転生王子は何をする?
第60話 試験官が可哀想です
「はい、よろしくお願いします!」
試験官に呼ばれて前に出てきたホルスが、元気よく返事する。
「人外認定されない程度に頑張れよ〜。」
「わ、分かってるから大丈夫だよ。お疲れ様、トリス。」
「おう。」
2人がすれ違う時、軽く声をかけ合う。その会話の内容に不安を覚えた試験官は、表情を引き締める。
「まさかお前もさっきのトリスとかいう奴はと同じく、非常識な事をしでかすのか?」
「さ、さぁ?身体能力で言えば、トリスより僕の方が上ですけど。」
先程トリスは弓を放っただけであるので、どの程度動けるのかは分からなかったが、雰囲気で目の前の少年が強者であると感じ取った試験官は名乗りをあげる。
「俺の名はミックス。元Bランク冒険者だ。試験官としては失格だが、胸を借りさせてもらう。」
その名乗りを受け、ホルスもそれに応じる。
「僕の名前はホルスト・ラ・レンバッハ。こちらこそ、胸を借りさせていただきます。」
ホルスは一礼してから武器の入った箱から剣を一振り取り出して構える。
周囲の観客は漸くトリスの非常識な行為でのショックから抜け出したところだったが、ミックスとホルスとの間に走る緊張感、いやホルスからの圧倒的な覇気を浴びて萎縮したのか、黙って見ている。
「試験官殿?開始の合図をお願い出来ますか?」
あまりの覇気に、柄にも無く緊張してしまったミックスは、試験であるという事を忘れて対峙してしまっているようだ。
「す、すまない。…ふぅ。開始!」
ミックスのかけ声と同時に、ミックス自身が一気に間合いをつめてホルスに切りかかる。そのままミックスの間合いまで近付き、水平に剣を振る。
しかしホルスの姿が一瞬ぶれたと思ったら、いつの間にかミックスの後に居て、首筋に剣を突きつけている状態で現れた。
「おぉ。流石ホルス。」
先程とは逆にトリスがホルスを褒める。周囲の観客は声も出ないようだ。というか何が起こったのかすら分かっていないだろう。通常の動体視力では見ることの敵わないほどの動きだったのだ。しかも身体強化も何も使っていないのに、人外な動きをするのだ。
「す、すまないが試験とは関係無くもう一度戦ってくれるか?」
ミックスからのお願いに、ホルスは首を傾げて問う。
「いいですけど、時間は大丈夫なんですか?」
ホルスの言葉に嬉しそうにしつつも、試験官とは思えないセリフを言い放つ。
「あぁ、あと残り20人も居ないだろうから大丈夫だ。」
「そうですか。ではあと1戦だけやりましょう。」
2人は再び距離を置き、お互い向き合って武器を構える。
「はっ!」
今回は試験では無いので、合図もなしにいきなりホルスが速度を落としてミックスに突っ込む。
「ぬお!速い!」
慌てて横薙ぎの剣を防いだミックスだったが、そこから一気に防戦一方を強いられてしまう。
打ち合いが10合を超えた辺りで、ミックスは息も絶え絶えといった状況であった。
「はぁ、はぁ、はぁ。ふんっ!」
振り下ろされた剣を力づくで弾き、一旦距離を取るためバックステップするミックス。
「大丈夫ですか?」
一方余裕があり、息も全く切れていないホルス。見ていてミックスが可哀想になってくるトリスだった。
「お〜い。そろそろ決着着けないと、ミックス試験官の体力がなくなっちまうぞ〜。それと魔法の実技試験している連中も、そろそろこちらの騒ぎに気付く頃だろうから早くしてくれ〜!」
赤子の手をひねるかのようにあしらわれるのは、試験官として如何なものかと思い、トリスは助け舟を出すことにした。
「うん、分かった!じゃあ次で決着つけるよ!…行きます…よっ!」
「!?」
『カーン!』
またホルスの姿が掻き消えたと思ったら、ミックスの手に握れていた剣を弾き飛ばし、何時でも攻撃が放てる体勢で止まっていた。
「はい、勝負あり!勝者ホルスト・ラ・レンバッハ!」
トリスが高らかに宣言する。こうでもしないと場の収拾がつかなくなると考えたからだ。
観客は呆気にとられていたものの、トリスの宣言を聞いてまばらだが拍手が発生するのだった。
中には褒め称える声まで聞こえてくる。
「な、なんか照れるね。」
ホルスは頭を掻きながら、トリスの元へと向かうのだった。
試験官に呼ばれて前に出てきたホルスが、元気よく返事する。
「人外認定されない程度に頑張れよ〜。」
「わ、分かってるから大丈夫だよ。お疲れ様、トリス。」
「おう。」
2人がすれ違う時、軽く声をかけ合う。その会話の内容に不安を覚えた試験官は、表情を引き締める。
「まさかお前もさっきのトリスとかいう奴はと同じく、非常識な事をしでかすのか?」
「さ、さぁ?身体能力で言えば、トリスより僕の方が上ですけど。」
先程トリスは弓を放っただけであるので、どの程度動けるのかは分からなかったが、雰囲気で目の前の少年が強者であると感じ取った試験官は名乗りをあげる。
「俺の名はミックス。元Bランク冒険者だ。試験官としては失格だが、胸を借りさせてもらう。」
その名乗りを受け、ホルスもそれに応じる。
「僕の名前はホルスト・ラ・レンバッハ。こちらこそ、胸を借りさせていただきます。」
ホルスは一礼してから武器の入った箱から剣を一振り取り出して構える。
周囲の観客は漸くトリスの非常識な行為でのショックから抜け出したところだったが、ミックスとホルスとの間に走る緊張感、いやホルスからの圧倒的な覇気を浴びて萎縮したのか、黙って見ている。
「試験官殿?開始の合図をお願い出来ますか?」
あまりの覇気に、柄にも無く緊張してしまったミックスは、試験であるという事を忘れて対峙してしまっているようだ。
「す、すまない。…ふぅ。開始!」
ミックスのかけ声と同時に、ミックス自身が一気に間合いをつめてホルスに切りかかる。そのままミックスの間合いまで近付き、水平に剣を振る。
しかしホルスの姿が一瞬ぶれたと思ったら、いつの間にかミックスの後に居て、首筋に剣を突きつけている状態で現れた。
「おぉ。流石ホルス。」
先程とは逆にトリスがホルスを褒める。周囲の観客は声も出ないようだ。というか何が起こったのかすら分かっていないだろう。通常の動体視力では見ることの敵わないほどの動きだったのだ。しかも身体強化も何も使っていないのに、人外な動きをするのだ。
「す、すまないが試験とは関係無くもう一度戦ってくれるか?」
ミックスからのお願いに、ホルスは首を傾げて問う。
「いいですけど、時間は大丈夫なんですか?」
ホルスの言葉に嬉しそうにしつつも、試験官とは思えないセリフを言い放つ。
「あぁ、あと残り20人も居ないだろうから大丈夫だ。」
「そうですか。ではあと1戦だけやりましょう。」
2人は再び距離を置き、お互い向き合って武器を構える。
「はっ!」
今回は試験では無いので、合図もなしにいきなりホルスが速度を落としてミックスに突っ込む。
「ぬお!速い!」
慌てて横薙ぎの剣を防いだミックスだったが、そこから一気に防戦一方を強いられてしまう。
打ち合いが10合を超えた辺りで、ミックスは息も絶え絶えといった状況であった。
「はぁ、はぁ、はぁ。ふんっ!」
振り下ろされた剣を力づくで弾き、一旦距離を取るためバックステップするミックス。
「大丈夫ですか?」
一方余裕があり、息も全く切れていないホルス。見ていてミックスが可哀想になってくるトリスだった。
「お〜い。そろそろ決着着けないと、ミックス試験官の体力がなくなっちまうぞ〜。それと魔法の実技試験している連中も、そろそろこちらの騒ぎに気付く頃だろうから早くしてくれ〜!」
赤子の手をひねるかのようにあしらわれるのは、試験官として如何なものかと思い、トリスは助け舟を出すことにした。
「うん、分かった!じゃあ次で決着つけるよ!…行きます…よっ!」
「!?」
『カーン!』
またホルスの姿が掻き消えたと思ったら、ミックスの手に握れていた剣を弾き飛ばし、何時でも攻撃が放てる体勢で止まっていた。
「はい、勝負あり!勝者ホルスト・ラ・レンバッハ!」
トリスが高らかに宣言する。こうでもしないと場の収拾がつかなくなると考えたからだ。
観客は呆気にとられていたものの、トリスの宣言を聞いてまばらだが拍手が発生するのだった。
中には褒め称える声まで聞こえてくる。
「な、なんか照れるね。」
ホルスは頭を掻きながら、トリスの元へと向かうのだった。
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