転生王子は何をする?
第52話 怪盗ホルスト現る
「おはよう。目覚めはどうだい?」
間近で盗賊を圧倒していたホルストの方が、脅しやすいと考えホルストが話しかける。
「お、お前は!こ、殺すなら早く殺せ!俺は何も吐かないぞ!」
「ふ〜ん。吐かないぞって事は、何か知ってるっていうことだね?」
「くっ!」
盗賊は悔しそうにその顔を歪めながらホルストに殴りかかる。
「おっと、『電撃』。」
ホルストはそれを危なげなく避けてから、麻痺させる。
「ホルスト様。こちらの縄をお使い下さい。」
と言いながらメラニーがこちらに近付いて来る。どうやら彼女達も追いついたようで、マルセルが乗っていた馬車のすぐ横にホルスト達のも停めてある。
「ありがとう。それにしても大分準備がいいね。」
「ホルスト様ならば、何人かは残しておくであろうと判断したまでです。」
何故か勝ち誇ったような顔でトリスを見てくるメラニーに、トリスは首を傾げる。
メラニーの様子に気付かないホルストは、縄を使って器用に盗賊を縛り上げていく。盗賊3人組の手を後ろ手で繋げて縛ってあるので、簡単には抜け出せないであろう形になった。
「ず、随分と手馴れてるな。経験があるのか?」
「いや〜、まぁ家の教育方針で、『盗賊に襲われた時の対処法』っていう感じで習ったんだ。その道のプロを態々呼んでね。」
「縄で拘束するプロ?」
「うん。」
『どんなプロだよ!』と心の底から突っ込みながらも、トリスは感心したように盗賊3人組の様子を眺める。
「まぁ、ホルストのお陰で大分やりやすくなったよな。はい、じゃあ尋問開始。」
そんなトリスの掛け声と共に、尋問が再開されるのだった。
ホルストが脅し、トリスが宥めるという構図で尋問した結果、冒険者が裏切りをしていたことが発覚した。因みにその冒険者達は『最初のホルスト様の魔法で、恐らく死んでいる』と盗賊は証言した。
「私自身も怪しいローブの男に雇われた身であります、サー!」
「う、うん。分かったからその口調はどうにかならない?」
「いえ、私はホルスト様に身も心も捧げました!であれば自身の知る中で最も敬意を払った言動をさせていただいています!」
「そ、そう…。トリス、どうにかならない?」
「うん、諦めろ。」
「貴様!ホルスト様に何という口の利き方をするのだ!無礼であろう!」
『マジで何があった!?』というのが第三者からの感想であろうが、恐らくはホルスト本人でも何があったのか分からないだろう。普通に尋問していたのだが、ホルストがちょっと痛みを与えた結果、恐らくは目覚めたのだろう。
兎も角ホルストの言うことなら何でも聞き、べらべらと喋ってくれたお陰で事情は分かったが、誰が雇ったのかという事だけが、謎として残るのだった。
「と、所で馬車に乗っていた方々は無事かい?」
電撃で盗賊の意識を刈り取った後、ホルストは何事も無かったかのように、別の話題をふる。
いきなり話題をふられたマルセルは、慌ててホルストに答える。
「え、えぇ。全員無事であります。しかし盗賊共が倒されるのを見て、少々精神的にダメージが入ったようでして、今は馬車の中で横になられています。」
「あ〜、確かに常人には刺激が強いですよね。ほら、ホルスト。慰めに行ってきなよ。」
トリスがまるで他人事のように、ホルストに責任を擦り付けると、困惑した表情が返ってくるのだった。
「え?僕が?その刺激が強い場面を生み出した張本人が?」
「まぁ、ホルストなら顔が良いから大抵の人は話しかけられただけでも有頂天に昇るだろうしね。」
「いやいや!トリスの方がカッコイイじゃん!」
トリスとホルストが言い合っていると、馬車から2人の女性が降りてきて、こちらに向かってくる。
「おや?お嬢様がこちらに来るようです。」
それに気が付いたマルセルが2人に声をかける。
「「お嬢様?」」
綺麗にハモった2人だが、次の瞬間息を呑む。
1人は茶髪のケモ耳メイドさんで普通に可愛いのだが、もう片方の女性は普通では無かった。や、別にとんでもない不細工という訳ではなく、逆に整いすぎていたのだ。白い髪に赤い目。顔のパーツはこれ以上にないほど完璧な配置となっている。そして病的なまでに透き通るように白い肌。身長は160程だろうか。この世界の人間にしては高く、威圧感を普通は感じそうなものだが、何故かか弱そうなイメージを引き立てる。
まさにこの世のものとは思えないほどの美しさに、数秒場の空気が凍り付く。
「御二方。先程は助けていただき、本当にありがとうございます。私はローゼマリー・アルトナーです。よろしければ、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「「は、はい!」」
声をかけられ思わず上擦った声で返事をしてしまった2人に、ローゼマリーは苦笑する。
「ホルスト。お前から自己紹介よろしく。」
「えぇ!?僕が!?わ、分かったよ。…コホン。僕の名前はホルスト・ラ・レンバッハです。名前から分かる通り、レンバッハ侯爵家の者です。ローゼマリー嬢に怪我が無くて、何よりです。」
胸に手を当てて、貴族風に自己紹介するホルスト。ローゼマリーの身を案じる言動をした途端、ローゼマリーの顔が朱が差したかのように赤くなる。
どうやらホルストの笑顔を目の当たりにし、大ダメージを受けたようだ。
「ホルスト様ですか。よろしければ、私のことはマリーとお呼びください。親しい方はそう呼んで下さいますの。」
「おお、流石ホルスト。まるで某有名フランスの怪盗みたいに鮮やかに盗みますな。」
「え?何を?」
「いや、こっの話だから気にしないで。あ、因みに私はトリスと申す者です。平民ですが、こちらのホルストとは友人をさせていただいております。」
「…友人。」
トリスの友人発言に、ホルストは地味に嬉しそにしている。
「友人の方ですか。では、私の事はマリーとお呼びください。」
「い、いえ。私は恐れ多いのでローゼマリーさんと呼ばせていただきます。ところでローゼマリーさんはどちらまで?私共はこれから学園都市に向かうのですが。」
「私も学園都市に向かう途中です。」
「そうですか!なら御一緒しましょう。固まっていけば盗賊に襲われる事も無いでしょうし。な?ホルスト?」
「う、うん。一緒に行きましょう、マリー。」
「は、はい!」
こうして、トリス達は学園都市に向かう旅を再開させるのだった。
間近で盗賊を圧倒していたホルストの方が、脅しやすいと考えホルストが話しかける。
「お、お前は!こ、殺すなら早く殺せ!俺は何も吐かないぞ!」
「ふ〜ん。吐かないぞって事は、何か知ってるっていうことだね?」
「くっ!」
盗賊は悔しそうにその顔を歪めながらホルストに殴りかかる。
「おっと、『電撃』。」
ホルストはそれを危なげなく避けてから、麻痺させる。
「ホルスト様。こちらの縄をお使い下さい。」
と言いながらメラニーがこちらに近付いて来る。どうやら彼女達も追いついたようで、マルセルが乗っていた馬車のすぐ横にホルスト達のも停めてある。
「ありがとう。それにしても大分準備がいいね。」
「ホルスト様ならば、何人かは残しておくであろうと判断したまでです。」
何故か勝ち誇ったような顔でトリスを見てくるメラニーに、トリスは首を傾げる。
メラニーの様子に気付かないホルストは、縄を使って器用に盗賊を縛り上げていく。盗賊3人組の手を後ろ手で繋げて縛ってあるので、簡単には抜け出せないであろう形になった。
「ず、随分と手馴れてるな。経験があるのか?」
「いや〜、まぁ家の教育方針で、『盗賊に襲われた時の対処法』っていう感じで習ったんだ。その道のプロを態々呼んでね。」
「縄で拘束するプロ?」
「うん。」
『どんなプロだよ!』と心の底から突っ込みながらも、トリスは感心したように盗賊3人組の様子を眺める。
「まぁ、ホルストのお陰で大分やりやすくなったよな。はい、じゃあ尋問開始。」
そんなトリスの掛け声と共に、尋問が再開されるのだった。
ホルストが脅し、トリスが宥めるという構図で尋問した結果、冒険者が裏切りをしていたことが発覚した。因みにその冒険者達は『最初のホルスト様の魔法で、恐らく死んでいる』と盗賊は証言した。
「私自身も怪しいローブの男に雇われた身であります、サー!」
「う、うん。分かったからその口調はどうにかならない?」
「いえ、私はホルスト様に身も心も捧げました!であれば自身の知る中で最も敬意を払った言動をさせていただいています!」
「そ、そう…。トリス、どうにかならない?」
「うん、諦めろ。」
「貴様!ホルスト様に何という口の利き方をするのだ!無礼であろう!」
『マジで何があった!?』というのが第三者からの感想であろうが、恐らくはホルスト本人でも何があったのか分からないだろう。普通に尋問していたのだが、ホルストがちょっと痛みを与えた結果、恐らくは目覚めたのだろう。
兎も角ホルストの言うことなら何でも聞き、べらべらと喋ってくれたお陰で事情は分かったが、誰が雇ったのかという事だけが、謎として残るのだった。
「と、所で馬車に乗っていた方々は無事かい?」
電撃で盗賊の意識を刈り取った後、ホルストは何事も無かったかのように、別の話題をふる。
いきなり話題をふられたマルセルは、慌ててホルストに答える。
「え、えぇ。全員無事であります。しかし盗賊共が倒されるのを見て、少々精神的にダメージが入ったようでして、今は馬車の中で横になられています。」
「あ〜、確かに常人には刺激が強いですよね。ほら、ホルスト。慰めに行ってきなよ。」
トリスがまるで他人事のように、ホルストに責任を擦り付けると、困惑した表情が返ってくるのだった。
「え?僕が?その刺激が強い場面を生み出した張本人が?」
「まぁ、ホルストなら顔が良いから大抵の人は話しかけられただけでも有頂天に昇るだろうしね。」
「いやいや!トリスの方がカッコイイじゃん!」
トリスとホルストが言い合っていると、馬車から2人の女性が降りてきて、こちらに向かってくる。
「おや?お嬢様がこちらに来るようです。」
それに気が付いたマルセルが2人に声をかける。
「「お嬢様?」」
綺麗にハモった2人だが、次の瞬間息を呑む。
1人は茶髪のケモ耳メイドさんで普通に可愛いのだが、もう片方の女性は普通では無かった。や、別にとんでもない不細工という訳ではなく、逆に整いすぎていたのだ。白い髪に赤い目。顔のパーツはこれ以上にないほど完璧な配置となっている。そして病的なまでに透き通るように白い肌。身長は160程だろうか。この世界の人間にしては高く、威圧感を普通は感じそうなものだが、何故かか弱そうなイメージを引き立てる。
まさにこの世のものとは思えないほどの美しさに、数秒場の空気が凍り付く。
「御二方。先程は助けていただき、本当にありがとうございます。私はローゼマリー・アルトナーです。よろしければ、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「「は、はい!」」
声をかけられ思わず上擦った声で返事をしてしまった2人に、ローゼマリーは苦笑する。
「ホルスト。お前から自己紹介よろしく。」
「えぇ!?僕が!?わ、分かったよ。…コホン。僕の名前はホルスト・ラ・レンバッハです。名前から分かる通り、レンバッハ侯爵家の者です。ローゼマリー嬢に怪我が無くて、何よりです。」
胸に手を当てて、貴族風に自己紹介するホルスト。ローゼマリーの身を案じる言動をした途端、ローゼマリーの顔が朱が差したかのように赤くなる。
どうやらホルストの笑顔を目の当たりにし、大ダメージを受けたようだ。
「ホルスト様ですか。よろしければ、私のことはマリーとお呼びください。親しい方はそう呼んで下さいますの。」
「おお、流石ホルスト。まるで某有名フランスの怪盗みたいに鮮やかに盗みますな。」
「え?何を?」
「いや、こっの話だから気にしないで。あ、因みに私はトリスと申す者です。平民ですが、こちらのホルストとは友人をさせていただいております。」
「…友人。」
トリスの友人発言に、ホルストは地味に嬉しそにしている。
「友人の方ですか。では、私の事はマリーとお呼びください。」
「い、いえ。私は恐れ多いのでローゼマリーさんと呼ばせていただきます。ところでローゼマリーさんはどちらまで?私共はこれから学園都市に向かうのですが。」
「私も学園都市に向かう途中です。」
「そうですか!なら御一緒しましょう。固まっていけば盗賊に襲われる事も無いでしょうし。な?ホルスト?」
「う、うん。一緒に行きましょう、マリー。」
「は、はい!」
こうして、トリス達は学園都市に向かう旅を再開させるのだった。
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