異世界転生を司る女神の退屈な日常

禿胡瓜

第142話 「教育」

 
「リッカ、朝だよ」

「うへーおはようございますー」


 中途半端に寝てしまった為、最悪な目覚めだ。
 寝なければよかった。

 結界を解き、各自で朝の準備をする。


「ああそうだ。バケツのお水を馬に持って行ってもらってもいいかな」

「あれ、さっきグレンさん持っていきませんでしたっけ?」

「いやーそれがさ、ひっくり返されちゃって……。
 要らないんじゃなくて、たぶんそういうことなんだよね」


 あの馬……。


 重いバケツを持ってお馬さんに近づくと、嬉しそうに頭をブルブル震わせる。


「お馬さん! グレンさんの言うことも聞かないと、お水あげませんよ!」

(男の言うことは聞かない。水をくれないなら俺は動かない)


 う。馬に言い返されるとは思わなかった。
 思わずバケツを置きそうになるが、ここで退いたら一生下に見られる気がする。


「わ、わかりましたよ。
 じゃあここでお別れですね!」

(自由の身になれるのか。大歓迎)


 くそう。置いていかれるのが別に嫌じゃないだなんて。
 私だったら泣いてしまうのに。


「リッカー! フライパンを取り出してほしいんだけど-!」

「はぁい!」


 馬のすぐ近くにバケツを置く。


「次はそう簡単にいきませんからね!」


 私は今日、馬に敗北した。


 グレンは調理、パームは食材の下ごしらえ、私は言われた物を魔法庫から取り出すだけだ。
 消えかけの焚火で、薄い肉と『チョイ麦』の粉を練ったものを焼く。
 皿の上には、薄いパンのようなモノに包まれたお肉が並べられた。
 約束通り、私の肉は二枚だ。

 カリカリと朝食を食べ、すぐに出発の準備をする。


「今日の夜にはナーゲル村に到着する予定だ。
 昨日の夜の件もあるから、街道が安全とはいえない。
 僕は見張りの為に運転席にいるよ」

「はーい。じゃあ私は寝てようかなぁ」


 昨日の馬車移動は退屈だった。
 冗談でそう言ってみると、即座にパームに否定された。


「ダメよ。アナタ、攻撃魔法を知らないんでしょう。
 私が馬車の中でみっちり教えてあげるわ」

「あの戦い方じゃダメですかね……」

「ダメに決まってるわ。あんなの魔力のない馬鹿の戦い方よ。早死にするわ」


 パームちゃん、多くの武闘家を敵に回した。


「天空人は非殺傷主義じゃなかったっけ?
 攻撃魔法を扱えるのかい」

「『平和主義』よ。食べる為に動物を狩ることがあるわ。
 その為の攻撃魔法はあるけど、魔物相手には効果が薄いでしょうね」

「じゃあ、私は何をみっちり教えられるのでしょうか……?」


 パームが自分のリュックから何も書かれていない本を取り出した。


「魔法の創り方よ。
 アナタには自分に最適な攻撃魔法を自分で創ってもらうわ」

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