俺が出会ったメデューサはなんか他の奴とは違うようです

朝霧 えてる

第9話 〜明かされる過去3〜

「パールさんっ…。素敵な名前…!!」

「ありがとう。じゃあまた遊びに来たりするかもだし、機会があれば。」

「はいっ!!」

シェルアとゴーメルは建物の1階までパールを送った。

「じゃあね、シェルア、これは私からの教え。覚えててくれると嬉しいわ。」

「教え?」

「シェルアは、死んだら泣いて悲しいと思える誰かがいる?この者が死んだら泣いて悲しめるとか。」

「あ、あんまり…いない…。」

「死んだら泣いて悲しいと思える誰かと出会いなさい、もしそういう者と出会って、その者が死んだら、あなたを強くする。その者が生きていてもあなたを強くするわ。」

「泣いて悲しいと思える…。なるほど…。死ぬまで覚えておきます!」

「ふふっ。それは嬉しいわ。」

パールがもう1度シェルアをぎゅっと抱きしめて、

「ゴーメル、シェルアとルネをちゃんと頼んだわよ?」

「当たり前だ。じゃあまた後で。」

「ええ。」

パールはシェルアにはもう何も言わずに歩き出した。後ろ姿は凛としていて美しかった。パールが森に入り見えなくなった時だった。

「ルーさん、行かれたんですか。」

後ろから声がした。ゴーメルとシェルアが後ろを向くと綺麗な赤めの髪をなびかせる少女が立っていた。

「ルネ。見送りくらいしたらどうだ。」

「見送りしたら悲しくなるでしょう。嫌ですよ。」

「今日はまたどこへ行っていたんだ?また妹探しか?」

「あなたに言うほどのことではないです。」

「冷たいねぇ。」

「あなたに優しく接する必要はないかと思います。」

「お前の希望を受け入れてこうなったんだぞ?俺に罪はない。」

「こんな邪魔に髪がふよふよ浮くなんて聞いてない。」

「メデューサになるってことは髪が浮くのは当たり前じゃないかぁ。」

「まぁまぁ、ルネちゃん。」

「シェルア…。」

ゴーメルとルネの言い合いが始まりかけたためシェルアが割って入った。その時だった。二階の窓からひょこっと顔をだし、アシェフが声を上げた。

「お前がルネか。話を聞かせてくれ。」

「誰だあやつは。初めて見るのに失礼な奴だこと。」

ルネがギロりとアシェフを睨んだ。

「おい、アシェフ、まだ派手に体を動かすな、顔も出すな!」

ゴーメルが呆れながらアシェフに怒鳴った。

「はぁ、ルネ、シェルア、とりあえずあいつのところへ行こう。」

3人はアシェフのいる医務室へと行った。アシェフが窓を閉めベットにゆっくりと寝転がった。

「じゃあシェルア、あとは頼んだ。俺はルーがいなくなったぶんやる仕事が多いからな。」

「私に押し付けるんですかぁ?絶対このふたり揉めちゃう…。」

「ま、頼んだ!」

ゴーメルが気持ち悪いウインクをして走っていった。

「き、気持ち悪…。」

アシェフがぼそっと呟いた。

「えーっと…。じゃあ…。」

シェルアが困っているとルネが医務室の椅子を持ってきてどかっと座った。

「私の名前はルネ。元人間の女。妹がいる。兄がいたが死んだ。私の自己紹介はこれくらいだ。」

早口でルネが自己紹介をした。

「え、え、え、えーっと…。君の話もう少し詳しく聞いてもいいか。」

「まず自分から名乗ったらいかが?」

「俺はアシェフ。」

「アシェフ…。王家の者なのね。」

「あぁ、で、君の話してくれ。」

「何を話したらいいかしら。んー、メデューサ討伐隊で妹と仕事をしていたんだけど、ゴーメルさんがメデューサだという秘密を知りいろいろ聞くうちに人間をメデューサにする研究をしているのを聞いて、私はメデューサになることにした、みたいな感じかしら。まぁメデューサの髪がこんなに邪魔かつ妹に会いに行けないものだと思わなかったから怒っているだけ。」

「なんか理不尽…?」

アシェフが呟くとルネがアシェフをとてつもなく怖い顔で睨みつけた。

「な、なんかすんません。」

「ま、メデューサになったけれど私は絶対に人間を殺さないわ。ただゴーメルさんの研究に協力しているからここに住んでるだけ。妹はちゃんと会いたい。」

「どうして俺の周りは人間を殺さないやつばかりなんだ…。」

アシェフが呆れていた。

「そー、シェルアとはとても気が合いそうなの。」

「ルネちゃんは初めての女友達!」

「嬉しい。まぁ王家の子と絡んでしまって申し訳ない感はあるけれどね。」

「えへへ…。」

「女子トークは他でやってくれ。」

アシェフがまた呆れていた。

「おい、緊急事態だ。お前らも来てくれないか。」

医務室のドアを思い切り開けゴーメルが入ってきた。

「街侵略は私は嫌いなんで行きませんよ?」

「私もでーす。」

ルネが反対しシェルアも手を挙げ同意した。

「人数が足りないんだ頼むよー。」

「俺見学行っていいスカ?」

アシェフが首を突っ込んだ。

「お、お前が?」

「はい、俺が。」

「そんな体で?」

「体慣らしですよ。そろそろ動かないと。シェルアを付き添いとして連れていきます。」

「シェルアちゃんが行くなら私も行きます。」

アシェフがシェルアをぐいっと近くに寄せたのを見てルネがシェルアの腕を持ち手を挙げた。

「仕方ねぇな、皆で行くか。」

そしてあまり活発に動けないアシェフを連れゴーメル、ルネ、シェルアはメデューサ反乱軍の先導をし人間の街へと行った。ゴーメルは仮面を付けていた。

「なんで私がこんなことしてるのかしら。」

「私もどうしているんだろう。まったく…。全ては私を付き添いにしたアシェフのせいよぉ。」

「あ、はは…。」

三人がぐでぐで話しながら歩いているとメデューサ討伐隊と思われる者達が森を出たすぐの所で待ち構えていた。

「あらまぁ、最悪…。」

「ちっ。こんな所で出くわすとは…。ルネ、シェルア、逃げてもいいぞ。」

「呼んどいて何を言い出すの?」

「あの中にとても優秀なやつが混じっている。容赦のないやつだ。」

「…。戻らないわ。」

「る、ルネちゃん?!」

「森の近く、私は周りの木を操ることが出来る。殺さずに人間と戦えるわ。戦ってみたいじゃない。シェルアちゃんは帰っていいわ。」

「私はアシェフを守らないとダメだわ…。」

「お前だけ帰ったらいいぞ。」

「1人になんて出来ないわ。」

「皆ここに残るってことでいいな。」

「ええ。」

「はい。」

「うっす。」

皆残る事にし人間と戦うことになった。だが3人とも人間は殺さず気絶程度にすることにした。だが突然3人の頬に切り傷がついた。

「痛っ!!」

「?!痛てぇ。」

「ちょ、なに?!」

3人はとても慌てた。

「はっはっはっ。メデューサなんてみーんな俺が叩きのめしてやる。」

着ていたマントをガバッと脱ぎカッコつけた青年が口を大きく開け笑った。

「あれがゴーメルさんの言っていた容赦ない奴かしら?」

ルネがこそっとシェルアに聞いた。

「そうなんじゃない?」

シェルアは首を傾げ青年をじっと見た。シェルアが瞬きをしたその瞬間だった。ルネの目の前に一瞬で青年が行きルネの首を小さなナイフで切りつけた。

「ルネ!!!!!!!!」

シェルアが大声で叫んだ。

「シェ、ルアちゃん…っ。」

ルネがバタッと倒れこんだ。それを見てアシェフの目付きが変わった。

「おいシェルア、やむを得ん。あいつを殺るぞ!!」

「ええ、当たり前よ。」

アシェフは手を広げ相手を石にしようとし、シェルアは目をつぶり髪に意識を集中させた。そして、青年を石にしようとしたが、青年がまた一瞬で移動をした。そしてシェルアが切りつけられそうになったその時だった。

「シェルアちゃ、ん!!」

ガバッとシェルアにルネが抱きつきルネが背中を切りつけられた。血がわっと出てルネは口から血を吐いた。

「うぐっ!!」

「る、ルネちゃん…?ルネちゃん!!」

ルネが抱きついてきた勢いでシェルアはルネを上に乗せたまま地面に尻餅をついた。

「くそっ、てめぇ!!」

アシェフは怒りがMAXまで達しメデューサの覚醒をして、体から湯気が出ていた。さすがの青年も驚き動きが鈍くなっていたところをアシェフがばしっと叩き、青年を石にした。

「ルネちゃん!!ルネちゃん!!」

シェルアが呼びかけるもルネは苦しそうに微かに息をするだけだった。

「アシェフ、ゴーメルさんをはやく呼んできて!!!!」

「分かった!!」

シェルアはルネを自分の膝の上に寝転がした。

「ルネちゃん、今ゴーメルさんが来るから待ってね。それまでは私がここにいるから!!」

「シェ、シェルアちゃっ…。もう…分かってるでしょっ…。私は…あんな一瞬のことでこんな…ボロボロになってしまった…。人を石にする気が…なかったから…。石にする気があれば…もっとどうにかなったかもねっ…。シェルアちゃんっ…。お願いがあるっの…。妹がっ…もしメデューサの街に来たらっ…。よろしく頼むわ…。あとっ…。シェルアは人を石にしないでっ…。石にしたくないその心を貫いて…王になっても…。ただのっ…。お願いだけどっ…。」

「ルネちゃんっ…。まだそんなことっ…。言わないでよっ…。」

シェルアが目を潤ませルネの手を握りしめた。

「私はっ…。メデューサの世界で初めてできたっ…女友達…。それに…人間を石にする気がないメデューサにはっ…初めて出会った…。」

「私も初めて女友達が出来たよっ。ルネちゃんのこと好きだよ。まだあまり長い間一緒にはいれてないけれどね。」

「えへへっ…。そう言ってもらえると…ほんとに嬉しい…。」

ルネが目に涙を浮かべ辛そうに笑った。その時だった。

「おい、ゴーメルさん連れてきたぞっ!!」

ゴーメルとアシェフが走ってやってきて、ゴーメルの後ろには救護ドラゴンがいた。それからアシェフとシェルア、ルネはメデューサの街に戻り街の病院へといった。ルネはぱっぱと運ばれていき、シェルアとアシェフは病院の椅子に腰掛けた。そして数分するとシェルアがガバッと立ち上がった。

「アシェフ…。私決めた。王になる権利は捨てないけれど人は絶対石にしない。」

「おう。」

「ルネちゃんと約束したからね。」

「おう。」

「アシェフや城の者達がなんと言ってもね。」

「おう。」

二人がそう決めた時だった。ルネが運ばれていった部屋から医者が出てきた。

「…。ルネさんは…。」

その言葉でアシェフとシェルアは固まった。そしてぶわっとシェルアの目からは涙が出てきた。

「っ…。る、ルネちゃ、ん…。わ、私っ…。泣いてるっ…。うぅっ…。」

「くそっ…。」

「ルーさんっ…。ルーさん…。」

シェルアがぼそぼそと呟いた。そして涙を拭き最後に一言こう言った。

「ルーさん、私には、死んだら泣ける友達が、ちゃんといたよ。」

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