混じり《Hybrid》【新世界戦記】

小藤 隆也

怪物 1

   収穫したネフラを荷車に積み終え、農耕具の後片付けをしていると、フロンが、彼女の使っていた鎌の刃の部分を内側にパチンと閉じ。

  「私は先にもどってるね。荷下ししたら直ぐ来るのよ」

 と、既に歩き出していた。
 鎌は折りたたみ式になっている。そして、その鎌を持ったままだ。

  「お〜い、鎌」

  「どうせまた使うんだから預かっとくわよ。砥ぎも私がやっておくから〜」

   自分の愛用品にするつもりかもしれない。

  「僕らも戻りますか」

   全ての片付けを終え、テツと小作人たち3人も、テツの家の作業小屋へと向かった。

   小作人たちにも手伝ってもらい、収穫したネフラを作業小屋へと下ろし入れた。彼らに明日の予定を伝え、今日は解散となる。
   別れ際に彼らは、

  「お嬢の相手よろしくな」

   と一言伝えて、グリード氏の作業場のある方向に向かって行った。
   彼らにもまだ仕事が残っているのだろうと思う。
   テツはテツでスス落としの道具をまとめ、小さな工具箱も持ってグリード氏の屋敷へと向かった。

   グリード氏の屋敷は高台に建っていて、テツの家から北西に800メートル程行ったところである。一本道だが、テツのところのトウモロコシ畑をグルっと迂回して行く。
   ちなみにネフラ畑はテツの家の東側のトウモロコシ畑の裏手に広がっている。テツの家は全面をトウモロコシ畑に囲まれる様に建っていた。

   緩やかにカーブした道を曲がりきった辺りでトウモロコシ畑を抜ける。その先は広大な空き地になっていて、ここからは坂道になる。その坂道を登りきった所にグリード氏のお屋敷は建っていた。

   テツは玄関には見向きもせずに、真っ直ぐに裏手へと回る。この屋敷の台所は土間になっていて、そこの勝手口の戸を堂々とくぐる。
   テツはこちら側から入るのが常になっている。
   勝手口の脇には、さっきまでフロンが使っていた鎌が立て掛けてあった。既に砥ぎ終わっている。

  「こんにちは〜。ストーブの調子、見に来ました〜」

   テツは若者らしく、元気に声をかけた。

  「いらっしゃい。ストーブの調整しに来てくれたんだって、娘から聞いているよ」

   グリード氏はご夫妻で出迎えてくれた。

  「どうもこんにちはグリードさん。すいません、またフロンに手伝ってもらっちゃって・・・」

  「気にしないで良いのよテツ。どうせ娘がまた、勝手に押しかけて手伝ったんでしょ」

   話の途中で奥さんが割り込んできた。

  「かえって迷惑かけているんじゃないの。ごめんなさいね」

  「いえいえ、助かりますよ。ただフロンには去年、怪我をさせてしまっているので、ご心配でしょうから」
  
  「それだって、テッちゃんは十分気をつけるように言ってたんだから、あの娘が悪かったのよ。全く人の言う事なんか聞きはしないんだから」

  「そうだな。まあ、また迷惑かけるかも知れんが、面倒見てやってくれ」

   グリード氏も奥さんと同意見のようだ。

  「グリードさんがこの時間にご在宅とは珍しいですね。会合ですか?」

 テツがグリード氏に尋ねた。
 会合とは、この辺りの豪族達が集まって色々と意見し合う集まりの事である。
 豪族という程ではないが、数人の小作人を抱えているテツも本来は出席しなければならない。だが、テツはそういった事はグリード氏に一任していて、後日、その内容を報告してもらっていた。

  「ああ。緊急の会合があってね。私もちょうど今戻ったところなんだ。その会合で話し合われた内容について話しておきたい事があるので、後で時間をもらえるかな?」

  「そうだテッちゃん。居間のストーブの調子もついでに見てもらえない?」

   また奥さんが割り込んできた。奥さんは普段から話し好きで世話好きである。特に幼い頃から自分の娘と兄妹同然に育ってきたテツには、あれこれと世話を焼きたくて仕方がないようだ。

「どちらも構いませんよ。お二人の寝室の方も見ておきますね」

   テツは快諾した。

   グリード氏の屋敷の敷地内には、使用人用の家も別棟で2棟建っている。それら全て建物のストーブのメンテナンスをテツとテツの小作人とでおこなっている。元々テツは、屋敷の方のメンテナンスは、今日中に終わらせてしまおうと考えて来ていたのだ。

  「うむ。よろしく頼むよ」

  「先ずは子供達の部屋からお願いするわね。あの娘達はさっきから首を長くして、貴方の事を待っているから、これ以上長話していると私が怒られてしまうわ」

   テツは奥さんに促されて「では後ほど、居間の方に伺います」とグリード氏に一言声をかけながら、子供部屋に向かった。


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