俺が出会ったメデューサはなんか他の奴とは違うようです

朝霧 えてる

第13話 〜いまきょうここで〜

「ネルちゃんのお家にちゃんとネルちゃんいますかね…?」

「どうだろうねぇ?いてくれたら早くていいねぇ。」

「でもお母様もメデューサの街に住んでおられるとは。」

「ルネちゃんがメデューサになるときお母様も一緒にメデューサになると言ってーね。ネルは旦那様とおばあ様が面倒を見ると言っていたそうよぉ。まぁ結局ネルちゃんもメデューサになったらしいけーど。」

「そうなんですかっ。」

「ええ。てかサンシアちゃん、もーう、敬語で話さなくてもいいのーよ?」

「シェルアちゃんもういつもの話し方でいいんですよ?ふふっ。」

「サンシアちゃんが敬語で喋ってるからなんだかこっちも前の喋り方で話したくなってねぇえへへ。」

サンシアとシェルアはメデューサの街でネルの家(ルネ、ネルの実家)へと歩いて向かっていた。

「奏真さんをさしたのは誰か分かったんでしょうか…?また刺されたら困りますよね…。」

「私の髪の毛に意識を灯したから当分はだーいじょーぶ。」

「髪に意識を灯す?」

「メデューサの髪は蛇とかで表記されることが多いのは知ってるよねぇ、THの子だったら。」

「うんうん。」

「でもそこら辺の女の子見てみてよぉ。髪に蛇がいる?ふよふよしているだけなーのよ。」

「確かに確かに。」

「髪に蛇の意識を灯すのは大分力を使うのーね。人間をよく殺る輩は簡単に意識を灯せるけどぉ。私なんかはほとんど人を殺ったことないから難しくて普段は蛇の意識を灯してなーいの。たーだこの前アシェフとやりあったから少しいつもより力に余裕があってねぇ。だから意識をともしてるんだけーれど蛇が銃弾とかは食べてくれるし危機が迫ったら教えてくれるのーよ。ま、サンシアちゃんにはまだ難しーけれどねぇ。」

「また頑張って特訓しますね。」

「がんばーれ。意識灯しは難しいもーのよ。特に人間を殺ったりしてないとーね。」

「…。シェルアちゃん…。その事で…、私すごく悩んでるんですが…。」

「んー…?」

「私はどっちにつくべきでしょうか。」

立ち止まってサンシアが言った。シェルアの表情がきゅっと固くなった。

「サンシアちゃんは、どうしたいの?」

「どちらにも、つきたくないっ…です…。」

「そういう考えを持っているならその考えを突き通したらぁ?私は、戦いには参加するけれどね。気絶だけさせるとか、石にして壊さずどこかに隠しておくとか。そんな感じ?殺しはしないでね。」

「参加する…んですね…。」

「ゴーメルさんが死んで、仮にリーダーをしていた奴がいまリーダーらしいのだけれど、争いを人間の街ではなく、メデューサの街で行うと決めたそうなの。このメデューサの街でもしボロボロに負けたら、私達は居場所を失うかもしれない。次期王として、それは避けたいからね。アシェフもその戦争のためにいろいろ住人の避難とか手配しているのよ。」

「奏真さんはメデューサ討伐隊として戦いに参戦しなさそうなので…私もしないようにしとこうかと…。」

「なるほどね。ほら、もうすぐルネちゃんの実家につくんだーから!そんなしんみりした顔しちゃだーめ!」

シェルアが歩き出した。サンシアも歩き出した。そして数分後、

「…ほら、ついた。ここ。」

「うぅ、緊張するっ…。」

シェルアがふふっと笑い家の扉を叩いて声を上げた。

「こんにちわー!誰かおられませんかー!」

「はいっ!」

中から女性の声がした。そして数秒後扉があいた。中から小柄な女性が出てきた。ネルの姿と重なりサンシアは目を丸めた。

「あー、急にすみません。ネルちゃんここに住んでおられますか?」

「まぁ、ネルのお友達?私ネルの母のエヴェルです。ネルは…いま病院で入院しているのよ。」

「入院されてるんですね。私王家のシェルアと申します。」

「シェ、シェルア…ちゃん…?あなた…ルネの…?」

「私をご存知でしたか。これは失礼いたしました。私はルネちゃんの友達です。ネルちゃんの本当の友達はこのサンシアちゃんです。」

「まぁ、昔、よくあなたの話をしていたわよ。家に帰ってきた時にね。」

「そうなんですか。それはそれは…。」

「ルネと仲良くしてくれてありがとうね。あなた、ルネとのお約束をまだ守っているそうね。城下にもあなたが人を殺さない次期王だという噂が流れてきてたわよ?ルネがなんか言ったのでしょう。」

「私が彼女を守りきれなかったため彼女を死なせてしまいました。約束くらい、守りたいです。」

「もうすぐ、メデューサの街で戦争が起きるのでしょう。そこでもなお、人を殺さないことをルネはきっと望んでいないわ。」

「お母様…。」

「母の私がこんなことを言ってはいけないのでしょうが…。元々人間を殺すのがあまり好きではなくても、あなたは王になるのでしょう?ルネとの約束を引きずってはダメよ?あなたも正直人間を殺したくてうずうずしている面もあるのではないの?私の娘のせいであなたが王になれないの、私は申し訳なくなってしまうから少し厳しく言わせてもらったわ。」

「…。」

「ルネが天国でなんか怒ってそうと思ったら私が言っておくわよ。ふふっ。」

「っつ…。いいのでしょうかっ…。」

「ええっ。私はいいと思うわ。いままでメデューサと人間の酷い戦争は起こらなかった。今度の人間との戦いは異例よ。」

「検討します。」

「ええ、そうしてちょうだい。」

エヴェルが微笑んだ。

「話が逸れてしまったわね。ネルに会いに来たのよね。ネルの病院まで会いに行く?」

「いいえ、出直します。今度のメデューサと人間の戦争で会いますっ。」

「サンシアちゃんっ?!」

サンシアが鋭い目付きでそういった。堂々としていた。シェルアは驚いた。

「あらまぁ、それまでにはネルが復帰しているといいわね。」

エヴェルがまた微笑んだ。


「お邪魔しました!」

サンシアが大きな声を出してシェルアの腕を掴んでエヴェルの家から去っていった。

「さ、サンシアちゃんっ?!」

「私も、私も参加します!」

「へっ…。」

「シェルアちゃんが王様になれなかったら困りますし!シェルアちゃんはもう人を石にすることに罪悪感が生まれない!だから私も戦います!」

「ざ、罪悪感は生まれるけど…。ルネちゃんとの約束はもう守らなくてもよくなったから…戦おうと思うけど…。でも、奏真くんは?!奏真くんはどうするの?」

「奏真さんは人間側について戦ってもらいますっ!きっと戦ってくれるっ。」

「て、敵になっていいのっ?」

「きっとどうにかしてくれるっ。」

「…。とりあえず、THに戻って話をつけましょーうか!」

「はいっ。シェルアちゃんは一緒に来るんですか?」

「送り届けるって奏真くんと約束したから届けないとっ!」

「でもメデューサだってバレたらっ。」

「サンシアちゃんと同じように髪の毛結んどけば大丈夫でーしょきっと!」

「すごい痛いけど大丈夫…?」

「大丈夫ー!」

「じゃあ、カプセルで一気にTHに行きましょうか!」

「はーいっ!」

そしてサンシアとシェルアは痛いのを我慢し髪を結んだ。きちんと結べたのを確認し、サンシアがカプセルを取り出して握りつぶした。サンシアとシェルアは一気にTHについた。ついたのは屋上だった。奏真の近くに移動したいとサンシアが願ったため、屋上についたのだろう。屋上で2人がキョロキョロとすると、奏真とひらひらと風になびく赤いマントの少女が目に入った。イノだ。

「あれ誰だーろう?」

「奏真さんにTHで二人きりで話す知り合いなんて居ないはずですが…。」

2人はちょっとずつ気づかれないように近づいた。そして、話している内容が聞こえてきた。

「あなたは簡単には死なないと言ったけれど、訂正するわ。死ぬ時には死ぬから気をつけて…。」

「条件とかある?」

「誰かを守ってあなたが殺されかけた時はあなたは死ぬ可能性が低い。だけれど、あなた自身に殺意が向いている時はあなたは死ぬ。」

「おいおい、いろいろたいへんだなぁ。」

「氷魔法が使えるだけありがたいと思った方が良くってよ。」

「魔法自体が空想のものなはずなのにどうして空想上の能力なんてもんがある?」

「昔ある作家が医者や やいろいろな人と協力をして本を出した。その本に雲、氷、雪、その他数々の能力は空想上の能力と決めた…?かなんかだったかと思います。」

「空想上の能力が使えるようになるのは大問題だろ。」

「技術は進化するものです。そのうち空想上の能力が普通の人にも使えるようになります。」

「そーかー。」

「あなたは次のメデューサ対人間の戦争、戦いに参加なさるんですか。」

「俺がこの世界にいてメデューサ討伐隊にいるのは、サンシアがこの世界にいてメデューサ討伐隊にいるからだ。俺が戦いに参加して今は味方か敵かもわからないメデューサを殺す意味があるんだろうか。だから、俺個人でどうこう決める気はないよ。サンシア次第だ。」

「あなたがこの世界に来たのはたしかにサンシアを生かすため。守るため。だけれどそんなにサンシアにとらわれる必要はあるの?」

「俺はこの世界の人間もメデューサも嫌いだ。でも俺は人間である以上メデューサ側には付けないだろうしな。」

「あなたはほんとに人間でしょうか。」

「…?」

「いえ、なんでもありません。」

奏真はイノの言葉に目を丸めた。

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