喰べられた私。

くろ

2

気合を入れて出発したのは数時間前。
「な、なんでつかないんだ…?」
いつもなら1時間くらいで着くはず…。

そう思いながら歩いていると、目の前に現れたのは死にかけの魔物。
村にはいないけど、森の奥まで行くと魔物はたくさんいる。

「そんな奥まできたのか…」
その死にかけの魔物は、普通の動物で言えば草食のものだろう。

「……死にかけ、」
可哀想などとは思わない。自然の摂理。弱肉強食。それが世界だろう。だから私は暴力に何も感じなかった。
ただ、私は弱いのだなと。
そう感じた。

だが。
今この魔物は苦しいだろう。

そう思って、魔物の首に手をかける。
「…ごめんな」
ボキッと音がして、首が折れたことを確認した。

思わず口をついて出た謝罪の言葉は、自分でも何を思って言ったのか分からない。
自分がしたことは正しいことなのかもこれで良かったのかもわからない。
今自分に出来ることで一番したかったことをしたかっただけ。


膝をついていたためついてしまった土をほろって前を見ると。
「ここは…?」
さっきいた場所。では、なかった。

「クルクル飛び回る馬鹿な虫はどこ?
ちょうちょは何処にいるのかな」
「…(だれ?)」
クルクル飛び回る馬鹿な虫?
ちょうちょ?

声を出していた人物が何を言っているのか分からない。誰かもわからない。
「あーげーは。君は誰?」
なんで名前を?
わたしは…誰。

「君は舞蝶?」
(私は舞蝶?)
「命を奪ったのはだれ?」
(…わたし)
「あの日殺したのだーれだ」
(殺した、?)


殺した。私が人を?
(殺してなんかない)
あなたは誰なの?

私は誰なの?



「君は舞蝶人殺し

くすくす笑った君はだぁれだ




言葉を聞くたびに頭がまっしろくなっていった。

意識はどんどん消え失せて

やがてぷつ、ととぎれた。










『いじめすぎだよ、雨郷』
灰色の瞳で見つめながら少し微笑む男は言った。

と、ぐにぐにと自分の指をいじっていた翠色の瞳を光らせた男は目を細めて笑う。
『屠ニィ。だってェ、見ただろお?可愛かったんだーァよぉ』
機嫌良さそうににこにこ笑う男に、金色の瞳の男はため息をついた。

『限度っつーもんがあんだろ』

『人如きにそんなものはいらん、影刀囉』

『人如き、かよ。尊兄』
馬鹿にするような発言をした赤瞳の男に、金瞳の男は冷たく言い返す。

『兄上殿…あまりそういうのは…』
不穏な空気を察した碧瞳の男は、諌めるようにいう。が、

『硬いなァ貴澄ぉ。そんなんじゃーァ選ばれないぞォ?』
まだ指をいじっていた翠瞳はからかうように言う。

『選ばれる気など毛頭ないので』
そんなことも気にせず言い返す碧瞳に、心配そうに声をかけるのは灰瞳。

『それでは死んでしまうよ、貴澄』

『屠兄様…それは…』
口ごもる碧瞳。

『それでも良いということだろう。まぁ、影刀囉よりはマシだな』

『口開くなよ尊兄。死ぬぞ』
二人の間に流れる殺気。それを面白そうに見つめる翠瞳。

『ヘェ!宣戦布告かァ?』

『しっ、みんな静かに』
翠瞳が口を開いた瞬間、灰瞳は何かに気づき、口元に指を置く。

『あーァ、来ちゃったなぁ』


5匹の視線の先にいたのは、舞蝶だった。















駄文申し訳ありません…

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