それでも僕はその愛を拒む

Kanon1969

協力者と妹の繋がり(花恋視点)

私は家から最も近い女子高に通っている。本来であれば兄さんと同じ高校に入学したかったが、勉学に対して必要最低限しか取り組んでいなかった私には兄さんの高校の基準となる学力を補う時間的余裕がなく、私は当初の自分の学力にあったこの女子高に入学した。

友達付き合いは上々で仲良くしている人間は結構多いが、その内の誰とも私は深くは付き合っていない、最低限友達と言えるであろう付き合い方、正直に言って友達付き合いなど面倒でしかない、だが中学等でのようないじめ紛いな事を招き、兄さんを心配させる訳にもいかないため仕方ない。

「のぉ花恋、この間おもしろい事があってな」

「読書してるんだから話しかけないでもらえる?」

今は昼休みで昼食を食べ終えた私は特にすることもなかったので、本を読んでいた。

「そう堅い事を言うな、友達の話には少しくらいは耳を傾けるべきだとは思わんか?」

「ちゃんと聞いてるわよ、あんた以外」

「妾の話とて聞いてくれても良いではないか、なにゆえそんな露骨な差別をするのか、はぁ花恋は冷たい人間じゃのぉ」

「うざ...」

そこに割り込んで話しかけて来たのは美麗という名前のクラスメイトで、最近何かと私に絡んでくる、こいつはこの喋り方と家が金持ちという事もあり、始めはクラスでも少し浮いていたが、現在はその異様に明るい性格で友達も多くいる。

「花恋が妾の話を聞いてくれるのであれば、しばらくは静かにしていてやろう」

ずっと静かにしていれば良いのに...というのも私は美麗とは友達としての付き合いは特にしていなかったのだが、勝手に向こうは私の事を友達と呼び、ここ最近、向こうからやたらと絡んで来るようになった。

「...で、なに、面白い事って?」

「それはな、最近おさない頃の友人に出会ってな、こいつが面白い事に周囲の女2名に望んでもいないのに付きまとわれ、日々苦悩していると言うんじゃよ、更にその付きまとわれ方も異様なものでな、妾はその友人の苦悩の解消に協力する事になったんじゃよ」

それの何処が面白い事なの?ただ面倒なだけにしか思えないんだけど、その友人とか言う人もそんなに苦悩するくらいならその2人に対して迷惑だから止めろとでも言えば良いじゃない。それともその2人ともその程度では手を引かないような人なの?

「私には面倒事にしか思えないんだけど」

「花恋は分かっておらんのぉ、こんな数奇な運命を背負わされた者は中々おらん、それを観察する事が出来るんじゃよ、面白いとは思わんか?」

「まるでよく分からないんだけど、やっぱり面倒なだけじゃない?」

数奇な運命などと言われても私にはよく分からない。それを観察できるから何だと言うのだろう?そもそも運命というものが何なのかが私には分からない。美麗は占いが趣味だと前に言っていたが、占いをする者には運命というものが何なのかが分かるのだろうか?

「面倒ではないぞ、まぁ確かに価値観というものは人それぞれじゃ、妾にとって面白いと思う事も花恋には面倒に思える事だって生じよう、しかしこう考えた場合はどうじゃろう、第一印象が面倒事でもそれが自らに利益をもたらすと考えた場合は?」

「...」

確かに自分に利益がもたらさせるという事であれば、純粋にただの面倒事とは思えなくなる。更にもたらさせる利益が大きければ大きい程に面倒事という印象は薄れていく事だろう。

「人とは常に利益を求め続ける生き物であると妾は思う、どんな時でも自分にとって最も都合の良い事を願ってしまうものであると、故に人は強欲であると言われるのではなかろうか?」

「...さぁね、だけど私は強欲である事が罪であるとは思わない、だって欲しいものは欲しいんだから仕方ないじゃない、私は絶対に欲しいものを諦めるつもりはないもの」

私はこれからもずっと兄さんと一緒にいたい、それが叶わないのなら死んだ方が遥かにましだ。故に自分が心より欲したものを諦めるなんて絶対に嫌だ。

確かに強欲がために人は過ちと呼ばれるものを生んでしまう事だって少なくない、だけど人とは常に過ちを繰り返した上で生きているのだから最早人が生きていく上で過ちとは必然的に起こりうる事象のようなものではないだろうか?故に強欲で何がいけない?私は思う、強欲故に人は過ちを犯し、強欲故に人は進歩してきたのだから、強欲である事を罪とするのならば人そのものが罪の塊ではないか。

だが、罪故に欲望を捨てろと言われたのならば、私は罪でも構わない。私はずっと兄さんと一緒にいたい。そのためであれば何だってする。

「クスッ、そうかそうか、実に面白い考えを花恋は持っているではないか、確かにそおじゃの、欲しいものは欲しいのだから仕方ないか...」

私の目の前で美麗は愉快そうに笑いながら、そう言った。私には何がそんなに面白いのか分からず、ただその笑い声が不愉快で仕方なかったが、何故か文句を言う気にはなれなかった。

ただ、やはりこれだけは聞いておきたかった。

「何がそんなに面白いの?」

「ん?何がって、そんな事は決まっておるではないか、花恋、お主も異端であるという事じゃよ」

異端?私が?でも...そうなのかもね、血の繋がりのある兄を本気で愛してしまったのだから...絶対に誰にも渡さない。

「さぁ、どうだろうね...」

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