俺が出会ったメデューサはなんか他の奴とは違うようです

朝霧 えてる

第8話 〜明かされる過去2〜

それからシェルアはゴーメルの指示に従い毎日過ごし立派にゴーメルの助手をした。

「シェルアちゃん覚えがいいし働き者だから私の仕事が減ってすごい助かってるわ〜。人間の世界に帰れる機会も増えたしー。」

「えへへー、置いてもらってるので働かないわけには行きませんよぉ〜。」

ルーとよく話すシェルアは、ルーの話し方が少し移っていた。

「背が伸びたわね、私を超えちゃうんじゃなぁい?」

「超えれたら嬉しいです!」

「ふふっ。私がここを出ていく前にあなたが私の身長を超えれたらいいわねぇ。」

「…え?出ていって…しまうの?」

「私の大事な大親友が、殺されてしまったからね。お葬式に、行かないと行けないの。」

「お葬式っ…。」

「その大親友には娘が二人いるの。その大親友の旦那さんも殺されたそうでね。」

「そんなっ…。放ってはおけない…。」

「シェルアはよくわかると思うの、今親といないから。シェルア、あと少しの間よろしくね。」

「ルーさんは…これからどうするの?」

「大好きな子の子供だもの。育てたいわ。立派に。人間界でちゃんと暮らしたいと思っているわ。元々私は人間だしね。」

「ルーさんはどうしてここにいたの?人間なのに。どうしてゴーメルさんはルーさんをここに置いていたの?」

「私は元々メデューサ討伐隊の人間だったの。そこにゴーメルが現れてね。メガネが似合う素敵な男の人だと思っていた。好きだったかもねぇ。まぁそれで私は彼に近づいたの。そしたら自分はメデューサだと、教えてくれてね。びっくりしちゃったわよ最初。そして私は石にされるかなとも思ったわ。でも結局彼も私に興味があったらしく、石にはしなかったわ。それで私達は…結ばれたの。ふふっ。でも、そうすべてが上手くいくわけではなかった。ゴーメルはメデューサの方で反乱軍のリーダーをしていると言ってね。そちらにもいかないといけなかった。だから、私はついて行くことにした。そして、今ここに至るの。ゴーメルは今、人をメデューサに変える研究をしている。私のために。だから私は決めたの。悪になると。」

ルーが話し終わってシェルアを見るとシェルアは静かに涙を流していた。

「ほえっ?!ごめん、変な話しすぎた?!熱く語り過ぎた?!」

「凄いいい話しで…うぅ。素敵な愛の話ぃぃ。」

「ただ私が悪人になっただけの話よ。まぁ、それでここに来てたんだけど、私も友達とその子供は見捨てられないし、見捨てたくないしね。彼とも話してとりあえず私だけずっと帰ることになったの。遊びに来ることはあるかもしれないけれど、向こうで仕事をするわ。」

「ルーさんはそれでいいの?」

「ええ。」

「ルーさん、いま、嘘ついてる。」

「へっ?」

「あぁ、なんか、分かった気がする。これが能力かな。体がなんか変。」

「どういうこと…?」

「メデューサの能力が芽生えやすい状況3、なにかにすごい衝撃を受ける。私は今、ルーさんが出ていくことにひどく衝撃を受けたんだと思う。なんかルーさんが嘘ついてるのが分かったよ。魔法のような感じで。」

「まぁっ、すごいっ…。」

「ルーさん、もう私といるのはあと少しなんでしょ。話して。」

「シェルア…。」

シェルアがルーの手をぎゅっと握った。

「ほんとうはっ…。」

ルーがぼそっと呟き話し始めた。

「ほんとうはね、メデューサなんて嫌よ…うん…。親友を殺されたと聞いたとこほんとうに衝撃を受けた。でも、ゴーメルのことも好き。だからね、どうしてもいまはゴーメルを優先しちゃうの。ゴーメルにも言ったわ。メデューサは嫌だって。」

「親友が殺されたらさすがに…。」

「ま、だからメデューサ討伐隊に戻ってメデューサを殺れることはすごい嬉しいんだけれど、ゴーメルの仲間を殺すのはさすがに厳しくて…。」

「ルーさん…。」

シェルアがルーにどう声をかけたらいいか悩んでいたその時だった。

「おーい。」

ゴーメルが人間界から帰ってきた。

「ご、ゴーメルさんっ!」

「ゴーメルっ!」

ゴーメルがシェルアとルーのいる二階へと上がってくるとシェルアとルーは目を丸めた。血塗れの男を担いでいた。

「アシェフ?!」

シェルアは驚いた。アシェフだった。

「知り合いか?そこで人間とやりあっててな。連れてきた。とりあえず医務室に連れてく。」

「まぁ、血が…。」

「あぁ、ルー、すまんが掃除頼む。」

「ええ。」

「先に行って医務室の準備します!」

「頼むわシェルア。」

それからバタバタと3人はアシェフの治療やれ掃除やれをした。目を覚ましたのは二日後のことだった。

「…ん?」

「あ、起きた!!ゴーメルさん、アシェフ起きましたよぉ!」

「夢…?」

「寝ぼけてるの?アシェフ。」

「どこだここ。」

「ここはメデューサ反乱軍の基地だよぅ。」

「なんだその喋り方。反乱軍の基地か…。」

「喋り方は気にしないでぇ。えへへ。久々のいい再開は出来てないけど…、何があったの。」

「人間といろいろあってな…。5人殺した…。」

「なっ!!!!」

「仕方ない、俺が殺されかけたんだ!」

「あんたを殺そうとした人だけを殺した?なにもしてない人は殺してない?」

「っ…。2人はその場にいた奴…。」

「さいってー!!人間を殺すのは大嫌い!!」

「パシッ!!!!」

シェルアがアシェフにビンタをした。アシェフは目を丸めて驚いた。

「いって…。な、なんで殴る!!」

「ひやっ…。ご、ごめん、つ、つい。」

「なんだなんだ、喧嘩か?」

ゴーメルが医務室に入ってきた。

「ご、ゴーメルさんっ。」

「どうした。頬が真っ赤だぞ。」

「すいません、私が…。」

「喧嘩は程々にしてくれよー。前も喧嘩してた奴がいたよ。薬とか粉々に破壊されてなぁ。」

「そ、そうなんですかっ。」

「シェルアのとなりのとなりの部屋にも住んでるやつがいるとルーが言ってたろ。そいつが派手に暴れてなぁ。」

「あんないい子が?」

ゴーメルとシェルアが話しているとアシェフが首を突っ込んだ。

「シェルアはここに住んでるのか。」

「え、えぇ、何人か住んでたけれどもう私ともう一人の子だけになった。」

「知り合いか?」

「ううん。ここに住み始めてから出会ったの。」

「あいつは異例でな…。メデューサの覚醒を自分で制御出来ずに1度だけ暴れたんだよ。」

今度はゴーメルが首を突っ込んだ。

「覚醒で暴れるなんて、そんな例があるのっ」

「異例だ。まぁ、あいつの場合仕方がない。」

「彼女は変わっているの?」

「…。まぁそんな所だな。」

シェルアとゴーメルの話にアシェフはついていけなかった。

「どんな奴のこととか全く良くわからないんだが…。」

「今日はまた出掛けてる…?」

「あいつは出掛けるのが好きだからな。」

「せめて名前だけでも教えてくれ。誰なんだそいつは。」

「ルネちゃんっていうとてもかわいーい女の子なの!」

「は、はぁ。名前聞いても全然わからないな。」

「当たり前よー。ルネちゃんは元人間の女の子だからね!」

「も、元人間?!」

「シェルア、こいつはまだここに住むと決まった訳じゃない。その話はこいつの今後を聞いてからだ。」

「あ、そっか、ごめんなさい…。」

ゴーメルがアシェフをちらっと見て聞いた。

「お前、これからどうするんだ。」

「俺ですか…。俺は…王家の者ですが、もう城には戻れません。」

「どういう事だ。」

「俺はこのメデューサの街に忍び込んできた人間を叩きのめしたんですが、戦っているうちに人間の街の方に行ってしまいまして、そこで倒れてたら人間に助けられてしまいました。」

「助けられてしまいました、というのは間違えている。助けてもらったんだ。人間だろうが、感謝の気持ちは持つべきだぞ。」

「…は、はい…。」

「で、助けられたのにどうして俺の家の前で血塗れで倒れていた?」

「助けては貰いましたが、人間の街にメデューサということを隠して居座るのはとても心地悪いもので逃げ出しました。そしたらなぜかメデューサだとバレて…。追いかけられました。それでまた戦いになり…。止めに来た人間も口止めのために殺しました。助けてくれた子は助けてくれた借りがあったので生かしました。」

「口止めをすればいいのにわざわざ殺すなんてっ…!」

シェルアが少し怒りながら言った。

「なぜバレたのかそれだけが疑問です。」

「おそらくメガネをかけていたからだろう。最近人間の街ではメデューサと人間の区別をつけるため、メガネをつけないようにしているからな。」

「そ、そんなっ!!では、バレてしまうではないですか!」

「目があまり見えないのを我慢するしかないだろう。女も痛い思いをして髪を結んでいたりするからな…。」

「男のメデューサは絶対目が悪くなるのは少し辛いものよね、メガネなしでどうにかなればいいのに…。レンズを目の中に突っ込むとか…?」

ルーが大きなカバンを持ち医務室に入ってきた。

「ルーさんっ!!」

シェルアがルーの元へ走っていった。

「準備が出来たからそろそろ私は行くわ。」

ルーが少し悲しそうに笑った。

「ルーさん…、私まだルーさんの身長…超えてないっ…。」

「私もこんなに早く行くことになるとは思わなかったから…。ごめんね、シェルアちゃん。」

「また、いつでも遊びに来てください、私は会いには行けないので…。」

「えぇ、最後に1回ハグしてもいい?」

シェルアが聞くとルーが手を広げて笑って答えた。

「もちろんっ。」

そして2人はハグをした。アシェフは状況がよく分からなかったが静かにその様子を見ていた。

「シェルア、最後だから、言うわ。私の本当の名前は、パールっていうの。」

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