王子は吠える

ノベルバユーザー97355

第1話 王子であること

街は賑わい活気が溢れている。
イスリート帝国。
ラズアリー皇帝が統べる国であり治安も良いと評判である首都タナグア。
その首都タナグアに道中の馬車。
馬車の中にはある人物が乗っていた。

「殿下」

殿下だと呼ぶ人物。名はヴェルト。
イスリート帝国のラズアリー皇帝直々の側近であり第1戦闘部隊の隊長も務める彼は国の重要人物でもある存在だ。
数々の功績を収めており帝国の剣とも言われいる。
そんな彼が殿下と呼ぶ人物。

「なんだヴェルト。腹ごしらえでもしたいのか?」

アルマ・カールス。
イスリート帝国の王子であり嫡男でもある人物。
剣技に長けており数々の戦争で功績を収めている。第1部隊隊長ヴェルトの隊に無理矢理な形で入隊したアルマ王子。
そんな王子に帝国は頭を抱えているのだがそのアルマ王子のお世話役を務めるヴェルトもまた同様に頭を抱えていた。

「殿下、あなたは自分のしたことがどういうことなのか分かっておいでなのですか!」
「はんっ!んなもん知ったことか!応じるどころか話すらまともに聞くわけでもなかったじゃねえか!」
「ですがあれは…公国がどうでるかですが」

そう。アルマ王子がしでかしたこと。
イスリート帝国のラズアリー皇帝直々による使いを命じられたアルマ王子はお世話役のヴェルトと共にシュターク公爵が支配するベルリン公国へと向かったのだが。
アルマ王子の口の悪さにシュターク公爵は聞く耳を持とうとはしなかったのである。

その様子を隣で見ていたヴェルトはこのままではとアルマ王子の代弁として盟約の申し出を願ったのだがシュターク公爵からは後日使いを寄越すとのことだけだったのだ。

「殿下の口の悪さは重々承知しておりますが」
そういうヴェルトの表情は真剣である。
「殿下は王子なのです。その王子があのような口ではどういう状況下でも耳を貸すことに値しないものだと思われます」
アルマ王子はヴェルトの顔を凝視していたが本心を悟った。
「たくっ、分かった。次の機会にそういうとこは気をつけるぜ」
「頼みますよ殿下。おキツいでしょうが王子であるための礼儀です」

―――王子であるため、か。

そう思うアルマ王子だったが、馬車はイスリート帝国の城に着きそうなのであった。

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