魔剣による(※7度目の)英雄伝説

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第1章『最強の魔剣』編 17話「決闘開始」


 生徒会のメンバー+クロは、生徒会室を出てアリーナに向かっていた。


「ねぇ、凛ちゃん」


「なんでしょうか、会長?」


「凛ちゃんは今回の戦いどう思う?」


 愛美は先ほど生徒会の他のメンバーにしたのと同じ質問をする。


「そうですね……」


 少し考えるようにしてから、


「私は賛成です。もっといえば、私はリュートさんが勝つと思います」


「そうなの?」


「はい」


 さらに、


「彼は魔法の面はわかりませんが、武術の方面では私よりも強いでしょうし」


「えっ!?」


 愛美が信じられないという顔をする。この学園の生徒ならば、この反応も当然であろう。何故なら彼女は学年ランキング二位の実績を持っており、魔法は風魔法しか使えないが持ち前の武術に応用し、近接戦闘では相当の実力を持っている。単純な身体能力や魔法なしの模擬戦ではリーシャすら凌ぐ。その彼女が戦いもせずに自らの敗北を宣言したのだ。他の生徒会のメンバーも驚きを隠せずにいる(リーシャとレイは普通にしているが…)。


「どうしてそう思うの?」


「……ある程度武術を嗜んでいる者が相手を見れば、だいたいの実力は分かります。自分より強い、自分より弱い、自分より圧倒的に強い、自分より圧倒的に弱い、というふうに。……ですが、私が彼を見たときに感じたことは……」


 そこで彼女は一旦区切り、

「感じたことは?」


「………何も感じられませんでした」


「へ?」


「こんなことは初めてでした。父や兄と対峙したときですら、何かしらを感じたのに……。彼からは何も感じられませんでした。私では彼の実力を計ることができない、ということですね」


「…………」


 それからは、彼らの間に話は一切なかった。






「『………さぁ!やってまいりました!本日決闘が承諾され、即日開催という異例の自体になりましたが、盛り上げていきましょう!!今回もナレーションは私、ファナがつとめさせていただきま〜す!!』」


「「「うぉーーー!!!」」」


「「「「ファナちゃーん!!!」」」」


 学園の生徒が盛り上がっている中、リュートは一人、
 

「(これは、祭りか何かでしょうか?)」


 困惑していた。これから彼らがするのは戦い、いわゆる殺し合いなのだが……。


「(まぁ、決して彼らもお遊びとして捉えているわけではないようですし)」


 リュートが言うように生徒たちは決して決闘をお遊びとして見ているわけではない。雰囲気は祭りのようであるが、彼らの表情には真剣さが見て取れる。


「……それでは、行きましょうか」


 そう言うと、彼は静かな闘志とともにアリーナの扉をくぐった。






「『……おおっと!!ついに出てきました!転校早々決闘を申し込まれ、男らしく承諾したリュート選手です!……いや〜、それにしてもイケメンですね〜!現在も女子生徒からの黄色い声援が飛んでいます!!男子生徒からは純粋な声援と妬みの言葉と………何故か黄色い声援が飛んでいますが、気にしないでいきましょう!!』」


 やはり、この学園の一部の男子生徒はヤバイ・・・ようだ。すると、


「『おっと、これは逆サイドからラルフ選手が入ってきました。………それでは、早速試合を始めましょう!!』」

 ファナはラルフのついては触れたくないようだ。それは生徒たちも同じようで、特に何か言う生徒はいない。この状況からも分かるように、彼は生徒からもよく思われていない。それでも彼にはそれなりの実力があり、貴族でもあるので誰も手を出せないのだ。しかも、彼は自分よりも強い相手とは一切やらないと言うこともあり、かなり嫌われている。


「……ふん。まぁ、いい。それより、貴様。僕に彼女を渡す用意はできたかい?」


「いえ。そんなことをする必要はありませんので」


「…………」


 生徒たちは普段自分たちを見下している人間をこのように扱ってしまう彼をなんとも言えない気持ちで見ていた。


「『さぁ!それでは始めましょう!!お二人とも、準備はいいですか?』」


 しかしここで意外な人物から待ったがかかる。


「すみません。少しよろしいでしょうか?」


 リュートである。
 

「『はい?リュート選手。どうしましたか?』」


「なんだ?まさか、怖気づいたのか?」


 ラルフがニヤニヤしながら言う。


「ファナさん。一つお願いがあるのですが、よろしいですか?」


 ラルフのことをガン無視してファナと話す。


「クスクス」


「プッ!……ククッ」


 他の生徒たちはそれに釣られて笑いをこぼす。もちろん、彼の顔は真っ赤である。


「『わ、私ですか!な、何でしょうか。』か、彼の方から私に話しかけてくれるなんて……。……も、もしかして!私に一目惚れをしてしまったとか!?ど、どうしましょう!?そういうのはもっとお互いを知ってからじゃないと…。あぁ〜、でも彼みたいな優良物件なんて滅多にいないですよね……。わ、私はどうすればいいんでしょう!?!?」


 なんとも想像力豊かな女性である。リュートは突然顔を背けて独り言をし始めてしまった彼女を見て、


「あの……。大丈夫ですか?」


 心配そうにそう尋ねる。


「ふぇ!?あ、大丈夫です大丈夫です!ま、またやっちゃった〜。………コホン、『それで、お願いというのは?』」


 ファナは何とか気持ちを切り替えて、リュートに尋ねる。すると、


「はい。この戦いの勝者は敗者になんでも一つだけ命令することができる、ということを認めてほしいのです」


「『えっ!!』」


 リュートがとんでもないことを言う。


「それと、私は魔法しか使いません。よろしいですか?」


「『えぇ!?!?』」


 会場の全員が驚く。生徒たちはみな、彼が魔法は使えなくても身体能力で勝つと思っていた。ところが彼は魔法のみで勝つと言う。


「『ええっと、それはちょっと……』」


「私なら大丈夫ですので」


 ファナは彼の目を見て諦めたように、


「……はぁ、分かりました。『では皆さん!リュート選手が提示してきた条件は、勝者は敗者に何でも一つだけ命令をする事ができる。さらに彼は魔法のみで戦うらしいです!!』」


 一部の生徒は盛り上がっているが、大半の生徒はガッカリしている。その反応も当然であろう。あのラルフがやられるのを見れるかもしれない、と期待していたのでだから。彼らの中ではリュートの敗北は決定してしまったようだ。


「『それにしても、リュートさん。なぜこんな条件をつけたのでしょうか?』」

 
 ファナがそう尋ねるとリュートは、


「個人的な理由もあるのですが、それいがいにもあります。それは………皆さんに、ご自分の可能性を感じてほしいからです」


「『可能性、ですか?』」


 リュートが口を開ける。
 

「はい……………ここにおられる無属性の魔法しか使えない・・・・・・・・・・・・生徒の皆さんには私の戦いを見て魔法の、ご自分の可能性を感じてほしいと考えています」


 そう言って、彼はラルフと向き合った。


「それでは、始めましょうか」


 リュートは静かな闘志とともに彼にそう言った。


「………絶対に後悔させてやる。……あの女の前で土下座させて泣くまで魔法でお前を痛めつけてやるよ」


 ラルフは怒りすぎて逆に冷静になったようで、無表情で物騒なことを言っている。それに対してリュートは、


「そうですか」


 涼しい顔をしている。表情は似たようなものだが、その心情はなんとも対称的な二人である。そして、


「『それでは………。決闘開始!!』」


 ファナによって、決闘の幕が開かれた。
 
 

 
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