異世界転生を司る女神の退屈な日常
第117話 「深淵のアトラクション」
「どうだいお嬢ちゃん? 銀貨1枚で探索し放題だよ!」
「しますします!」
銀貨一枚をおじさんに手渡すと、火のついた蝋燭と持ち手が紙袋に入った太い棒状の食べ物を渡された。
とっても甘い香りがする。
「探索名物の『ベッピー』だよ。
片手で食べられるから探索の邪魔にもならない画期的な食べ物!
お友達にも教えてくれよ!」
「すごい!」
「すぐに外に出たくなったら、光る矢印をたどればいいさ!
あっという間に出口に辿り着ける!」
「了解です!」
「さぁいってらっしゃい! 内部への入口を見つけて栄光を掴むんだ!
ベッピーはここでしか売ってないから食べたくなったらまた来てね!」
「いぇーい!」
ノリノリで入口を通ると、後ろでバタンと扉が閉められる。
蝋燭の明かりで僅かに照らされる暗闇に放り出され、ふと気が付いた。
これってただのアトラクションなのでは……?
まぁ良い暇つぶしにはなるだろうと思い、カリカリのベッピーを齧りながら先に進んだ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
蝋燭の火はあっという間に消えてしまった。
普通の人なら最初に渡される蝋燭以外の明かりを持ってきていなければ、早々にリタイアになってしまうという仕掛けだ。
至る所にある矢印をたどればすぐに出口に辿り着けるのが救いだろう。
しょうがなく女神の眼を使おうと思ったが、思いとどまった。
あえて使わずに進もう。
新しい蝋燭を『想像』する。蝋が溶けない特注品だ。
薄暗い中を歩き続け、ベッピーを食べ終えた頃にやっとアトラクションの一番奥に辿り着いた。
いかにも何かありそうな四角い部屋。
脳内で今まで歩いてきた道をマッピングすると、抜け道はない。
絶対にこの部屋に何かある!
広さは少し贅沢な宿屋の部屋という感じだ。
8人くらいで寝泊まりするとちょうど良さそう。
一見何もない部屋なので、壁をペタペタ触りながら部屋を一周する。
残念ながら何も見当たらない。
それなら魔法の類だと思い、女神の眼を解禁する。
一気に明るくなった視界で、部屋中を隈なく睨みつけるが何もない。
まさかと思い、天井も見渡してみるが何の変哲もなかった。
ここまでしても見つからないということは……。
「騙されたー!」
内部への入口なんて端から無いのだ。
要するに本当にただの『アトラクション』。
確かに良い暇つぶしにはなったが、私の憧れを返してほしい。
落胆しながら四角い部屋から出ると、かび臭い匂いが鼻を突く。
この匂いはベッピーを食べていたから気が付かなかった。
この中を歩いて行かないといけないなんて、非常に億劫だ。
さっきの四角い部屋に閉じこもっていたい。
光る矢印に従いながら出口を目指していると、一つの疑問が生まれた。
そういえば、四角い部屋はかび臭くなかった。
トコトコと四角い部屋に戻り、匂いを嗅ぐ。
かび臭い匂いはあったが、別の匂いが混じっている。
「甘い……甘い香りがする!」
くんくんと、部屋中匂いを嗅ぎまわって匂いの元を探す。
甘い香りは、部屋の角の床からだった。
カリカリと爪を立てて床を引っ掻くと、僅かに『引っ掛かり』を感じる。
『引っ掛かり』に力を入れると……床の一部が横にずれた。
意気揚々と動く床をすべてずらすと、階段が露わになった。
階段を駆け下り、甘い匂いの元へ走っていくと……。
先ほどとは打って変わって明るい部屋に辿り着いた。
部屋の中央には、入口で受け取った物よりもずっとずっと大きな『ベッピー』
掲げられた横断幕には『栄光は君の手に!』と書かれていた。
良い暇つぶしになった。
栄光を持って帰ってアインちゃんに自慢しよう。
巨大なベッピーを魔法庫に入れずに抱え持つ。
来た道を引き返そうとすると、奥の壁の色が僅かに違う箇所があることに気が付いた。
これはここで終わりと見せかけて、本当の栄光がもう一つ隠されているというやつだ!
黒い壁に近づいてみると、勝手に壁が動いて道が現れた。
結構呆気なく道を示すんだなと思いながら、新しく出来た道を進み始めた。
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