やっと封印が解けた大魔神は、正体を隠さずに凡人たちに力の差を見せつけます ~目覚めた世界はザコしかいない~

魔法少女どま子

スーパー転校生

 ――三時間目。数学。

「では皆さん。昨日渡したプリントを出してください」

「あ、やべぇオレ忘れた!」

 男子生徒のひとりが奇声を発する。

 そこで転入生・ユイが助け船を出した。

「大丈夫ですわ。私が二枚持っております」

「えっ……?」

「昨日先生からいただきまして。誤ってコピーしてしまったのですわ」

「あ、ああ……ありがとう」

 鼻の下を伸ばしながら、男子生徒はユイからプリントを受け取った。


 ――四時間目。近代歴史。

「えー、ではクローディア大陸における現在の首脳を、ムンク、答えなさい」

「えっ、僕ですか!? ん、んーと……」

 そこで隣に座る転入生・ユイがノートになにかしら記入を始める。それをムンクにちら見させた。

(クローディア大陸のトップはセレスティア皇女。ちなみに前王はエルノスですわ)

「あっ……わかりました! セレスティア皇女です!」

 堂々と答えたムンクに、先生はおおっと声をあげた。

「正解です。きちんと復習しているみたいですね。ちなみに前の王まで覚えていますか?」

「はい、前王はエルノスです!」

「ほほう。素晴らしい。これは評価しましょう」

(あ、ありがとう、ユイちゃん)
(いえいえ。とんでもありませんわ)

 微笑を浮かべるユイに、ムンクは鼻の下を伸ばした。




 ――昼休み。
「あ、やべぇ弁当忘れた!」
「ははっ、なにやってんだよ」
「ばーかばーか」

 じゃれあう男子生徒の固まりに、ユイがすっと入っていった。

「よろしければ、ご飯、差し上げましょうか?」

「えっ……」
 男子生徒が顔を赤らめながらユイを見上げる。
「でも、いいのか? そんなことをしたらユイちゃんの昼飯が……」

「構いませんわ。誤って二人分作ってしまいましたから」

「え、ユイちゃんの手作りですか」

「はい。口に合うかわかりませんが……」

「いえ、それはもう、喜んで食べさせていただきます!」



 ――五時間。体育。

「ああ、ユイちゃんのおっぱい揺れとる……」
「しかもでけえな……」
「可愛い……」


 転入生ユイの好評っぷりは、あっっという間に学園中に広まっていった。

 誰もが認める美人であり、スタイル抜群であり、さらには拍子抜けするほど気が利くときた。これで人気がでないほうがおかしいだろう。

 反して女子生徒たちの妬みが膨大に膨れ上がっているが、ユイ本人はまったく気になっていない様子だ。メンタルもかなり強いのだろう。

 そして放課後。

 ユイ見たさに他クラスの連中が一気に押し寄せてきた。五十人……いや百人を越える生徒たちが、教室の窓越しにユイを眺めている。

 ユイ本人といえば、他の男子生徒と談笑の真っ最中だ。

「す、すごい人気……」

 鞄の中身を整理しながら、コトネが目をぱちくりさせた。

 僕は彼女の机にもたれかかりながら、ひょいと肩をすくめる。

「まあ、男ってのは大概バカだからねえ。ほら見てよ、あそこにいるのみんな男だろう」

「ほ、ほんとだ……」
 やや呆れ顔になるコトネ。
「そ、そのエルくんはどうなの? 彼女に惹かれない?」

「えっ……?」

 まあ、かくいう僕も神殿で多くの美女たちを《見て》きた。
 そういう経験もあり、他の猿――もとい男たちほどユイに心躍らない。僕にとっては生涯の愛を契ったコトネのほうが大事である。

「……僕は約束を覚えるタイプでね。君のほうがよほど大事さ」

「も、もう……」

 そうしてコトネが顔を赤くした、その瞬間。

「あ、おい……!」
「あの方が来たぞ……!」

 まわりの生徒たちが一斉にざわざわし始めた。

 教室の周辺で固まっていた者たちが猛スピードで動きだし、魔物一体が通れるほどのスペースをつくる。

 ――なるほど、あいつが来たか……

 数秒後、僕の予想通り、魔王の息子――ルイス・アルゼイドが教室に姿を現した。

「やっと封印が解けた大魔神は、正体を隠さずに凡人たちに力の差を見せつけます ~目覚めた世界はザコしかいない~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く