魔剣による(※7度目の)英雄伝説

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第1章『最強の魔剣』編 16話「和解」


「っ!!はぁ、はぁ、はぁ……」
 

 希美は思わず座り込んでしまう。クロの圧倒的な殺意から開放されたのだ。無理はないだろう。
 

「い、イザナミさん?どうしてここに?」
 
 
 リーシャが不思議そうに尋ねる。
 

「ん?……おぉ!リーシャにレイか!昨日ぶりじゃの!」
 

「は、はい。それでどうして?」
 
 
 レイもリーシャの隣で不思議にそうにしている。
 

「……実を言うとな?主様に頼まれておったのじゃよ」






〜昨晩のリュートの寝室〜


『……イザナミ。少しいいですか?』
 

『なんじゃ、主様?』
 
 
 心の中で話し合う二人。
 

『はい。実はこれからの事なのですが……。おそらくこれからは、私がクロのそばにいないことも多くなってしまうと思います。だから、もし私がクロの側にいないときに彼女が暴走しそうになったら、私の代わりに彼女を止めてくださいませんか?』


『ワシがか?なぜじゃ?』


『私なりに考えてみたのですが、あなたが一番適任だと思ったからです。もしそのような場合になったとき、まずヘスティアはむしろ彼女と一緒に被害を大きくしてしまうと思うのです』


『……まぁ、そうじゃの』
 

『サラスもヘスティアよりはまだ耐えてくれるような気はしますが、最終的にはおそらくクロに乗っかってやらかしてしまうような気がします』


『ふむ』


『アネモイにさせるのは、流石に可哀想な気がします』


『確かにの』


『テラスはそもそも止める気がなさそうな気がします』


『……こうして考えてみるとまともなのが居ないんじゃな……。じゃが、それならインドラでもいいのではないか?』
 

『はい。最後にあなたかインドラかで迷ったのですが……』
 

『?』


『クロと一番仲がいいのはイザナミだと思いまして』
 

『なっ!?』
 

『それに少し寂しそうな雰囲気を出していたので』
 

『なっ!?!?』


『それであなたにさせていただきました』


『…………』

 
 イザナミは顔を赤くして、少し黙ってしまう。
 

『やって頂けますか?』
 

『……ま、まぁ主様からのお願いじゃしの』

 
 少し嬉しそうにそう言うイザナミ。
 

『ふふっ。素直じゃないですね』
 

『べ、別にいいじゃろ!やるんじゃから!!』
 

『分かっています。では、よろしくお願いしますね、イザナミ』
 

『任されたのじゃ!主様!!』






「………ということがあっての」
 

「「…………」」

 
 彼からしたら、クロのことはお見通しということだ。そして、クロはというと…………、


「うぅ……。またご主人様に余計な気遣いをさせてしまいました…」
 
 
 部屋の隅で、このように落ち込んでいる。トレードマークのネコ耳も元気がなさそうにへにゃあとしている。
 

「く、クロ!ほら、元気出してください!」
 

「そ、そうよ!クロさん!元気出して!」
 
 
 リーシャとレイが励ますが…
 

「………駄目です。やはり、私はいつもご主人様に迷惑をかけてしまいます」
 
 
 残念ながら効果が無いようだ。すると、イザナミが仕方が無さそうに、
 

「確かに主様はいつもお主に注意しておる。……じゃが、主様は嬉しいのだと思うぞ?」
 

「……嬉しい?」
 
 
 泣きそうになりながら、クロが聞き返す。


「自分のために怒ってくれているのじゃから、嬉しく思うに決まっておる」
 

「ですが………」
 

「それに、クロには笑顔が似合うといつも言っておるじゃろう?じゃから、いつまでもそんな顔をするでない」
 

「!……そうですね。では、決闘が終わったあとにちゃんと聞いてみることにします」
 

「それでよい」
 
 
 そう言って、クロは笑顔になる。イザナミの説得でクロが回復すると……、
 

「えっと、リーシャさん。そちらの方はどなたなのかしら……?」
 
 
 愛望がなんとも不思議そうに質問をした。






 それから、リーシャとレイによる説明が始まった。イザナミはリュートから、もし他の誰かに存在がバレてしまったら話していいと言われていたので明確には言わなかったが、大体のことは話していた。生徒会のメンバーは全員驚きを隠せずにいた。
 

「……魔剣を二本以上も………」


「すごいわね!少なくとも私は聞いたことがないわ。麻衣ちゃんは?」
 
 
「私も聞いたことはありませんが…。そもそも二本以上を持とうとした人が少ないのでしょうね。魔剣とは一本で、人智を超える力を得ることができると聞きますから…」


「………」

 
 それぞれ思うことがあるようだ。


「……ところで少し良いかの?」


「はい、どうぞ。……えっと、イザナミさん?」

 
 愛美がそう言う。すると、


「まず、先ほどの件について謝罪をさせてほしい。すまなかった」

 
 そう言って、頭を下げる。もちろんクロもだ。クロの顔はいつもより少し影がかかっているように見える。彼女も、反省し……


「(ご主人様のためご主人様のためご主人様のためご主人様のためご主人様のため!)」

 
 ………たわけではなく、必死に耐えているようだ。そんなこととはつゆも知らずに生徒会のメンバーは驚いていた。


「………じゃが」

 
 そこでイザナミが顔を上げて、口を開いた。


「じゃが、ワシも主様の魔剣じゃ。主様のことをバカにされるようなことを言われて黙っていられるほど、大人じゃないのでな……。クロの気持ちもよく分かる。じゃから、少し言わせてもらう」
 
 
 そう言って、一息つく。


「魔剣にとって主という存在は絶対的なものなのじゃ。たとえ自分が傷ついたとしても、たとえその結果自分が死んでしまっても絶対に守りたいと思える存在なのじゃ。特にワシらは事情が他の魔剣とは違っての……。その想いはいっそう強いんじゃよ。じゃから、希美?とかいったかの?……ワシらの前で二度と主様のことを悪く言わないと約束してほしい」

 
 イザナミは真っすぐと希美を見つめてそう言った。人にとって大切なものは、三者三様。それこそ、無限にあるだろう。そして、それは魔剣にも言えることである。だからこそ、人は知らないうちに誰かを傷つけてしまう。今回の場合もそれと同じだ。


「……そうですね。私も、熱くなりすぎていました。………彼のことを知らないのに勝手なことばかり言ってしまい、申し訳ありませんでした。お二人とも」

 
 そう言って、頭を下げる。


「……こちらこそ、申し訳ありませんでした」
 
 
 少し重い空気になってしまう。しかしそこで愛美が、
 

「ごめんね〜、クロちゃん!希美ったら頭が固くて。でもホントはね、可愛い後輩が心配で心配でしょうがないだけなのよ〜」
 

「??」

 
 少し、困惑したようにクロが首を傾げる。そして希美は、


「なっ!!か、会長!ち、違いますよ!!」


「照れちゃって〜。かわいいんだからっ。この前だって、書類の整理で一年生がミスしちゃったところをしょうがないやつだとか言いながら、終わるまで一緒にやってあげてたくせに〜」


「なんで会長が知ってるんですかー!!!」

 
 顔を真っ赤にして怒る希美。そう、彼女は後輩(リュート)のことが心配なのである。そのため、自分が嫌われてもいいからこの決闘をなんとかやめさせたいと考えていたのだ。その手段として、彼の魔剣であるクロを彼が決闘をやめさせるように仕向けようとしたのだが……。残念ながら結果はこんなふうになってしまったのである。


「うぅ………」

 
 希美は恥ずかしそうに俯いてしまう。


「………希美様」

 
 突然クロが話しかける。


「な、何かしら?」


「申し訳ありませんでした」

 
 クロが先ほどよりも深く頭を下げる。


「!ど、どうしたのですか?先ほど謝罪は受けましたが……」
 
 
 困惑したように希美が聞く。


「いえ……。これは心の底からの謝罪と、あなたのことを見誤っていたことについての謝罪です。誠に申し訳ありませんでした」

 
 なんとも真面目な少女である。希美もまた彼女に対する印象が変わった。この少女は確かに少し危なっかしいところはあるが、それはただ真っ直ぐなだけなのだと思った。自分と同じように不器用なのだろう。


「……分かりました。……では、私もすみませんでした」
 
 
 そう言って、希美も頭を下げる。


「え?」


「私もあなたのことを見誤っていたみたいだから。ごめんなさい」
 
 
 そう言って、二人は顔を上げて笑い合う。その様子を愛美は微笑ましいものを見ているように柔らかい笑みを浮かべている。なんとか仲直り出来たので、リーシャはほっとする。


「……それじゃあ、リーシャさん。彼女をここに呼んだ理由を説明してもいいかしら?」


「あ…。そういえば、聞いてなかったわね」

 
 論争を先に始めてしまったため、誰も理由について言及するのを忘れていたようだ。


「はい。彼女をここに呼んだのは、リュートの戦いの解説をしてもらうためです」


「解説?」


「はい。彼の魔法はクロさんが言ったとおり、私たちの知らないものかもしれません。そうだった場合に彼女に解説してもらうのがわかりやすいと思ったのです」


「なるほどね。……クロちゃん、お願いできるかしら?」


「はい。お任せください」

 
 話が一段落したところで、扉がノックされる。


「どうぞ?」
 

「失礼します。会長、準備が整いましたので…………あら?」

 
 入ってきたのは170ぐらいありそうな黒髪ストレートの女子生徒だった。目は紫という珍しい色をしている。胸は…………。身長とは明らかに比例していないとだけ言っておこう。


「えっとね、凛ちゃん。この子たち、どちらもリュートくんの魔剣なの」
 
 
 愛望はイザナミから生徒会のメンバーには話していいと聞いているので、二人の説明をした。
 

「初めまして。ご主人様に仕えております、クローセルと申します」


「ワシはイザナミじゃ。よろしく頼む」


「私は神宮寺凛花と申します。よろしくお願いします。クローセルさん、イザナミさん。……彼は一体何者なのでしょうね」

 
 凛花は小声でそう言って、すぐに顔を上げる。


「皆さん、会場の準備が整いましたのでアリーナに向かいましょう」


「ありがとう。じゃあ、みんな。行きましょうか」

 
 そう言って、全員が立ち上がり扉へ向かった。
 
 
 

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