転生王子は何をする?

血迷ったトモ

第22話 商談をしよう 3

転移で王都へと戻ったトリスは次々と提案をしていく。まずは大型のショッピングモール。王都の街並みを見回した結果、店の中に入らないと商品が見れないようなので、ウィンドウを設置してウィンドウショッピングが楽しめるような店舗を作ることにした。また、ショッピグモール内の店舗として、ファストフード店やラーメン店などこの世界にはなかった料理を提供する店も設置することとなった。最初は『何だそれ?』とグレゴールは眉をひそめて居たのだが、スキルの芸術神に含まれている料理スキルをレベルマックスで持っているトリスが作ったのものを食べさせると、目の色を変えて店舗の設置に協力的になった。
このように、順調に受け入れられていく現状にトリスは調子に乗って様々な事業を展開することとなったのだ。


「今日1日で、本当に沢山のアイデアをありがとうございます、トリスさん!…あ、そういえば、このアイデア料は儲けの4割で宜しいですか?」

グレゴールには、説明をする段階で問われたので、マルティナに聞かれた時と同様の名を名乗っておいた。それ以来、何故かさん付けで呼ばれているのだ。

「え?あ〜、4割で大丈夫なんですか?」

「ええ、大丈夫です。残りの6割で更なる事業の展開が可能となると私は考えているので、4割でも莫大な金額となりますよ。」

「いや、別に金が欲しくてやったんじゃ無いんですけどね。ま、あっても困ることは無いでしょうし、貰っておきますよ。1ヶ月毎に様子を見に来るので、その時に手渡しで頼みます。」

自身の貰う金のことを考えて居なかったトリスは、かなり適当な返事をする。
因みに、この世界では1ヶ月は30日、1年は12ヶ月である。

「手渡しですか?冒険者ギルドや商業ギルドに入れば、専用の口座が設置できますが?そちらの方が手渡しより安全かつ確実にお手元に渡ると思いますが。」

流石に手渡しだと、盗難の可能性を考えたグレゴールは別の渡し方を提示する。

「へ〜、そうなんですか。じゃあ、冒険者ギルドに登録するので、登録が終わったらまた来ます。」

「はい、それでお願いします。あ、それと次回からはこちらを受付にご提示下さい。」

そう言って、グレゴールはトリスに1枚の紙を渡してきた。

「これは何ですか?」

「これは私の直筆サイン入りの証明書ですね。これがあれば大抵の方には取り次いで頂けるかと思います。」

「ということは、何か権力関係の面倒事に巻き込まれたときは、これを使えば大丈夫って事ですか?」

その言葉に、グレゴールは苦笑いを浮かべながら言う。

「ま、まぁそれもありますが、次回からは普通に入口から入って頂かないと、私の心臓が持たないというのが本音なんですがね。」

ごもっともである。
とはいえ、今回は普通にやった場合は取り次いで貰えなかった可能性が高かったので、必要とあらばこのような手段をとることを厭わないが。
そんなトリスは普通に出入口から外に出て、メニューで表示されている時刻に目を向ける。

-今は3時か。朝10時くらいに出てきたから良かったものの、5時間近くも話し込んでいたのか…。-

そんな事を考えながらも、地図で冒険者ギルドを検索して最短ルートを割出す。距離として徒歩5分ほどしか離れていなかったため、トリスの脚力なら数十秒で着くのだが。
トリスは冒険者ギルドが見える所まで来たが、何故か路地裏に隠れるように消える。そして十数秒後、身長が185センチほどの細身のローブを着た人物が出てくる。
何を隠そうトリスである。流石に子供の背丈格好で冒険者ギルドに入るのははばかられたので、年齢操作エイジ・コントロールで18歳ほどに成長したのだ。そしてローブの下の服を着替え今に至る。
こうして、謎のローブの英雄『鉄壁の大賢者』と後に呼ばれることとなるトリスの冒険が始まるのだった。

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