混じり《Hybrid》【新世界戦記】

小藤 隆也

旅立ち 2

「では、道中気をつけてな」

「はい。行ってきます」

「ゴサーロ。リンをお願いね」
「リンも皆の言う事を良く聞くのよ」

「はい奥様。必ず」

「はいです、母様」

 挨拶を済ませ、一行は出発した。1日目の目的地は、ヨースフラ地方の東端に位置するモロア村である。
 テツ達の暮らす農村は、ヨースフラ地方の南端にある。村名はハルスベル。ハルスベル村からモロア村までは約25キロメートルの距離がある。
 旅の初日であるし、リンも連れてという事で、近場の宿場を選ぶ事にしたのである。

 無事に旅の一行も出立を果たしたので、1日目の目的地に着くまでの間に、旅の概要と行程について説明しておこう。


 先ずは見送り組。これは先に述べたリンとゴサーロである。
 この時代の旅には、怪物や魔獣の襲撃に備えなければならない。又、生活も安定してきたとはいえ、まだまだ盗賊・夜盗・山賊等の類いも多い。それ故に護衛を備える必要がある。
 魔獣というのは、怪物の中から特に人型に近い物を指している。ファルのゴブやウィラードのルドロール・UNのモスマンやビッグフット等の事だが、単に怪物とひとまとめにして呼ぶ事の方が多い。

 今回の見送りはヨースフラ地方内のモロア村までなので、襲撃の恐れは少ないが、ゴサーロの同行はリンの世話をする事もあるが、護衛の意味合いが強いのである。

 続いて、ポートモレスビー行きの一行である。

 メンバーは、この旅のメインとなるフロンとテツ。
 護衛役はテツの小作人の中からジュラ・ピッケ。グリード氏の使用人からセルヒラード・アモスが選ばれている。この二人は共にカクトメスト人で、戦闘力が高い。

 カクトメスト人の特徴も簡単に述べておこう。肌の色はアースイエローと同じだが、髪の色が赤い。個人差はあるが、赤に近いか、オレンジに近いかくらいの違いしかない。目の色も赤系だが、黒系も少し混じっている。
 身長は成人の平均身長で210センチメートルと高い。長身だが動きが俊敏で、身体能力は全種族中で一番高い。
 そして、最も特徴的なのは、彼等は《気》という物を自在に操る事が出来る点である。
 気は、誰もが持っている生命エネルギーの様な物で、彼等は再構築前からこの気を使い、多くの事を成してきた。カクトメスト思想社会の根幹で、最早、生活の一部となっている。
 戦闘においても、気を用いて闘う。基本的に素手での戦闘だが、気を纏ったり、拳等、身体の一部に集中したりして戦闘力を上げる事が出来る為、護衛役として適している。

 ジュラはエドゥウンの頃からの小作人である。NW3年からエドゥウンの元で働き出し、今年で7年目になる。
 年齢は今年27歳になった。テツにとっては少し年の離れた兄貴分である。
 格闘術の師匠でもあり、気の扱いも彼から学び習得した。ホワイトタイガーとの戦いで、テツが使った気配を読む術も、彼から教わったものである。

 ジュラは小作人とはいっても、小規模ではあるが土地持ちでもある。
 エドゥウンがネフラ栽培を本格化しはじめた頃、それまでのトウモロコシ畑の大部分をグリード氏に任せたが、彼の小作人として働いていたオディオンとジュラにも少しづつ割譲したのである。
 この旅の間は、ジュラの土地もテツの土地と同様に、一番古株の小作人であるオディオン・エメニケに管理してもらう事になっている。
 オディオンはアースブラックで、ジュラより1年早いNW2年から小作人として働いている人物である。

 セルヒラードはグリード氏の使用人の筆頭のゴサーロの右腕的な存在である。グリード氏からの信用も厚く、フロンも彼を信頼している。
 カクトメスト人である事も、彼が護衛の一人に選ばれた理由だろう。

 そしてもう一人。子供とはいえ女性がフロン一人だけ、というのは心配だという事で、リオール・メツがフロンの世話役として同行する事になった。
 当初、リオールは多忙の為、グリード家に残る予定だったが、オソーンが強く要望した為、同行する事となった。
 彼女の不在中は、グリード氏の秘書仕事は、アースホワイトのジブリル・ジャレが代行する。
 ジブリルは、グリード氏の三人の男性使用人の、序列で言うと3番目にあたり、普段は雑務を取り仕切っている。特に優秀というわけではないが、真面目で誠実な男である。

 オソーンの家事の手伝いには、テツの小作人のオディオンの奥さんであるマルタシア・エメニケが、通いで手伝う手筈になっている。
 マルタシアはウィラード人のブルー種である。オディオンと結婚して2年目になるが、まだ子宝には恵まれていない。
 マルタシアとオソーンとは、年齢も近く、普段から顔を合わせては長話しをして盛り上がる旧知の間柄である。
 今回の手伝いの件でも、マルタシアは二つ返事で快諾した。

 それと、女達の為にと、グリード氏から馬を3頭提供してもらっている。
 ポートモレスビー行きは、総勢で五人と馬2頭。見送りが二人と馬1頭で、現在モロア村を目指して歩を進めているのである。

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