転生王子は何をする?

血迷ったトモ

第5話 教育方針決定!

トリスのステータス鑑定が終わり、クリスティーナ達が部屋を出て行ったあと、騎士達により市民証を発行する魔道具が大広間に運び込まれた。見た目はコピー機みたいである。

「それではトリス様。こちらに手を載せて下さい。」

トリスは騎士に言われるがままに指し示された場所に両手を置く。すると機械音を出しながら少し光る。十数秒後、コピー機なら印刷された用紙が出てくる場所からB4サイズの分厚い1枚の紙が出でくる。
トリスは、その光景に一瞬ツッコミを入れそうになったが、グッと堪える。まんまコピー機じゃねぇか!と心の中ではツッコミを入れたが。
そんなトリスを他所に、騎士は恭しくその紙を手に取り、手渡してくる。

「こちらをどうぞ。」

「あ、ありがとう。こんなに簡単に発行できるんだ。」

「えぇ。では市民証の使い方や機能についてご説明致しますね。」

騎士曰く、市民証は町や国境の出入りに必要であり、持ち主以外が触っても何も表示されないため、とても信用度が高い物になっているそうだ。また、ステータスで人に見せたくない所は、犯罪者等に付く称号以外は自由に操作できるようだ。ただし、文字が伏せられて『*』のような文字が出るので、完全に消せるわけではないらしい。

「へ〜、便利なんだね。教えてくれてありがとう!」

明るく笑顔でお礼を口にする。すると騎士はその笑顔に照れながらも『任務ですから。』と言う。トリス自身に自覚は無いが、かなり可愛い顔つきをしていて、女の子と見紛うのでは無いのかというレベルである。それこそ髪や目の色は似ていないが、造形はフランセットを日本人顔に近づけたかのようである。本人が聞けば、他の兄弟や父上を見ろ!と、叫ぶであろうが。この王族達は基本美形なので、見慣れた日本人顔に近い自分はイマイチぱっとしないと思っているのである。
それは兎も角、トリスは照れた騎士の様子に気付きもせずに市民証をいじくりまわしている。そうこうしている内に、王族が集結してトリスのステータス発表会が開催された。

「それではトリス。スキルについて教えてくれるか?」

オウギュストが皆を代表して聞いてくる。

「はい、分かりました。まず武術系ですが、剣術スキルだけがあります。次に魔法適性ですが、火と水と風の3つでした。これで以上ですね。」

それを聞き、オウギュストは小さく呟く。

「ふむ。やはり風は使えたか…。」

それを偶然にも聞き取ったトリスは、以前の魔法暴走事件(正確には威力の調整ミス)がバレていることを警戒して、一応入れておいて良かったと心の底から思った。

「へぇ、トリスは3つも適性があるのか〜。羨ましいな〜。」

「何言ってるんだ、クリフは魔眼があるじゃないか。俺なんか魔法適性ゼロだぞ!まぁその代わりに剣術、拳闘術、槍術、弓術の適性があったけどな!」

「確かにそうですけどね、兄上。僕の場合は『煉獄の魔眼』なので火属性しか使えませんし、威力の調整が面倒なんですよ…。」

クリストフの言葉に興味を惹かれたトリスは質問をする。

「クリフ兄上。『煉獄の魔眼』ってどんな魔眼なのですか?」

「『煉獄の魔眼』はだね、上位の火属性魔法が消費魔力量はただ魔眼に軽く集めるだけで、尚且つ無詠唱で発動できるんだ。」

トリスは、その効果に素直に驚く。上位魔法とは、高威力且つ広範囲攻撃の魔法で、初級・中級・上級・超級・神話級と級のある魔法の中で、実用化されている中で最も強い威力を持つ超級の次に強力な魔法である。因みに神話級とは、魔法のスキルレベルが10にならないと使えず、神話の再現と見紛うかのような絶大な威力と効果を発揮するそうだ。まぁ、超級魔法使い5人で一つの国を1日で滅ぼせる威力はあるため、神話級に出番など早々無いであろう。

「へぇ!それは凄いですね!」

「ただし、知識としてどのような魔法があるのかを知らないと使えないし、しかも威力も凄いから調整しないとおちおち練習もできないんだよ…。」

「あぁ、それはその…。ご愁傷様です。」

その場に微妙な雰囲気が漂って来た時、フランセットが手を叩きながら言う。

「あまり人に自分のステータスを教えるべきじゃありませんよ?家族は兎も角として、他人には教えてはいけません。弱味になってしまうこともありますからね。」

「分かってますよ、母上。弟でなければ流石にあそこまで教えませんよ。」

「えぇ。分かっているならいいわよ。それよりも、トリスに魔法適性が3つもあるって分かったことだし、そろそろ家庭教師でもつけるべきかしら?」

その言葉にオウギュストも頷いて言う。

「うむ、そうだな。一般教養はフランが教えるとしても、魔法はやはり専門家でないとな。クリフの様に家庭教師をつけるか。やはり宮廷魔導師団の中でも特に口の固い者に任せるか?しかし三属性となるとなぁ…。やはり彼女しか居ないか。」

「?彼女ってどなたでしょうか?」

「うむ。彼というのわだな、宮廷魔導師団のまとめ役である魔導師団長のアリアーヌ・ミオットだな。」

この瞬間、トリスにとって最高の師となる人物に出会うことが決定したのだった。

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