魔剣による(※7度目の)英雄伝説

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第1章『最強の魔剣』編 12話「ラナとリュート」


「ど、どうぞ…」
 
「ありがとうございます、ラナ」
 
「頂きます。………腕を上げましたね、ラナ。やはり私が見込んだことのことはあります」
 
「あ、ありがとうございます、クロ様!……あ、あのリュート様。いかがですか?」
 
「とても美味しいですよ。もちろん以前も美味しかったですが、さらに美味しくなっていますね………それに落ち着く味でほっこりします」
 
「そ、そうですか!…………よかった〜、密かに練習しておいて…」
 
「「…………」」

 リーシャとレイは何とも言えない顔をしていた。このままでは埒が明かないので、リーシャが切り出す。
 
「あの、学園長?」
 
「……へ?な、何かしら」
 
「事の経緯を説明したいのでよろしいですか?」
 
「あ………えぇ。お願いするわ」
 
「では………」
 
 



 
「……なるほどね。……まぁ、いいわ」
 
「え?いいんですか?」
 
「サボったことは良くないわよ。それに勝手に出てったことも反省しなさい。………でも、ちゃんと帰ってきたからね。それに、あなた達二人ならこれ以上言わなくても私の言いたいことは分かっているでしょう?」
 
 真剣な、それでいて優しい雰囲気で話している。そんな学園長に抱いていた今までの印象がガラッと変わる二人であった。
 
「……大人になりましたね、ラナ。ちゃんと人の考えを理解し、それでいてしっかりと注意する。簡単なようでとても難しいことです」
 
 いきなりリュートから、賛辞を送られたラナは、
 
「あ、ありがとうございますぅ……」
 
 顔を赤くして、俯いてしまう。二人の印象はこれまたガラッと変わってしまうのだった。
 
「そ、それで学園長。リュートのことについてなんですが…」
 
「はい。留学生と言うことでいいですか?」
 
「へ?……あの、いいのですか?」 
 
「まぁ、こちらにも利益はありますし。………確かに公私混同気味ですがね。リュート様にはこれでようやく恩返しが出来ます」
 
「「恩返し?」」
 
 リーシャとレイは問い返す。
 
「はい。今から200年くらい前でした。ある時、私の住んでいた村が数千ものゴブリンとオークの大群に襲われたことがあったんです。そのときはまだ、この国は他の種族の受け入れを容認していなかったので私たちは国の防壁の中には入れていませんでした。逃げることもできず、もう駄目かと思ったときに……」
 
 ラナがリュートの方を向く。
 
「リュート様が助けてくださったんです。リュート様は一瞬で数千ものゴブリンたちを倒して私達を救ってくださいました。それだけでなく、村の再建を手伝ってくださり、さらには私達に魔法を教えてくださいました。……リュート様、私が今この立場に居るのはリュート様のおかげなんですよ?」
 
「私の?」
 
「はい。私もリュート様のように誰かを助けられるようになりたい、と思いました。リュート様の姿を見て、誰かに教える立場にも憧れました。だから、私はここにいるのです」
 
「…………」
 
 リュートは少し驚いたような表情をして、
 
「そのように純粋に思われていると少し恥ずかしいですね……。ですが、ありがとうございます。とても嬉しいです」
 
 少し恥ずかしそうに、優しい笑みを浮かべてそう言った。
 
「「「「…………」」」」
 
 四人はいつもとは違う、少し恥ずかしそうに笑う少年に見惚れていた。
 
 



 
「……これでよしっと。では、こちらを…」
 
 ラナがリュートに学生証を渡す。
 
「ありがとうございます」
 
「リュート様は2年のAクラスです。……あのリュート様?」
 
「?何でしょうか?」
 
「迷惑を承知の上で頼みたいのですが……生徒会に入っていただけませんか?」
 
「生徒会ですか?」
 
「どういう事でしょうか?」
 
「はい。実は、最近属性魔法を使えない生徒がイジメや差別を受けているそうなのです。それだけでなく、退学してしまう生徒もいまして…」
 
「なるほど…。それで私が……」
 
「えっと、どういうことですか?」
 
 二人の会話にリーシャが入って来た。
 
「確かにその問題があるのは知っていますが、何故リュートに頼むのですか?」
 
「?……二人は知らないのですか?」
 
 不思議そうな顔をして、ラナが衝撃の事実を告発する。
 
「リュート様は属性魔法は使えないんですよ?」
 
「「え!?!?」」
 
 リーシャとレイが驚いたように声を上げる。彼ならば、適正は5属性あるだろうと自然に思っていたようだ。そんな中で、
 
「…………」
 
 クロは一人下を向いている。その拳は強く握りしめられている。まるで、何かを我慢するように……。すると誰かの手によって、握りしめられている手が包まれる。クロはハッとして顔を上げると、そこにはリュートがいた。
 
「…………」
 
 リュートは何も言わず、ただクロのことを見ている。気をかけてもらって思わず申し訳なくなったが、それよりも嬉しさが勝って思わず、飛びつきたくなったがなんとか我慢する(残念ながら、耳はフニャフニャとしてしまっているが……)。その頃には、既に手は緩んでいた。
 
「はい、その通りですよ。私は無属性魔法しか使えません。まぁ、クロたちを現界させて身に纏えば使えますが……」
 
「そ、そうなんですか」
 
 二人は彼の異常さ見ていたが故に信じられない思いだったが、なんとか納得する。
 
「それで、私が無属性魔法しか使えない魔法剣士として生徒会に入ればそれが少しは無くなる……と言うことでしょうか?」
 
「はい、その通りです」
 
「…………」
 
 リュートは少し考えて、
 
「それは難しいと思います」
 
 と言った。
 
「!……どうしてですか?」
 
「まず、前提としていきなり留学してきた私がいきなり生徒会に入るということ自体が不自然です。第二にもし、そうなったとしても生徒たちが自分の意思で変わろうとしなければ何も起きません。アイツは自分とは違う…そう結論づけてしまうのではないでしょうか?」
 
「っ!」
 
 悔しそうにするラナ。しかしそこに、
 
「それなら、大丈夫よ」
 
 リーシャがそう言った。

「どういうことですか?」
 
「そのままの意味よ。まず、生徒会の方は私とレイであなたを押せば何とかなると思うわ。やる気の問題なんて自分次第だし。わたし的には誰かを乏したりする傾向が高い貴族たちの鼻っ柱を折ることが大事だと思う。それには、あなたが必要よ」
 
「ですが……」
 
「これも、私の夢のためなの」
 
「…………」
 
 『誰もが幸せに』……そんなのは無理だ、と切り捨てる人間には何も出来ない。だが、逆に本気で思っている人間ほど恐ろしいものはない。そうリュートは考えている。そして、自分の主は……
 
「…………」
 
 ……本気だ。………ならば、自分のやることは一つだ。
 
「……ふぅ………」
 
 一息つく。そして…
 
「……分かりました。それがあなたの願いならば、私はそれを全力でサポートしましょう」
 
 魔聖剣は願いの達成の約束をするわけではない。魔聖剣は共に目指していく存在だから……
 
 リュートはそう返事を返した。
 
 



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