魔剣による(※7度目の)英雄伝説

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第1章『最強の魔剣』編 5話「まさか×2の遭遇と本当の願い」

「『風の勇者』って……あの『六道の勇者』の?」
 
「……おそらくは。それ以外にその名を聞くことはありませんし……」
 
 『六道の勇者』とは、この世界【クロスフィア】に実在したと言われる六人の勇者のことである。最初の勇者についてはほとんど記録が残っていないが、それ以外の五人は各属性魔法のスペシャリストで人類史上、唯一の属性レベル10の使い手だったとされる。伝承では、この六人は全く異なった人生みちを進みながらも最後には魔王を倒すため、『六道の勇者』と呼ばれている。
 
「まさか、その名前をこんな所で聞くなんてね」
 
「えぇ……とすると私達が探していた魔剣って、もしかして……」
 
「ええ……『原初の魔剣』なのかもしれないわね」
 
 『六道の騎士』は魔法にも秀でていたが、その隣には常にある一本の魔剣の存在があった。その名は『原初の魔剣』。この剣についての情報は最初の勇者と同じく一切存在しない。そもそも、『原初の魔剣』という呼び方さえ後から付けられたものである。にも関わらず、どの伝説にも必ず勇者の隣にあった魔剣。それが『原初の魔剣』である。そして、ここには『風の勇者』という文字。つまりはそういうことだろう。そして、二人は
 
「「………」」
 
 さすがの2人も少しばかり気圧される。当然だ。自分の探していた魔剣がまさか、ここまでの物だとは思っていなかったのだから。それでも、リーシャは
 
「……レイ」
 
「はい」
 
「私は行くわ。…だから、あなたは…」
 
「私も行きますよ」
 
 このとき、リーシャは少しばかり驚いてしまった。さすがに伝説級の魔剣ともなれば、レイでも戸惑うかと思っていた。でも、現実は一切の迷いなく言い切った。それをリーシャはとても、嬉しく思った。そして、
 
「……それじゃあ、行きましょうか?」
 
「はい」
 
「あ、でもどうすれば入れるのかしら?」
 
「そうですね…古典的な方法だと、リーシャ様とくっついて行くとかですかね…」
 
「なんか、ホントに古典的ね」
 
「はい。まぁ、さすがにそんな方法では無理だとは思いますが………」
 
 レイがリーシャの体に触る。
 
「どう、レイ?」 
 
「……………」
 
「レイ?」
 
「……いました」
 
「え?」
 
「リーシャ様の体に触ったら、見えちゃいました」
 
「……………」
 
「……………」
 
 わざわざこんな魔法までかけておいたのに、こんな簡単な方法で攻略出来てしまうなんて。なんというか、…………いろいろ台無しである。
 
「………じゃあ、行きましょうか」
 
「………はい」
 
 2人はなんとか気を持ち直して、洞窟に入っていくのだった。








 洞窟に入ると、すぐに下へと続く階段があった。しかし、どことなく不思議な感じがして2人は警戒心を高める。ここが『風の勇者』に関わる場所であることはおそらくほぼ確定だろう。だが、もしかしたらという可能性もある。2人はゆっくりと歩を進める。
 
 しかし、それも2人の杞憂に終わる。五分ほど歩いて、最下層に着いた。そこには空間が存在しており、何も無かった。………奥の扉を除いては………
 
 2人はお互いの顔を確認し、奥の扉へと歩いて行く。しかし、
 
「「っ!?!」」
 
 途中で足元に魔法陣が現れる。とっさに二人は後ろへ飛ぶ。しかし、それは普通の魔法陣ではなかった。
 
「っ!?な、なんなの!この大きさは!!」
 
「20メートル以上はありますね。こんな大きな魔法陣は初めて見ました」
 
 通常の魔法陣の大きさは1メートル程度だ。それからすると、この大きさが異常であることが分かるだろう。そして、魔法陣から一体の魔物が姿を現す。いや、コレを魔物などという範疇に収めてもいいのだろうか?2人の前に現れたのは………
 
「「……ドラゴン………」」
 
 思わず、2人はそうつぶやいていた。それは、体長20メートルはあろうかという黒い竜だった。竜にもさまざまな種類がいる。例えば、わりと一般的なワイバーンだ。しかし、目の前にいる竜は格が違う。そう思わせる雰囲気を持っていた。戦えば、間違いなく自分たちが死ぬ。そう確信させるほどの圧倒的な存在感だった。その竜がリーシャたちを見る。そして、
 
『……汝に問おう……なぜ、ここへ来た』
 
「!?!?」
 
 まさか、いきなり竜が喋りだすとは誰も思わないだろう。しかし、竜はマイペースに進めようとする。
 
『汝、なぜここに来た。答えよ』
 
 このままではいけない。そう判断したリーシャは竜の質問になんとか答える。
 
「わ、私はここに眠る魔剣を取りに来た!」
 
「…………」
 
 そう答えると、竜はこう問いかける。
 
『汝、なぜ魔剣を求める。答えよ』
 
「わ、私は魔剣の力で国を守りたい!私は王女だ!ならば、国民を守るのが私の役目だ!だから、その力が欲しい!!」
 
 そう答えると竜は、
 
『……違う』
 
「えっ?」
 
『汝の願いはそれではない』
 
「!?」
  
 確かに違う。だが、結局同じ答えになるのだから同じことではないだろうか。そう思うが、竜はそれを良しとしない。
 
「…………」
 
『答えぬのか?………ならば』
 
「っ!?!?!?」
 
 突然レイが膝をつく。
 
「レイっ!?」
 
「だ、大丈夫です」
 
 そうは言うものの、ほとんど体を動かせないような雰囲気で大丈夫そうには見えない。何が起こっているのか、リーシャには全く分からなかった。
 
『汝の本当の願い……我に聞かせてみよ!!』
 
 そう言うと竜は魔力を貯め始める。その魔力量は、
 
「「っ!?!?!?」」
 
 炎獅子との戦いでリーシャが使った【雷風の濁流ヴォルトエアロストリーム】が可愛く見えてしまうほどの魔力量がたまっていく。
 
「リーシャ様!!お逃げください!!今なら………あなただけなら逃げられます!!!」
 
「レイはどうするのよっ!?」
 
「……私のことはお気になさらないでください」
 
「っ!!」
 
 そう言ったレイは微笑みを浮かべていた。そこに含まれるのは、これまでリーシャに仕えることのできた喜びやこの場で終わることの悲しみ。感謝の気持ち、寂しい気持ち。さまざまな感情が含まれていた。
 
「……あなたは、これからの時代に必要な方です。……だから、私のことは構わずに行ってください」
 
「…………」
 
 そう言われたリーシャはレイの目の前にしゃがみ込む。そして……
 
「??…………痛っ!!?」
 
 突然、リーシャがデコピンをした。あの竜の魔法?で体が動かせないレイは痛いところを抑えることが出来ずに、地味に涙目になっていた。
 
「な、何をするんですか!!そんな悪ふざけをしてないで、早くお逃げください!!!」
 
「ふざけてるのはどっちの方なの?」
 
「えっ?」
 
「……あなたは私に親友を見捨てろと言うの?」
 
「!!………はい」
 
「いやよ」
 
「ダメです!!」
 
「いや」
 
「ダメなんです!!!」
 
 レイはとうとう、泣きながら逃げろという。
 
「……お願いですから、お逃げください。……誰かが生き残るには少なからずの犠牲が付きます。だから……私に構わず…」
 
「!………はぁ」
 
 ため息をつきながら、リーシャは…

「……痛っ!?!?」
 
 本日二度目のデコピンをくらわせる。
 
「そ、それはやめてください!結構痛いんですよ!!」 
 
「じゃあ、大人しくそこで待ってなさい」
 
「だから!逃げてくださいと…」
 
「……もしここで逃げたとしても、多分私、あなたへの罪悪感と自分への憎悪感で自殺すると思うわよ」
 
「っ!?!?」
 
「私はあなたを守りたいの。だって、まだあなたと別れたくないから…」
 
「リ、リーシャ様」
 
「じゃあ、行ってくるね」
 
「!!リーシャ様!!!!」
 
 リーシャはレイに背を向け、竜の方を向く。
 
『終わったか?』
 
「えぇ。それじゃあ………いくわよ」

『来い』
 
 リーシャは自分の中で最強の魔法を構築する。…………そして、
 
「【雷風の緋炎ヴォルトディザスターノヴァ】!!!」
  
『【竜の咆哮ドラゴンバースト!!!】』
 
 二つの魔法がぶつかり合う。物凄い衝撃が周囲にはしる。最初は拮抗しているように見えたが……
 
「……くぅっ!?!?」
 
 徐々にリーシャが押されていく。そもそも、最初に拮抗したこと自体が考えられないことであった。そこから考えれば、この展開は当然のことである。
 
「ぐぅぅぅっ!?!?!」
 
 必死に耐えるが、現実は残酷でもうすぐ彼女に【竜の咆哮】が到達する。
 
「リーシャ様!!!!」
 
 レイがリーシャを呼ぶ。すると、リーシャの頭の中に先ほどの会話が流れる。
 
 




『……違う』
 
「えっ?」
 
『汝の願いはそれではない』
 




 
 …………そうだ。自分の願いはそんなものでは無い。
 
「私の……私の本当の願いは!!」
 
 そして、告げる。
 
「もう二度と、誰かを失いたくない!!誰もが差別することなく、誰もが犠牲になることなく、誰もが笑顔を浮かべ、誰もが幸せだと思える!!そんな世界を私は創りたい!!!!」
 
『っ!!』
 
「だから……私はこんな所で死ぬわけにはいかないっ!!!」

 リーシャはさらに魔力を高める。
 
『……むっ!!』
 
 徐々にリーシャの魔法が押し返していく。
 
『ぐっ!!』
 
 そして、
 
「やぁーーーーー!!!!!!」
 
『ガアァァーーーー!?!?!?』
 
 完全に【竜の咆哮】を押し返し、【雷風の緋炎】が竜に当たる。
 
ドゴォーーーーン!!!!!!
 
 耳をつんざく音がなり響き、リーシャは膝を付いてしまう。
 
「はぁっ、はぁっ、はぁっ!!」
 
「リーシャ様!!」
 
 すると、後ろから動けないはずのレイが走ってくる。
 
「とりあえず、これを!!」
 
「はぁっ、はぁっ!……これって、ポーション?」
 
「はい!」
 
「で、でもなかったんじゃ……」
 
「さっき作りました!!」
 
「(いつの間に……)あ、ありがとう」
 
「いえ……ご無事で本当に良かったです」
 
 涙目になりながらレイがそう言う。
 
「………」
 
 リーシャは少し照れくさそうにしている。
 
「……リーシャ様…」
 
「な、何?」
 
「……守って下さり、ありがとうございました」
 
 それを聞いて、リーシャは少しだけ胸が軽くなる。
 
「(よかった……今度は守れた。本当に……よかった)」
 
「………竜はどうなったんでしょうか」
 
 リーシャはその一言ですぐに気持ちを切り替える。
 
「………さすがに倒したんじゃないかしら?自分の咆哮ブレスごとくらったんだし…」
 
 ……ところが………

『………ふふ』
 
「えっ!?」
 
「まさか、今の声は!?」 
 
『ハハハハッ!!!!』
 
「っ!!」
 
「そんな!」
 
 そんな希望をあっさりと打ち砕いて黒竜が姿を現す。二人の背中に冷たい汗が流れる。
 
「(もう……ダメっ!)」
 
「くっ!」
 
 二人は次に訪れるであろう衝撃に備えようとして、反射的に目をつぶる。そして、二人に竜の反撃が…………
 
『………………合格じゃっ!!!!』
 
「「へ???」」
 
 ……訪れなかった………
 



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