混じり《Hybrid》【新世界戦記】

小藤 隆也

農園 1

   NW10年4月14日。舞台はインドネシア大陸の南部に位置する、ヨースフラ地方の農園から始まる。
  
   この農園ではネフラという植物を育てている。ネフラはイネ科の植物で、その丈が3メートル程にもなる。
   その長い丈を3当分して、それぞれ別の使い道を持つ、非常に便利な植物である。

   上の部分は稲穂と葉に分けられ、稲穂は粉に引いて食用に、葉は家畜の飼料として使われる。
   特に葉を乾燥させてまとめた物は、アースやガレン原産の馬や、カクトメスト原産のカヤークに好まれた。

    馬は平地の乗り物として人気で、長い距離の移動に適している。
    カヤークは大きな角を持つシカに似た動物で、山岳地帯の乗り物として使われている。
 また、カヤークは力も強く、運搬手段としても幅広く使われていた。

   中の部分、いわゆる茎の部分からは良質な油が採れる。
   無色透明で、匂いは油に似つかわしくない程に爽やか香りがほのかに香る。食用油として申し分ない物である。

   下の部分も茎なのだか、この部分だけは非常に硬い。この頃にはその部分の油を絞り摂る技術はなかったが、固形燃料として使用する事が出来た。

   火力が高く燃焼時間も長い。難点は、鍛冶の燃料として使用する分には問題ないが、家庭で使用する際には、その部分が1メートルと少し長過ぎる。
   その為、切断して使用するのだがそれがとにかく硬い。機械工具があれば問題ないが、この頃はまだあまり普及されてはいなかった。
   普通はまあ鋸でギコギコと切るしかなかったのだ。
   この下の部分の茎の直径は上の方で1.8センチ、根元では2.5センチくらいある。
   それを鋸で1ヶ所切断するのには2分近くは掛かる大変な作業だった。


   このネフラが刈り入れの時期を迎えていた。
   1人の少年が2人の大人に刈り入れの仕方を教えている。

  「下から1メートルくらいのところに簡単に手でもぎり取れる部分があるんですよ。先ずは手の届く範囲でそれをもいじゃって下さい」

   少年が実践する。なるほど、ポキポキと簡単に折れていく。

  「次にこの道具を使って、手の届かないところを同じ様に採っていきます」

   少年は傍らに置いてあった道具を拾い、それを器用に使って2・3本づつポキポキと折っていった。
   道具は、長い木の棒の先にネフラを挟む為の短い棒が、枝分かれする様に付いている。
   短い棒の部分は可動式になっていて、それを手元で操作出来るようになっている。

  「この道具はなんて名前なの?」

   教わっている大人の内の1人が聞いてきた。

  「名前ですか?実は正式な名称ってないんですよ」
  「亡くなった父と試行錯誤しながら、自分達で作った物なんで」
  「まあ、単純にもぎ機とか、もぎ棒とか呼んでますけど」

   少年はちょっと苦笑いしながら答えた。

  「んじゃあ、先ずはここまでちょっとやってみて下さいね」

   こう言って少年は大人達に作業を促す。

   少年は簡単そうにやっていたが、自分でやってみるとこれが案外難しい。
  上の部分だけでも2メートル程の長さがあるし、重さもかなりあるのでバランスが取りずらく、隣の茎まで意図せずに折れしまうのである。
   それでも手折り作業はなんとか進むがもぎ棒はそうはいかない。
   途中、少年に1本づつで構わないと言われるが、まあ難しい。救いはこの少年の面倒見の良さで、勘どころや注意点を丁寧に分かりやすく教えてくれるので、なんとか作業は進められたが、時間はかなりかかりそうである。




 

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