やっと封印が解けた大魔神は、正体を隠さずに凡人たちに力の差を見せつけます ~目覚めた世界はザコしかいない~

魔法少女どま子

ルイスの部 【魔王の息子として】

 ルイス・アルゼイドは内心、緊張が止まらなかった。

 十七歳。
 童貞。

 いくら名門貴族の出自とはいえ、あらゆる経験に疎いルイスは、密室で異性と二人きりになるというシチュエーション自体初めてだった。

 だから心臓がバクバク高鳴りっ放しだった。いくら《魔王の息子》として取りつくろうが、美人を前にして緊張してしまうという悪癖はどうにもならない。

「まあ……! これがルイス様のお部屋ですか」

 数メートル先には、相変わらずのニコニコ笑顔で室内を見渡す転校生・ユイ。

 彼女も貴族身分だと言っていたが、さすがにルイスと比べれば位も落ちるだろう。まだ成人もしていない子どもが、一般の民家よりも大きな部屋を持っている……このことに対して驚くのも無理はない。

 だが……

「ルイス様。どうされました?」

「!?」

 気づけば、ユイは数センチ先の距離にまで近寄ってきていた。ルイスと同じく、ふかふかのベッドに腰を下ろす。

 内心のドギマギを懸命に隠しながら、ルイスは腕を組み、努めて低いトーンで言った。

「なんでもない。気にするな」

「……ルイス様。本当はここ、居心地悪いんじゃありません?」

「なんだと……?」

「失礼致しました。なんでもありません」

 そう言うと、ユイはすこしだけ尻の位置をずらし、ルイスと距離を置く。

 それから再びルイスに目を向けると、さっきとは打って変わり、やや切なさを帯びた瞳で話し始める。

「前述のように、私も貴族ですから、幼少期より所作や言葉遣いなど、細かいところまで教育を受けて参りました。……実に厳しい指導でした。嫌になったこともあります。どうして貴族などに生まれてしまったのだろう――と」

 言うなり、ルイスの片膝に手を乗せてくる。

「いくら高潔な血が流れていようとも、ルイス様も魔物の子です。嫌になることもあって当然ですわ。それを恥じることはありません」

「ユイ……おまえは……」

 ルイスはゴクリと唾を飲み込んだ。
 彼女のあどけなくも艶やかな肢体したいに、吸い込まれる上目遣い。女性としての部位もふくよかに強調されており、意識せずともそちらに目がいってしまう。

 彼女はこくりと小首を傾げると、赤い唇から、奏でるような音を発した。

「ルイス様は立派な魔物です。私は信じております。いつか必ず、ルハネス様の意志を継ぎ、時期魔王となることを」

「…………」

 ユイを魔王城に呼んだ目的は、ただひとつ。
 男としての格を上げるためだ。
 やはり魔王の息子たるもの、美女の一体やニ体も連れていないとみっともない。

 だから思い切って誘ってみたのだが、彼女がまったく抵抗しないどころか、こんなふうに誘ってくるとは思いも…… 

「ユイ……」 

 ルイスはユイの両肩を掴み、そのまま乱暴に押し倒した。

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