混じり《Hybrid》【新世界戦記】

小藤 隆也

遺恨 2

 NW3年になると、グリード氏は女性の使用人も募集していた。リオールはこの募集に応じて使用人となった。
 そしてもう一人、ステファニー・ハワードというアースホワイトの女性もグリード氏に雇われた。

 ステファニーは、肩までの長さの金髪に淡いグリーンの瞳を持ち、目鼻立のハッキリとした美人で、性格はサッパリとしていた。キツ目の口調で、人に対してズケズケと言い過ぎるきらいがあるが、嫌味がなく、誰からも好かれる女性だった。
 同僚となったリオールとも直ぐに打ち解けて、お互いに何でも相談し合える無二の親友となっていくのである。

 ダビルドがこのステファニーに目をつけた。何かにつけて近づきしつこく言いよったが、相手にはされなかった。
 ステファニーはこの蛇のようにしつこく付け回ってくる男が嫌いで、何度もハッキリと断わっていたが、ダビルドは諦めず、執拗に追いかけ回した。

 そうこうしている内に、ステファニーは同郷のティムと恋仲になってしまう。二人は余程ウマが合った様でトントン拍子に話は進み、NW4年の9月の中旬に結婚と相成った。当然ダビルドは面白くない。逆恨みし、二人に復讐する機会を狙っていた。

 グリード夫妻が立会人となって、正式に夫婦となり、3カ月が過ぎた。
 NW4年も年の瀬が迫り、忙しさも増していった頃、グリード氏の作業場でも、小作人総出での居残り作業となった。
 ティムがゴミ処理の為、一人離れて焼却炉に向かう姿を見たダビルドは、復讐を実行する。

 ゴミを炉に詰め込むティムに、ダビルドが後ろから声をかける。ティムが振り向く一瞬に、ダビルドは一気に距離を詰め、彼特有の長い右腕を伸ばした。
 振り向いたティムの喉を鷲掴みにした。ダビルドの長い指は、ティムの喉を一周してしまっている。
 ダビルドは、喉を掴まれ声を出す事も出来ないティムの首を、一気にへし折り、そのままの勢いでティムを焼却炉に叩き込んでしまった。

 ダビルドはその足で今度はティムの家に向かった。当然、ティムの新妻ステファニーを次のターゲットにする為である。
 ティム夫妻は新居を、グリード氏の屋敷と作業場の、丁度中間の位置に構えていた。入口の扉が叩かれた時、ステファニーは、ティムが帰ってきたものと思っただろう。
 扉を開けた瞬間、異様に長い腕が伸びてきて、ステファニーの口を含めた顔の下半分を、指の長い手がスッポリと覆った。
 そしてそのまま、ダビルドが下卑た笑顔を浮かべながら、扉を開け放ち、ズカズカと家の中に乱入してきてしまった。
 ダビルドは、新妻に罵声を浴びせながら、乱暴に犯し狂い、犯しながらじわじわと首を絞め、殺してしまった。
 新妻は、声を上げる事も出来ずに、ただ涙を流し続ける事しか出来なかった。


 事件の第一発見者はリオールだった。彼女はこの日、ティム家の夕食に招待されていたのである。
 彼女がティム家を訪れた時に、開け放たれたままの扉を不審に思い、そっと中を覗き込んだ。そして、自分の目を疑った。
 自分の親友が、親友が日頃から嫌っていた男に馬乗りにされている。男は喜々として親友を犯し続けている。
 しかし、親友は何の反応も示さない。不意に見た親友の眼には、既に生気はなかった。恐らく既に事切れている。普段は冷静なリオールも、あまりの光景に言葉もなく、唯、立ち尽くしてしまった。

 男が、その血走った眼をリオールに向けた。男はリオールを見つけ正気を失ったかの様な「ゲヒャヒャヒャッ」と言う笑い声とも叫び声ともとれる声を上げた。
 ダビルドだ!リオールは、この時になって初めて、この男の名前を頭に浮かベタのである。
 

「混じり《Hybrid》【新世界戦記】」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く