫んだトリスに周りは驚いたが、ホルスは動じずに反論する。
「え〜!皆の前でスピーチって緊張するじゃん!こういう事なら、トリスの方が向いてると思うんだけど!」
「いやいや!まさか平民が新入生代表だなんて恐れ多いし!やるなら首席のホルスか、3位のローゼマリーさんでしょ!」
「え!?私ですか!?」
唐突に名前が挙がったローゼマリーは、驚いた表情で叫ぶ。それを完全に無視してトリスは話を続ける。
「次席も断った場合は、3位に移りますよね?」
「え、えぇ。前例はないけれども、そうなると思います。」
それを聞いたトリスは、満足気な笑みを浮かべてホルスに話しかける。
「聞いた?まさかホルスはローゼマリーさんを犠牲にするような真似はしないよね?あ、因みに俺は全力で拒否するんで。」
ホルスの逃げ道を次々と塞いでいくトリス。その表情はドSとしか言いようのないものであった。
「ぐっ!と、トリスならそんな事はしないと…いや、その目は本気だ!僕がやるしかないのか…。」
そんなに長い付き合いでもないのに、トリスの表情から本気度を感じ取り、諦めの境地に入るホルス。幾ら嫌でも女の子にその重荷を背負わせるほど落ちぶれていないようだ。
「い、嫌でしたら私がしますが。」
「え!?いや、大丈夫!受付さん!僕がスピーチやるんで大丈夫です!」
ローゼマリーの心配そうな声に、ホルスは慌てて受付の女性にそう伝えるのだった。
その頃、トリス達を見ていた合格者達は驚きの声を挙げていた。
「あの3人がトップを独占しているの!?」
「あの黒髪の人は平民!?貴族のじゃないの!?」
「へ、平民が次席…。そんな馬鹿な…。」
「平民め。許すまじ…。我らがローゼマリー様をさん付けで呼びやがって。」
「何故平民が、侯爵家の方々と対等に話しているだ!?無礼だ!」
…驚きの声というよりは、主にトリスに対する悪感情であった。大半の愚痴はトリスが正体を明かせば簡単に解決するのだが。こうして、トリスの学園生活はマイナス値からスタートするのであった。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
147
-
-
59
-
-
141
-
-
2265
-
-
1168
-
-
755
-
-
11128
-
-
439
-
-
127
コメント
小説書いてみたいけど内容が浮かばない人
トリスは第3王子ですよって言ったら、ホルスとかも畏まりそうwww