魔剣による(※7度目の)英雄伝説

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第1章『最強の魔剣』編 15話「黙りなさい」


 リュートとラルフの決闘が決まり、生徒たちがアリーナに移動する中、リーシャとレイは、
 

「……まぁ、一応上手く行ったのかしら?」
 

「恐らくは……」
 

「試合の勝敗は問題ないとして……あとはどのくらい圧倒できるのかってことくらいかしら?」
 

「恐らく、それも気にしなくてよろしいかと思います」
 

「ま、そうね」
 

 と好き勝手に話していた。すると、学園長と一人の真面目そうなメガネをかけて黒髪をおさげにした女子生徒が言い合っているところを見かけた。
 

「学園長!なぜあのような決闘を認めたのですか!!しかも、彼らを生徒会に入れるなど副会長である私ですら聞いていません!!」
 

「……そうですね。確かにあなたたちには話していません」
 

「でしたら……」
 

「副会長」
 

「?あら、リーシャさん?どうしたの?」
 

「すみません。その件について、生徒会の役員で話したいのですが…」
 

「!………なるほど、あなたたちも一枚噛んでいるわけですね……。分かりました。ちゃんと説明してもらいますよ」
 

「もちろんです」
 

 そう言って、彼女は行ってしまった。
 

「……ふぅ、助かったわ。ありがとう、リーシャ」
 

「いえ……。それよりも何とか説得できるといいのですが……」
 

「…………」


 彼女は生徒会の副会長をしている三年の津川希美という女性である。見た目通り、成績優秀で学園長よりも真面目、その分頭もかたくリーシャたちが一番説得が大変だろうと危惧している人物である。


「まぁ……。なんとかするしかないですね」
 

 そう言って、リーシャは決意を固める。三人はそのまま、生徒会室に向かった。
 

 





「………えっと、皆集まったかな?」
 

「はい。全員そろいました」
 

「あ、少し待ってください。私の方で呼んだ人がいるので」
 

「そっか。分かった。……それにしても、なんかいろいろすごい子だったわね〜」
 

 そう言って、頬に手を当てる女性。この人はこの【ルーズベルト魔法学園】の生徒会長を務める西園寺愛望さいおんじまなみである。ふわふわしたキレイな黒髪に赤と黒のオッドアイで赤目の方は魔眼だと言う。実力も生徒会長と言うに相応しいものがあり、体術はあまり得意ではないが、彼女の真価は集団戦闘で発揮される。超精密で恐ろしい威力の遠距離魔法を得意としており、その精密さと威力はリーシャも舌を巻くほどだ。さらに、魔剣とも契約しているらしい。
 

「確かにそうですね……。まぁ、ただの馬鹿と言う可能性も高いと思いますが…」
 

 このように毒を吐いているのは金髪の男だ。彼は副会長を務めるフォン・ブルックだ。彼も貴族なので、どちらかと言うとリュートにはあまりいい感情を抱いてはいない。
 

「ブルックくん!そういう事、言っちゃ駄目だよ!!」
 

 と、愛望がフォンに詰め寄ってそう言う。
 

「っ!?………も、申し訳ありません、会長」
 

 フォンがこんな風に焦ってしまうのも無理はないだろう。彼女は学園全体の中でも、トップに入るほどの美人である。さらに彼女は身長こそ平均的ではあるが、胸は超巨乳なのである。今も身長差の関係で彼女が下から見上げる形になっており、彼を誘惑しているように見えてしまう。彼からしたらたまってものではない。しかも、たちの悪いことに彼女は素でやっているので誰も強くは言えないのだ。他の生徒会メンバーは苦笑いを浮かべている。
 

「わかったならいいわ」
 

 そう言って、優しく微笑む。
 

「………ふぅ」
 

 窮地?を脱出したフォンは落ち着くために一息ついていた。
 

「……相変わらずですね、会長」
 

「何が??」
 

「……何でもないです」
 

 少し呆れながらそう言うこの女性は生徒会書記、千賀麻衣である。紺色のようなロングのストレートの髪。基本的に無表情で冷静沈着。勉学の成績はレイと同じく学年トップであり、魔法の実技も得意である。ここには現在、生徒会メンバー七人、学園長を含めると計八人が集まっていた。紹介していないメンバーもいるが、それはまた後ほど……。
 

 すると、コンコンと扉をノックする音が聞こえる。
 

「来たみたいね……。入って」
 

「失礼します」
 

 そう言って入ってきたのは、クロであった。
 

「さてと……。これで全員揃ったわね。それじゃあ、話し合いを始めましょうか。試合まではまだ時間がありますし」
 

「はい。では、まず今回の決闘の目的についてです………」






「………なるほどね。確かに最近、そのことについての要望が生徒会にも来ているし……。麻衣ちゃん、どう思う?」
 

「自分の力に過信している貴族にとってはいい薬となると思います。……勝てば、の話ですが…」
 

 麻衣は出来ればそうなってほしい程度に考えているようだ。
 

「僕もあまり期待はしないほうがいいと思います。所詮、無属性ですし」
 

「私もです。やはり、今からでもやめさせるべきですよ」


 フォンと希美はどうやら、全く信用していないらしい。常識的に考えれば、リュートがラルフに勝つのは不可能である。だからこそ、リュートの勝利には大きな意味があるのだが………。すると、ここでクロが口を開いた。
 

「……どうやら、この場の皆さんにもいい薬になりそうですね」
 

「……なんですって?」
 

 希美が目を細め、クロを見る。
 

「ここにいる生徒会の皆さんにもいい薬になると申し上げました」 
 

「!!………随分な言い方ですね」
 

「お気に触ったのでしたら申し訳ありません。ですが、事実ですので」
 

「…………」
 

 なんとも嫌な雰囲気である。リーシャとレイは今になって気がついたが、クロの機嫌が悪い。先ほどから彼らのリュートに対する評価はけっして良いとは言えない。そんなものを彼を崇高?するクロが聞けば、こうなってしまうのも予想は出来たはずなのだ。リーシャは、
 

「(失敗したかも…)」
 

 と、頭を抱えたくなっていた。
 

「……それに皆さんは魔法を侮り過ぎていると思います」
 

「?それってどういう意味なのかな、クロちゃん?」
 

 愛美が思わず聞いてしまう。
 

「無属性魔法しか使えないから有属性使いには勝てない……。その前提が間違っているのです。魔法とは人の作り出した物であり、一つ一つの魔法にそれぞれの使い道があります。それを皆さんは理解していません」
 

「………」
 

「この戦いの後、皆さんのその固定概念は確実に全く別のものに変わるでしょう。そして、ご主人様の評価も………」
 

 生徒会の役員全員が口を閉ざす。確かに、彼らは無属性は有属性に勝てないという前提を持っていた。しかし、彼女の言うようにその前提が間違っているのかもしれない、自分たちは無属性を侮っていたのかもしれないと考えているようだ。
 

 ……ところが、クロの言い方に不満を抱いた希美が言ってはいけないことを言ってしまう。
 

「………無属性しか使えない・・・・・・・・ご主人様に、随分と懐いているのですね」


「黙りなさい」
 

 クロが怒気の籠もった一言を放つ。すると、


「「「「「「「「!?!?!?!?」」」」」」」」 
 
 
 部屋の中に思わず息苦しくなってしまうほどの殺意が充満する。
 

「……あなたが私のことをどう言おうが私には関係ありません。私にとってご主人様が全てです。………だからこそ、ご主人様への無礼な態度や侮辱は絶対に許しません。何があっても絶対に、です」
 

 怒りの感情を少しも隠さず、手は固く握りしめられていた。それは、希美への怒りとは別のもの・・・・が混ざっているような気がしてしまう。
 

「…………」
 

 そのまま、クロは希美を睨む。決してクロは黙ってなどいなかったのだが、彼女からすればリュートへの暴言一つ見逃すだけで黙っていると言うことになるのだろう。そして希美はというと……………既に何も言えなくなってしまっていた。いや、指一本すら動かせなくなっていたと言う方が正しいだろう。それほどクロから発せられる殺気は恐ろしいのだ。
 

「その罪、本来ならば万死に値しますが……あなたも一応はこの学園の生徒の一人……。ですから、少し地獄を見る程度にしてあげましょう」
 
 
 彼女から感じる殺気と魔力がさらに膨大なものになっていく。そして、
 

「それでは、償って頂きましょうか」
 
 
 そう言ってクロは、彼女に魔法を掛けようとして…………、
 

「やめんか!!このバカ者!!!」
 
 
 ………後頭部を叩かれた。その声はリーシャとレイにとっては聞き覚えのあるものだった。その正体は、
 

「まったく、お主は何をしておるのじゃ!!」


「「イ、イザナミさん!?!?」」
 
 
 リーシャとレイが叫ぶ。なぜならそれは、昨日別れたはずのイザナミだったのだから。
 
 
 

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