俺が出会ったメデューサはなんか他の奴とは違うようです

朝霧 えてる

第3話 〜2人セット〜

白衣の男がサンシアにいろいろ指示をし、サンシアは奏真を連れてまた別のところへと歩き出した。

「奏真さん。まだこの世界に来たわけなど分からないのでしたら、とりあえずメデューサ討伐隊に入りませんか?」

歩きながらサンシアが話し始めた。

「…ん?」

奏真は何が何だかよくわからなかった。

「お父さんによると、奏真さんにはなんかすごい力があるらしいです…。メデューサ討伐隊に使えるとのことで…。」

「俺は物かよ…。」

「あっ、言い方が悪かったですごめんなさい。」

「いろいろおかしいとか思わないのか。突然別の世界から変な怪しいやつが来て、自分の仕事場へ招き入れるなんて、おかしいだろ。」

「お父さんは変な人間とそうでない人間の区別ができる力を持っているんです。お父さんがあなたを認めているので、多分あなたはすごい人だと、私は思ってます。」

サンシアが少し恥ずかしそうに言った。

《俺はこんな可愛い子にすごい人だと思われてんのか…。異世界も悪くねぇな。》

奏真は思わずにやけてしまった。

「あのエスパーみたいなやつが俺を認めてるなら別に入ってもいいな。どーせ何したらいいかわかんねーし。」

奏真はこの時はまだ軽く考えていた。討伐隊のこともメデューサのことも。

「辛く…なりますよ。」

サンシアが小さい声で呟いたが奏真には聞こえていなかった。そして数分歩くとB-13室というところについた。サンシアがそっとそのドアを開けると中にはたくさんの器具があった。

「なんだこれ。」

「修行用です。」

サンシアがいろんな器具の説明をしたが奏真はいまいちよくわからなかった。

「もうすぐここにお姉ちゃんがきます。そうしたら氷魔法の扱い方を教えてくれると思いますので…。」

「サンシアは教えてくんないの?」

奏真が思わず聞いた。

「お姉ちゃんの方が分かりやすく教えてくれると思います…。メデューサには人一倍思い入れがあるので…。」

「思い入れ?なんだそりゃ。」

「まぁ、また機会があれば詳しく教えますよ。1つ言えることは、私たちに親はいないということですかね。」

「親がいない?あの研究室の人をお父さんと呼んでたけど、お父さんじゃないのか?」

「あの人は…。お父さん代わりの人…みたいな。なんで私たちにあんなによくしてくれるかはわかりませんが、本当のお父さんみたいに凄く優しくしてくれます。」

「へぇ。」

「サンシア、お待たせ。奏真も、お待たせ。」

サンシアとたくさんおしゃべりをしているとカシアが突然現れた。

「お姉ちゃん、奏真さんは氷魔法だそうです。」

「氷?氷…。やっぱり奏真は異世界から来たのね。これではっきりしたわ。」

「なんだそれ。」

「氷魔法は存在しないものだと言われていたの。空想上の能力だって。」

「俺からすると能力が使えること自体漫画の世界の話だが。」

「能力が使えない人間なんていないわよ。能力をどこまで引き出せるかで強さが決まるの。能力をとても引き出せたらメデューサ討伐隊に入りやすくなったりするわ。まぁあなたは氷魔法なら討伐隊に入る試験とかせずにとっとと入れるけど。」

「ふむ、まぁよくわからんがなんでもいい。俺はこの世界に来たわけとか知りたいし、過ごし方も知りたいし、討伐隊とやら頑張るよ。」

「いい心がけね。んじゃ能力の使い方ほいっと教えるからそこに立って。」

そして1日、カシア、サンシア、奏真は能力の練習をした。

ーーそして次の日

「1日練習してみてどうだった?こんな簡単に能力を使えるようになるとはね。まぁいい、1日お休みもしたしさっさと街に行くわよ。」

カシアがさっさと準備をし出した。

「行動が早すぎる。まて、俺まだメデューサと戦える気がしないぞ。」

「大丈夫。いざとなったら私とサンシアがいる。」

「まぁお前らは強いから安心、だけどさ。」

「奏真さん、大丈夫ですよ、お姉ちゃんとぉっても強いですから。」

サンシアがカシアの後ろでふふっと笑った。

《よくある漫画から行けばサンシアの方が強そうだけどな…。どうだかな。》

奏真はぶつぶつと考えた。

「奏真さん、私に捕まってください!」

サンシアが腕を突き出した。

「…ん?」

「瞬間移動してさっきの街に行くので私の腕に捕まってください!」

サンシアが言った。

「あぁ、はいはい。」

奏真がサンシアの腕をつかんだ。大きな胸が横で輝く。

「でか…。」

「なっ‼︎いま腕のお肉落とそうとしてるとこなんでそこには触れないでください…‼︎」

サンシアが顔を赤らめながら呟いた。

「ち、違う違う…気にすんな」

奏真はおもわず笑ってしまった。

「あの、後ろでイチャイチャしてるけど、行くわよ。」

ジロリと前からカシアが睨み、小さいカプセルを握りつぶした。するとその瞬間カシア、サンシア、奏真はメデューサがでた街へと着いていた。

「へぇ、そのさっき潰したカプセルワープができるのか。」

「これも父さんの発明。」

「すごいな。魔法みたい。」

「あ、お姉ちゃん、奏真さん、あそこにメデューサが。とりあえず1人。」

サンシアがビルの中を指差した。中には長い髪が重力に逆らいゆらゆら揺れ、辺りをぎろぎろと睨み回しているやつがいた。

「他にも多くいると思います。私はあの中の1人をとりあえずやっつけに行きます。2人は別のメデューサを探してください。」

そういいサンシアはばっと走り出しビルの中へと入った行った。

「あ、ちょ、サンシア‼︎」

「サンシアはきっと大丈夫。私たちも行くわよ。」

カシアもそういい、走っていった。

「メデューサをとらえたら、いいのか…。いくか。」

奏真も走り出した。少し走ると髪が重力に逆らいゆらゆらと揺れている人間とは違ったのがいた。

「あ、あいつね。」

そういい奏真は学んだ能力を使い、メデューサに向かって氷を放った。遠くだったため、メデューサは奏真には気づかず、一瞬で凍りついた。

「なんだ、こんだけか、楽勝だな。俺、もしかして最強?」

そう呟き奏真はにやにやと1人で笑った。そしてメデューサの元へ走っていき、メデューサを、持ってきた硬い紐で縛った。

「けっして変な気持ちはない。これは俺の任務で縛ってるからな。」

そうメデューサに話しかけ、縛ったメデューサをカシアが走っていった方へと連れて行った。しばらく走っていくとカシアが見えた。周りには何体ものメデューサが倒れていた。カシアはぽつんとうつむいて息を切らしていた。

「カシアー。」

走りながら奏真が近寄るも反応がない。

「カシア、どうした。」

奏真がカシアのところまで駆け寄った。カシアは静かに涙を流していた。

「え、ちょ、ん?ど、どうした。」

奏真が慌てて背中をさすった。

「奏真…。奏真‼︎」

カシアが大きな声をあげた。

「な、なんだ!」

「さ、サンシアが…っ‼︎サンシアが‼︎」

カシアが奏真に抱きついた。カシアの胸も大きくお腹に当たっている感触が良く分かった。でもいまはそれどころではなかった。

「サンシアがどうかしたのか?」

「サンシアが…連れて行かれちゃった…‼︎‼︎うぅ、ど、どうしたらいいのっ‼︎奏真…。」

泣きながらカシアが叫んだ。

「…は?サンシア、どこに連れて行かれたんだ‼︎」

「わからない…。わっかんないよ‼︎わかったらさっさと行ってる‼︎」

「ご、ごめんて。なんで連れて行かれたのが分かったんだ。」

「そこに倒れてるやつの一体が教えてくれた…。倒しちゃったけど…。」

「…。とりあえず捕らえたやつを持ってTHに帰るぞ‼︎親父さんのとこに行って、いろいろ話すぞ‼︎」

奏真が大きな声でそういいカシアを掴んだ。

「は、はやくワープしろ‼︎」

奏真がもう一度大きな声を出した。

「う、うんっ…‼︎」

カシアは奏真の大声にびっくりしながらワープをし、THの研究室に行った。

「お父さん…‼︎‼︎サンシアが‼︎メデューサに連れて行かれたの!どうしたらいいの!」

カシアがドタバタと走っていき男に抱きついた。

《あぁ、あの胸の感触味わえるの羨ましい…、って今そんなこと考えてる場合じゃないか、なんでサンシアは石化して壊されずに連れて行かれたんだか…。》

そう奏真が考えているとカシアの大声が奏真の思想を止めた。

「お父さん、何を言ってるの⁈仮にも娘のような子がメデューサに連れて行かれたのよ⁈なんで、そんなに…。冷たいの⁈意味がわからないわ‼︎」

どうやら男はサンシアが消えたことに関してあまり興味を持ってないらしい。コーヒーを飲みながらパソコンをいじっていた。

「おいおい、えっと…、名前がわからんがバンスレー姉妹のお父さん的存在の人、それはひどいんじゃねえの?探したりしないのかよ。」

「私の名前はゴーメルだ。変な名称で呼ぶな。メデューサに連れて行かれたものをどうする。そう大慌てで叫び狂っても意味がないだろう。」

「ゴーメルさんか。わかった。でもなにか、解決策がねえものか。カシアは今本当に狂う寸前だ。大事な妹が連れて行かれたんだからな。」

「俺は忙しいから2人でやってくれ、どうせメデューサ基地にいるだろ。今日のメデューサ倒しはお疲れ様だった。」

そういいゴーメルはカシアと奏真を研究室から追い出した。

「お、お父さん…。な、なんで…。サンシアが…サンシアが連れて行かれたっていうのに…。」

カシアは青ざめた顔で研究室のドアの前で立ち尽くした。奏真は見てられなかった。

「おいカシア、メデューサの基地はどこだ。行くぞ。」

奏真の質問にカシアは目を丸めた。

「へっ…。」

「希望はある。俺の能力はすげぇんだろ、メデューサの基地もけちょんけちょんにしてやるよ。」

奏真がキメ顔で言った。

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