戦闘力?皆無ですが防御力とトラップには自信があります。

ブラック兄者

そんなものをオレにどうしろって言うんだ!!くっ・・・殺せ!

新しい仲間パーティーに迎え、オレたちは今まで滞在していたカリーチェを後にした。

次に向かうのは北の山にあると言うヤマトと言う村だが一度その途中にあるコーハンと言う街に立ち寄ることになった。

どうにも大きな街だと言うことで旅に必要な物はだいたい揃えれると言う。

カリーチェで買える物資では長旅には耐えられるだけのアイテムはそろえられそうになかったからありがたい限りだ。

「しかしあれだな、BOSやってた時は移動する時食い物なんて概念無かったから危うく旅の途中で餓死するかもしれなかったんだなオレたち」

「そうですねーカリーチェにいた時はちゃっかりご飯食べてたから旅の道中の食事のことは頭から抜けてました…」

「その点、カムには感謝しないとな!」

「いえいえ、旅の準備に食料が含まれていなかったのが少々気になったので僭越ながら助言させていただいたまででございます」

そう、空腹の概念があると言うことに気がつかず危うく食料無しの旅をオレたちはしようとしていたのだ。

どうやらこの世界では空腹による肉体的な「死」が存在しオレたちの元いた世界と同じく消失してしまうとのことだ。

「死」は土地がある一定の条件で加護が無くなった場所でHPが無くなっても同様に命を落とすとのことらしい。

カム曰くそんな場所はまず無いとのことだが今後の事を考えると覚えておいた方が良さそうだ。

・・・
・・


「ここをキャンプ地とする!」

夕刻、森の中俺たちは野営の準備を始める。

渓谷エリアで使ったキャンプキットは何故かカムが使うことが出来なかったので焚き火を簡易キャンプをすることになった。

「さて、ゲームのシステム外で料理なんてしたこと無いが誰ができる奴はいるか?」

オレは全く料理を作ったことがないのでノノとカムに聞いてみた。

「すみません、私はこの体になってから物を食べることができなくなり良質な食事を提供できる自信が御座いません。それと味という概念もかなり昔に忘れてしまいました…申し訳無いのですが食事だけはお二人にお願いをしたいです。」

「ノノは料理出来るか?」

「えっと、多分大丈夫!」

多分ってなんだ多分って・・・

「今日の夕食は任せて!私美味しいご飯作って見せるから!」

両手を広げ拳を握りこんだ状態で張り切るノノ、フンスと言う鼻息が聞こえそうだ、不安だが今回はノノに任せてみよう、オレも作れないのにあまり文句も言えないもんな。

「シート様、よろしければ簡易的なテント、テーブル等私が準備しましょうか?確かテントは先ほど使われたもの以外お持ちではなかったはずなのでお力になれると思いますが」

ノノは向こうの焚き火に向かいながら料理を始めた、何やら料理では聞くことができない物体を切断する音とノノの軽い悲鳴が聞こえたが聞かなかったことにした、だって恐ろしかったから・・・

「準備するって言ってもカム、物が何も無いのにどうやって準備するんだ?」

「フフフ、こうするのです」

カムが小さな投げナイフを地面に向かって投げ放った、ナイフは地面に深々と刺さり特になんの変化もない。

パチーン

カムの指を鳴らす音が森の中に響き渡る。

するとナイフが刺さっていた場所が盛り上がり形を変え始めた、変化は一瞬だった。

盛り上がった土はテーブル、食器、テント、野営をするのに必要だと思われる道具が一瞬のうちに現れたのだ。

「なっ!」

「驚かれましたか?この世界ではスキルが全てなのですが、錬金術というスキルを使用し土を別に物質に変化させ、これらの物をご用意させていただきました。衛生面に関してはご安心ください、殺菌処理は完璧に済ませてありますので」

「驚いた、スキルでこんなことまでできるのか。」

「こちらの世界の住民はシート様たちが使用するスペルが使用できない代わりにこのようなスキルが発達しましたのでこのようなことが出来るものは割と多くいますね。」

なるほど、スペルの代わりということか。

まだなんとも言えないが制限がありそうな気もするが今は気にすることはあまり無いだろう。

「うっ!」

鼻を指す強烈な異臭がオレの鼻孔を刺激する。

ノノがいる方向からだ。

オレは異臭の原因を確認するためノノの方を振り返る。

ノノの調理するものは至って見た目は普通なのだが異臭が酷い。

どう酷いって馬糞と腐敗臭が混ざり合った匂いだ。

・・・オイオイ、コレヲクエッテイウノカ?

いかん思考回路が吹っ飛びそうだ。

「シショーご飯できましたよー♪」

カムの方を一瞬見る、しかし首を横に振って悲しい顔をするのである。

ええい、ままよ!

どうにでもなっちまえ元はと言えばオレの責任だ!

「おっおう、あっありがとな・・・」

完全に顔は引きつっていたと思う、しかし満面の笑みでオレを見つめている少女の期待を裏切ることはオレにはできなかった。

くっ食うぞ!

カチャカチャカチャ

食器が震える音、吹き出る脂汗俺に中のレッドシグナルが警笛を全力で鳴らしている。

パクッ!

オレは異臭を放つスープ状の半固形物のような何かを口に入れた瞬間意識を失った。


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