混じり《Hybrid》【新世界戦記】

小藤 隆也

遺恨 1

 リンと別れて4日が過ぎた。一行はダウアンという村に滞在している。明日はサイバイ半島の峠を越えてカウバグア村を目指す事になる。

 途中、幾度か怪物に襲われたが、問題なく切り抜けてきた。だが、どうやら次のサイバイ半島の峠、プランターン峠を厄介な山賊が根城にしている様である。
 その山賊達についての事で、テツ達には特別に気になる噂があった。ここ、ダウアン村はサイバイ半島まで8キロメートルの距離にある。ここで一行は、山賊についての最新の情報を集める事にした。
 各々で聞き込みをして回った、その日の夕食の席で、山賊についての会議が開かれた。


「どうやら間違いない様ですね。特徴も一致します」

 ジュラが口火を切って話し出した。

「セルヒラードが、奴については一番詳しいんじゃないか。どう思う?」

「間違いないでしょう。思い出したくもない奴ですが、ダビルドです」

 ダビルド・デルヘーア。セルヒラードと同じNW2年からNW4年の暮れまでの2年半の間、グリード氏の農園で、小作人として働いていた男である。
 ジュラもNW2年からエドゥウンの元で働いていたので、当然面識はある。


 ダビルドはカクトメスト人で、混じりでもある。
 長身のカクトメスト人にしても、ダビルドの腕は異様に長い。ただ長いだけではなく、右腕の方が左腕よりも、明らかに長かった。
 更に、その長い右腕は手の指も長い。普通のカクトメスト人の倍近い長さがあった。通常ではありえない、混じりの証明と言えた。
 能力的には、その右腕の力が強く、特に握力が異常に高い。測定したわけではないが、おそらく400キロはあっただろう。
 それ以外は普通なので、右腕だけが混じりの影響を強く受けたと思われる。しかし普通といってもカクトメスト人である。元々身体能力は高く、気の業も備えていた。
 一番の問題は、混じりのマイナス面である。ダビルドの場合は、酷く好戦的であり、かつ残虐であった。

 彼の特徴はそれだけではない。混じりとは関係ないが、彼の顔の左の頬骨の辺りに、抉られた様な大きな傷がある。
 それら全ての特徴が、一行が聞き集めた噂の、現在の山賊の首領と思しき人物の特徴と、全て一致していたのである。


 ティム・デンプシーという男がいた。アースホワイトの陽気な男であった。
 再構築の直後、怪物に襲われていたところをセルヒラードに助けられ、以降、二人は行動を共にする事になる。寝食を共にする内に二人は無二の親友となっていった。
 セルヒラードが狩りをし、ティムが漁村へ行って小さな市を開き、得た獲物を必要な物と交換してくる。このティムが開いた小さな市が、現在、ヨースフラで行われている市の原型となっている。

 この頃は、エドゥウンもまだ魚を捕って暮らしていた頃で、市を通じてティムとエドゥウンとは知り合いとなっていた。
 エドゥウンがグリードと意気投合し、土地の開拓に乗り出す時に、ティムにもその話しを持ち掛けたが、その頃のティムは、少しづつではあるが大きくなり始めていた市の、元締め的な立場に立ちたいという野望を持っていて、一度は固辞した。
 だが、ティムとセルヒラードの生活は中々安定はしなかった。その為、NW2年からエドゥウンの様に個人で開拓する様な事はせずに、安定を求めて、グリード氏の小作人として働く事を決めたのである。

 居住地をグリード氏の敷地内に移す準備をしていた頃に、ティムが酷く見すぼらしい身なりをした、カクトメスト人の青年を連れて帰ってきた。
 この青年がダビルドである。ダビルドは至る所に怪我もしていた。ティムは元来、人を疑うところのない人物で、この時も、ただ単にダビルドを不憫に思い、連れ帰っただけであろう。
 今にして思えば、この時もダビルドは、どこかの村で不義をはたらき追われてきたのだろうと思う。

 結局ダビルドも、ティムが連れて行く形で、グリード氏の小作人となった。つまり、ティム・セルヒラード・ダビルドは同時にグリード氏に厄介になったという事である。

 半年程は問題を起こす事もなく、真面目に勤めていたダビルドだが、次第に本性を出し始める。

 グリード氏の事業は軌道に乗り始めていて、小作人を大々的に募集していた頃である。新たな小作人が次々と雇われていた。
 ダビルドは、自分より後輩にあたるこの小作人達に、冷たく且つ乱暴に対応していく。そして、段々とグリード氏とエドゥウンを除く全ての人に対して、横柄な態度を取り始めた。
 テツやティムにも乱暴な態度を取っていたが、この二人は元々温厚で、人に対して嫌悪を抱く事もなかった為、別に気にも止めなかった様である。
 セルヒラードに至っては相手にすらしなかったが。しかし、ダビルドの態度は次第に度を超していくことになる。

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