魔剣による(※7度目の)英雄伝説

D_9

第1章『最強の魔剣』編 19話「自己紹介+α」


 リュートとラルフの決闘後、リュートとクロ、生徒会メンバー、そしてラナは生徒会室に来ていた。全員が席についたところで、

 
「コホン……。それじゃあ、まずは自己紹介からね」

 
 愛望がそう言って、立ち上がる。
 

「私はこの学園の生徒会長をしています。西園寺愛望さいおんじまなみです。よろしくね、リュートくん」

 
「はい。よろしくお願いします」

 
 愛美は優しく微笑みながらそう言って手を差し出す。リュートは綺麗に頭を下げて愛望の手を取る。


「……僕はフォン・ブルックだ。副会長をしている」


 事務的にブルックは自己紹介をこなす。明らかに好意的ではないその姿に愛美はため息をついていたが、


「はい。よろしくお願いします」


 リュートは愛美と同じように対応する。それを見て、ブルックは少し顔を曇らせた。


「私も副会長をしています。津川希美です。よろしくお願いします」


 その空気を打ち消すかのように、希美が自己紹介をする。


「よろしくお願いします、津川先輩」


 しかし、彼女は自己紹介が終わってもリュートのことを見ている。それを見て、クロが少し警戒を強めるが、すぐにリュートに目で遮られる。


「……………」


 それでも、彼女は黙ったままだ。リュートはこれでは一向に進まないと感じ、自分から声をかけようとする。


「あの………」

 
 そこで、ようやく希美が口を開いた。

 
「………すみませんでした」

 
 そう言うと、いきなり彼女は頭を下げてきた。


「…………」


 流石にリュートもこれには驚いたように固まっている。しかしすぐに回復し、


「すみません。私は津川さんに謝られる覚えはないのですが……」


 そう言うと津川は、


「………先ほど、クロさんと話していたときにクロさんの前であなたのことを悪く言ってしまいました。あなたのことを何も知らないのに……。だから、ごめんなさい」


 そう言って、もう一度頭を下げる希美。言わなければバレないことなのに、それをわざわざ自分に謝ってきた。リュートは、


「(………この学園には真面目な方も多いようですね)」


 そう思って、


「分かりました」


 と、一言だけ告げる。それを聞いて
希美は、ポカーンとしてしまう。しかし、流石は副会長といったところか。すぐに立ち直り彼に問い詰める。


「ちょ、ちょっと待って!!そ、そんな簡単に許していいの?」


「?はい」


「あぁ、そう………。って、そんなわけ無いでしょ!!!」


 いいツッコミを入れてくる副会長(もちろん、リュートはボケようとはしていません)。


「私は、あなたのことを勝手に理解したつもりになって、自分勝手にあなたのことを言ったのよ!?」


「知らない人間に対して警戒するのは、普通のことだと思いますが……」


「で、でも………」


 リュートからしたら…、いやその他の人間もその程度のことで怒ることなど早々ないことなのだが、どうも彼女からすると簡単に許されることではないようである。そこでリュートは、

 
「……では、津川副会長はなぜ私をそのように言った・・・・・・・・・・・・のですか?」


「!……そ、それは」


「………私の予想では、津川副会長は私のことを心配して下さっていたのではないか、と思っているのですが…」


「なっ!?!?」


 いきなり、彼女の本心を言い当てられ、明らかに動揺する希美。他の生徒会メンバーも驚いた顔をしている。


「………ねぇ、リュートくん?なんでそう思ったの?」


 愛美は思わず聞いてしまう。


「そうですね……。とりあえず、津川副会長の目を見ていて、あなたがローレンさんと同じような理由でそう言った、とは思えないのです」


「目ですか?」


「はい。津川さんの目は、決して人を見下すような目には見えなかったので」


「なるほどね……。なんとなく私も分かるかも」


 愛美は西園寺グループと言う世界規模で活躍する企業の社長の娘である。そのため、小さな頃からパーティーなどでいろんな大人を見てきたためそういう感覚には優れている。


「まぁ、それとは別に根拠はあるのですが……」


「そうなの?」


「はい。決闘の少し前、津川副会長が講堂で学園長と話していらっしゃいましたよね?」


「え、えぇ……」


「その時に周りの生徒たちが副会長のことを……






『また希美ちゃんやってるね〜。』


『うんうん。副会長だからしかたなくです!、とか言ってるけど、結局心配だからあんな風に言ってるんだよね〜。自分は嫌われても生徒を守る!みたいな?ホント、素直じゃないよね〜』






 ……などと話しているのが聞こえたので……」


 リュートがそう言うと、希美は……


「〜〜〜〜!?!?」


 顔を真っ赤にして両手で顔を抑えて、そっぽを向いてしまう。


「?……あの会長?なぜ、津川副会長は恥ずかしそうにしているのでしょうか?」

 
 リュートはこっそりと愛望に尋ねる。相変わらずの察しの悪さである。


「あはは。さぁ、なんででしょうね〜…………こういう子なのね。ある意味クロちゃんといい勝負だわ」


 なぜか愛美がため息をついているが、とりあえずリュートは希美に謝罪することにした。


「……あの、津川副会長。なぜそこまで、恥ずかしいと思っているのかよくわかりませんが……。とりあえず、すみませんでした」


 リュートは頭を下げる。………が、


「……ですが、恥ずかしがる必要はないと思いますよ?」


「へ?」


 希美はまたポカーンとしてしまう。


「津川副会長のその志は素晴らしいと思います。自分のことよりも、生徒たちの安全を第一に考えて行動する……。とても、立派なことだと思います。そんな風に行動できる人間は少ないですからね」


 と、さすがのリュートクオリティである。なんとも彼らしい励まし方(?)だが、そう言われた希美は……、


「〜〜〜〜!!」


 もちろん、さらに顔を真っ赤にしてしまう。他の生徒会の役員は苦笑いである。もうお分かりだと思うが、彼女はかなりの恥ずかしがり屋である。そのため、愛望にもよくからかわれているのだ。


 ところが、リュートがそんなことを察することができるわけが無く、純粋・・に彼女のことを褒めている。希美は、愛美がそういうことを言うときはからかってきているときだと分かっているのである程度は無視できるのだが、彼の態度から彼が自分をからかっている訳ではない、ということが分かってしまうので希美は何も言えないのだ。しかしそこに、思わぬ相手から助け舟が出される。


「………ご主人様?その話はそのくらいにして、自己紹介の続きをしませんか?」


 クロがリュートを止める。希美はそれに対して、少し驚いていたがすぐに助かったのだと思い、ホッとする。希美はクロが助けてくれたのかと思っていたが……、


「(これ以上ご主人様が褒めてしまうと、希美さんがコロッといってしまいます!!)」


 彼女としては、これ以上彼の周りに女性が増えるのはあまり快く思えないのだ。


「(………とは言え、ご主人様ですからね…。わたしがこうしても、すぐに女の人が集まってきてしまうでしょうけど……)」


 自分の主を誇らしく思う気持ち半分と、他の女性への嫉妬の気持ち半分といったところである。


「………はぁ」


「?……えっと、それでは続けて頂いてもよろしいですか?」


 クロの態度に疑問を懐きつつも、先を促すリュート。


「では、私ですね」


 そう言って、凜花が立ち上がる。


「初めまして、リュートさん。私は生徒会役員の神宮寺凜花と申します。よろしくお願いします」


 そう言って、綺麗に頭を下げる。


「凛ちゃんは武術の名家、神宮寺家の長女なのよ?」

 
「神宮寺家ですか?」


「知らないの?リュートくん」


「すみません。私はそう言うことには疎いので……」


「そうなんですか…。なんだか、意外ですね」


 凜花と愛美が少し驚いたように言う。確かに、これまでの彼を見ていたらそう思ってしまうのも無理はないかもしれない。


「先ほど会長が言ったとおり、神宮寺家は武術の名家で数多くの有名な魔法師を世に送り出しています。代々、魔法が圧倒的に強い、と言うわけではないのですが神明流と言う流派を受け継いでそれを戦闘に用いているのです」


 神明流とは、神宮寺家の者のみが習得することを許されている流派である。剣術、槍術、薙刀術など多くの武術を取り入れた流派で、最強の武術としての呼び声も高い。


「なるほど……。元の身体能力もさることながら、そこに武術を取り入れて魔法師としての才能の差を埋めている……。いえ、圧倒できるまでの力を付けている、という方が正しいようですね」


 リュートは感心したようにそう言った。


「いえ……。あなた程ではありませんよ、リュートさん?」


 微笑みながら凜花は言う。そして、さらに言葉を続けた。


「ところで、リュートさんに少しお願いがあるのですが……」


「はい。なんでしょうか?」


「私と………決闘してくださいませんか?」


 凜花はきれいに笑いながら、そう言った。





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