テンプレ的におかしな案件

篝火@カワウソ好き

冒険者登録の場合(少年)

ようやく二桁を数える歳になった頃、大好きだったおじいちゃんを失った。


僕にとって、母方のおじいちゃんとは掛け替えのない存在だった。


僕が三歳の頃、話すことが出来ると知るとおじいちゃんは待ってましたというように早速、剣術の訓練、魔法の訓練と、僕に稽古をつけ始めた。


そして早七年。僕は神様から能力を貰った。


この世界では、十歳になる頃、神様から一つ能力を貰えるのだ。


そうして貰ったのが、〈魂喰らいソウルイーター


僕に能力が与えられるのを見届けたというように、歳もとうに平均寿命を超えているおじいちゃんは体調を崩し寝込むようになった。


そしてついにこの日が来てしまったのだ。


──おじいちゃんの死


僕は、死ぬ間際におじいちゃんに命令という形で言われた事があった。


「わしの魂を喰らいなさい。さすれば能力をお前さんに渡せるやかもしれん。わしは能力のお陰で旅に出れると思った矢先じゃ、親が体調を崩してのう、結局出来なかったのじゃよ」


おじいちゃんは諦められなくて努力だけは続けた新しく、力を着々とつけて言ったものの、実際にそれを発揮することは一度も無かったと口にした。


「やがて結婚し、男の子を授かれば武を一から教えてやることを夢に見た。だが実際に生まれてきたのは、お前さんの母親、つまりは女の子だったわけじゃ」


その時を思い出したのか、嬉しかったような残念だったようなそんな曖昧な表情をおじいちゃんは顔に浮かべた。


「そんなもう夢を果たすことは出来ないと思っていた頃に朗報があった。お前さんの誕生じゃ」


そう言って、横になっているおじいちゃんは頭を隣で座っている僕の方に向けて笑みを浮かべた。


「お前さんには悪いことをしたかもしれんが、稽古をつけている時、今までの人生にないほど楽しいものであった。そんなお前さんも早くも十歳となった。わしはそれを見れて嬉しかった」


その笑みはとても情の込められた、けれど儚く今にも消えてしまいそうなものに、その当時の僕の目に映った。


「心残りはお前さんの名が世界に轟く瞬間を自分の目で見れないことじゃ。お前さんの能力は〈魂喰らいソウルイーター〉。幸いにもお前さんに初めてのプレゼントが出来るかもやしれん。こんな老いぼれの魂死ぬ瞬間に喰らっておくれ」


そして僕は、その約束を守るため、涙ながらに死にゆくおじいちゃんの魂を喰らった。


◢◤◢◤


時が経ち、冒険者ギルドに入ることの出来る十二歳の誕生日を迎えた。


前々から言っていたのもあり、両親は心配の声とともに応援してると言って僕の背中を押してくれた。


田舎にある家を出てから、一週間と少し、ようやく冒険者ギルドのある街に辿り着いた。初めてということもあり、街の入り口で通行料を取られた。


両親から渡されていた通行料と冒険者になるための費用があるので手早く払い、門内の街に入る。


門をくぐると、そこには僕の見たことのない世界が広がっていた。


見渡す限りに人、人、人…………


僕は、取り敢えず近くにいるおばちゃんに冒険者ギルドの場所を尋ねた。


すると、教えてやるから荷物運び手伝っておくれ、と言われたので女性の家まで野菜やら果物やらが入った木箱運びを手伝うことにした。


「あんた、幼いのに随分と力があるんだねぇ」


そう呆れられながらも笑顔で感謝とともに一つの果物を渡されて、当初の目的である冒険者ギルドに行くための簡単な地図も書いてくれた。


「ありがとう」


僕の言葉に、おばちゃんは手を振って見送ってくれた。


◢◤◢◤


教えられた場所にたどり着いた僕は、目の前の大きな入り口に足を踏み入れた。


中には、様々な人が居たけど僕くらいの年齢の子は一切居なかった。


取り敢えず、受付に行くことにした。


受付の人は僕を見て驚いていたけれど、年齢も冒険者の基準に達しているので、お金を渡し無事に冒険者になる事ができた。


その時のことだった。


後ろから頭を掴まれそうになったので、僕は咄嗟に横に避けた。


「逃げるのは得意ってか? おいチビ、オメェーにはまだ、冒険者は早いんだよッ!! 家に帰って母ちゃんの乳でも吸ってな!! ギャハハ」


そう言って来たのは、スキンヘッドのおっさんだった。


「なんで知ってるんだ。僕が母さんの父を吸ったことを?」
「なになに、お前さん本当に乳吸ってんのか、その歳で? ギャハハハ!! 傑作だなッ!! とっとと今貰ったカードを置いて帰りやがれッ!!」


おっさんは俺の手に持つカードを奪おうとしたので、僕は本日二度目の回避を行なった。


「テメェー調子乗ってんじゃねぇーぞ!!」
「乗ってなんかないっ!!」


僕とおっさんの言い合いで周りの人の目が集まる。


やったれ、やったれという野次が多く飛んでいた。


「チッ! こうなったらしゃーねぇー。野次にもある通り力の差を見せてやるよッ! 決闘だ!!」


おっさんの声に観衆が口笛を鳴らしたり、声をあげたりしていた。


「ああ、決闘だ。条件付きの勝負ってヤツだ。俺が勝ったらテメェーはお家に帰んな!! 万が一、テメェーが勝つような事があれば、なんでも一つ言うことを聞いてやる」
「だったら、僕の冒険者入りを認めろ!!」
「そんなんでいいのか!? 俺の有り金とかいらねぇのかよ!?」
「いらないっ! 絶対に冒険者になること認めさせてやるっ!!」


僕とおっさんの準備が整ったのを確認して一人の男性が指揮を取った。どうやら決闘の際に審判というものがつくらしい。


そんな彼の開始の声に、おっさんは剣を抜いて走ってくる。


「とっとと負けて、母ちゃんの乳を吸いに帰んな!!」


今まさにおっさんが剣僕に剣を振り下ろそうとしていた。だが、その動きを間近で見た僕は思いの外、冷静な状態を維持していた。


───おじいちゃんの動きの方が速い! これならっ!!


「母ちゃんの父の力を見せてやる!! 〈波動拳ウェーブインパクト〉ッ!!」


僕の白い何かに包まれた右手の拳が、おっさんの振り下ろす剣が僕に届く前に腹部を捉えていた。


完璧に入ったパンチは途轍もない威力であった。


直撃を食らったおっさんは、体を吹き飛ばされギルドの壁を突き破り、ギルドの外にまで飛んでいった。
姿を見るに完全に気絶をしていてのびている状態だった。


明確なる少年の勝利劇。


「審判さん、コールしないの?」


僕の声にふと我に返った審判の男性。


「しょ、少年の勝利!」


コールを聞いて、観衆は唖然として僕を見ていた。まさかおっさんが倒されるとは思ってもみなかったといった驚愕を顔に貼り付けていた。


だから、そんな人達に僕は言ってやった。


「今日から冒険者となりました。今後ともよろしくお願いします」


少し苛立ったので普段使わない敬語で、嫌味を含んだ口調になる。


僕の言葉が聞いたのかもう誰も何を言うこともなく立ち尽くしていたので、この空間の居心地の悪さにギルドを後にすることにした。。


◢◤◢◤


後日談


少年と対峙したおっさんは、実は世界に名を轟かしていた一流冒険者であり、あえて悪役を買って出て、ギルドに来るちびっ子を相手にしてまだ早いと促す、実際は優しい人であったらしい。


そんな彼を一発で倒した少年に世界が興味を示さないはずもなくその少年の力を得るためのとある噂を耳にしては、ありとあらゆる組織がとある依頼を提示した。


その内容は
「少年の母親を見つけ出せ」
というものだった。


彼の者の母親の乳には特別な力が込められているという、噂になっていることを少年は知らない。


少年はというと


「冒険者になったよ、おじいちゃん。おじいちゃんの力を使って天国のおじいちゃんに名が轟くくらいに頑張るから。しっかり見ててよ!!」


そう意気込んでいたとさ……

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