魔剣による(※7度目の)英雄伝説

D_9

第1章『最強の魔剣』編 7話「濃いメンツの日常」


「こちらへどうぞ」
 
 クロの暴走がおさまった後、四人は客間のような所に来ていた。
 
「「失礼します」」
 
「のう、クロ。何か菓子はないかのぉ?」
 
「ありますよ。ですが、夕食を食べてからですよ」
 
「むぅ…というか、主様はどこにいるのじゃ?」
 
「ご主人様はお昼寝をなさっていますよ」
 
「昼寝か………」
 
 そう聞いたイザナミはまた何かを思いついたかのように、部屋を出ていこうとする。ところが…
 
「どこへ行くのですか?」
 
 イザナミの頭を掴むクロがいた。これにリーシャとレイは驚きを隠せずにいた。確かに少し前は後ろを向いて、カップの準備をしていたはずなのに、一瞬で扉の所にまで来ていた。
 
「い、いや。ちょっと、トイレに……」
 
「必要ないですよね。(ニコッ)」
 
 イザナミの額に汗が出てくる。
 
「い、いや。ちょっと、散歩をしようとって痛い痛い痛い!!!!」
 
 クロの指がイザナミの頭にめり込み、ミシミシと音が鳴っている(ような気がする)。
 
「ちょ!マジでやめてくれ!ホントに頭が砕けるんじゃ!!」
 
「じゃあ、答えてください。本当は一体何をしようとしていたんですか?」
 
「い、いや……ひ、久しぶりに主様と添い寝をしようかとって痛い痛い痛い痛い!!!!!(ギシギシ)」
 
「何を言っているんですか?イザナミさん。ご主人様と添い寝なんて、そんな羨まし……ご主人様に迷惑が掛かることを私の目の前でしようとするなんて。見過ごすとお思いですか?おそらくご主人様ですから寛大なお心で許していただけるとは思いますがそれでもご迷惑がかかることには違いありません。そもそもあなたは一昨日ご主人様に頼んで添い寝してもらったでしょう?何が久しぶりなんですかね?私なんて10日前にしてもらったのが最後なのに羨ましい!今もご主人様の愛らしくもかっこいい寝顔を見ようとする欲望をなんとか抑えているのにあなたはそんな私の前でご主人様の寝顔を見ようとするだけでなく添い寝までしようとするなんてあなたは外道ですか?鬼畜ですか?私をいじめて楽しいですか?!」
 
「いや、最後らへんただの八つ当たりって痛い痛い痛い痛い痛い!!!!誰か!!!ヘルプミーーじゃーー!!!!!」
 
「「…………」」
 
 リーシャとレイはその様子をただ見ている。今二人が共通して感じていることは、
 
「「(あそこに割って入ったら確実に死ぬ……!)」」
 
 ということであった。カオスな状況になり、収集がつかなくなっていたその時、リーシャとレイ(とイザナミ)にとっての救世主が現れた。
 
「……ってことがあったのだ」
 
「そうですか〜。それはまた、大変でしたね〜」
 
 二人の話し声が扉の向こうから聞こえる。それを聞いたイザナミ(瀕死)が死にそうな声で、
 
「…た、たすけてくれ〜。テラス〜、インドラ〜」
 
 と言った。
 
「ん?今なんか聞こえなかったか?」
 
「どうでしょうか〜?私にはあまり聞こえなかったです〜」
 
 それを聞いたイザナミが最後の力を振り絞り。
 
「た、たすけてたもー!!ヘルプミーじゃーー!!!」
 
 するとガチャ、という音とともに二人の女性が入ってきた。一人は足元まであるのではないかと思わせる黒髪に白と赤を基調とした巫女服のようなものを着ている。もう一人は、金髪の髪をポニーテールにしており、服装はショートパンツにTシャツ。フードの付いた上着を羽織っておりいかにも活発そうな雰囲気が漂ってくる。すると、金髪ポニーテールの女性が、
 
「はぁ……またやってるのか?お前たち?」
 
「ふふふ。喧嘩するほど仲がいいとはこの事ですかね〜」
 
 巫女服の女性がそう言う。
 
「いや!確かにインドラの方は否定できぬが、テラスの方はおかしいじゃろ!?相手を瀕死にさせる親友なんてほしくないわ!!」
 
「あらあら〜そうなの〜?そうは見えないけど〜」
 
「……目ぇ腐っとるじゃろ……」
 
 冷静なツッコミを入れるイザナミ。意外と余裕である。
 
「はぁ…しょうがない」
 
 と、インドラが言いながら、必殺の一言を放つ。
 
「クロ?ご主人様が来たぞ?」
 
「!?!!?!??!」
 
 一瞬でイザナミから離れるクロ。直立不動となり、その耳はピンと張っている、が……

「あ、あれ?ご主人様は……」
 
「嘘だ」
 
「なっ!…なぜそのような嘘を!」
 
「そうでもしないと、お前イザナミから離れないだろう?」
 
「うっ!!」
 
 クロはインドラに正論で返され黙ってしまう。
 
「……まぁ、なんとなく事情は察した………お前のそう言う所、私は好きだけど少しくらい自重したほうがいいぞ」
 
「……はい」
 
 耳がふにゃあ、としてしまう。落ち込んでいる証拠である。インドラはため息をつきながら少し頬を赤らめて、
 
「そ、それに…ご主人なら添い寝くらい、頼めばしてくれるだろう?………私もこの前してもらったし………」
 
「で、ですが…ご主人様にご迷惑をお掛けするのは……」
 
「ご主人なら、迷惑だなんて思わないだろう。いつも言ってくれてるじゃない。まぁ、私の言葉が信じられないなら、ご主人の言葉を信じればいいじゃないか?ご主人の言葉……信じられないか?」
 
「いえ!そんなことは天と地がひっくり返ったとしてもありえません!……そうですね……ご主人様を信じればいいんですよね…」
 
 そう言って大事なものを抱え込むようにして、クロは目を閉じる。
 
「申し訳ありませんでした。インドラ。取り乱して……」
 
「気にしないでいい。私たちの仲だろう?」
 
「ふふっ、そうでしたね」
 
「よかったです〜。これで一見落着みたいですね〜」
 
「「……………ふぅ」」

 リーシャとレイは内心ヒヤヒヤした思いで今の会話を聞いていた。ここにいる少女たちは全員自分よりも格上で喧嘩など始まったら自分たちは生き残れないだろうと直感していた。しかし、そこから感じ取れたのは…………彼女たちの絆の強さだ。一朝一夕で身につくような簡単な絆ではない。もっと、奥底に潜むようななにかを彼女たちには感じた。
 
「…………あのー、なんかいい感じに終わろうとしてるけど…………わしへの謝罪は?」
 
「では、私は紅茶をお入れしますね?」
 
「あぁ、よろしく」
 
「よろしくお願いします〜」
 
 イザナミの事など、無かったことのように扱われ涙目になっているイザナミ。
 
「…………グスン」
 
「「………」」
 
 流石に可愛そうだと思った二人は、イザナミを慰めてあげる。その時に、
 
「お主ら……良い奴らじゃのう………ぐすッ」
 
 と、また泣きかけたのは二人にとって予想外のことではあったが……
 
 



 
 とりあえず、クロが紅茶を準備し終えて全員がテーブルの周りに座った。
 
「それじゃあ、私たちは自己紹介してなかったな?」
 
「そうですね〜では私から行きます〜。アマテラスと申します〜。テラスとお呼びください〜」
 
 ゆったりとした口調でニコニコと挨拶をするテラス。それはまさに女神の微笑みであった。
 
「次は私だな。私はインドラという。よろしく」
 
 そう言って、リーシャとレイに手を差し出す。
 
「はい。よろしくお願いします」
 
「よろしくお願いいたします」
 
 二人はすぐにその手をとり、握手をする。そして、二人も挨拶を済ました。そのあとは………
 
「…そうか。リーシャは王族なのか。確かにそんな感じがするな」
 
「そうですね〜。なんと言うか〜、雰囲気がそんな感じですよね〜」
 
「お褒め頂きありがとうございます。テラスさんはなんと言うか、話していて落ち着きますね。インドラさんは話しやすいですし……」
 
「ははっ、ありがとう」
 
「ありがとうございます〜」
 
 と雑談にふけっていた。一方レイとクロは、
 
「……という風にするに簡単に汚れが落ちます」
 
「なるほど!そのような方法が……とても勉強になります。ありがとうございます、クロさん」
 
「いえ、こちらこそ。新しい情報を頂きましたので。特に料理などは、また挑戦してみたいですね」
 
 などとお互いの生活に関する知識を交換しあっていた。侍女同士いろいろ共感できることも多いのだろう。すぐに仲良くなっていた。そんな中、一人でボーっとしていたイザナミが…

「……そういえば、ヘスティアとサラスとアネモイはどうしたのじゃ?」
 
「あぁ。アネモイは本を読んでて、ヘスティアとサラスの二人なら、今日の食材を狩って来ているよ」 
 
「……あの二人でか?大丈夫か、それ?」
 
「………しまった。忘れてた……」
 
 そして、その悪い予感は現実のものとなってしまう。
 
 ドカーーーーーン!!!!!!
 
 中央の庭からものすごい音が聞こえる。リーシャとレイは驚いていたが、テラスとそれ以外の三人は………
 
「「「はぁ…」」」
 
 と深いため息を付いていた(テラスはいつも通りニコニコだが…)。リーシャとレイは不思議そうにしていたがその理由はすぐに分かった。何故なら……
 
「「私の方が多く狩ったでしょう!?!?」」
 
 といういかにもめんどくさそうな声が聞こえたからである。
 
 
 



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