異世界転生を司る女神の退屈な日常

禿胡瓜

第116話 「退屈凌ぎ」

 
 この世界の季節の流れがまったく分かっていなかった。
 森の様子などから見て、真夏だと思っていたが既に仲秋を過ぎていたらしい。
土竜モグラの巣』がある北の地は、冬が近い。
 旅の日程を考えて、ライン街を出発するのは……一週間後だ。

 普通なら旅の準備などに追われるのだろうが、私は必要な物をいつでも『想像』することが出来る為、必要なし。
 だから私は、この少ない出発までの時間を暇に追われていた。

 一週目通りから数多の店を駆け巡り、気になった物も食べ尽くしたが、まだ出発まで3日も残ってしまった。
 相変わらずグレンは書物を読み漁っているし、パームはしばらく店を開けることになるので、その処理に忙しそうだ。

 魔法を覚える気力も出ない私は、アインの作ってくれるおやつを貪るだけになっていた。


「アインちゃんー、暇で堪らないよぅ。
 なんか面白い事とかないんですかー?」

「お店も全部見てしまったんですよね?
 それならもうこの街を満喫し尽くしたことになります」

「そんなー。
 つい最近までは、途方もなく大きな街に見えたのになぁ」


 私がケーキを食べ終わるのを見計らって、新しい紅茶を注いでくれる。


「『大きい』といえば、この島にまつわる伝説を知っていますか?。
 この島は昔、宙に浮いている一つの建物だったらしいですよ。
 何らかの理由で海の上に落ちてしまい、しょうがなく海上に残った建物の外壁に街を築いたらしです」

「へぇ! じゃあ私たちは大きな建物の上に居るんですか! 感慨深いねぇ」

「面白いのはここからですよ。
 なんと、その建物……つまり島の内部への入口が冒険者ギルドにあるという噂です。
 内部への入口を探してみてはどうですか? 良い暇つぶしになりますし、見つけたら有名人ですよ」

「本当に? 有名人?」

「えぇ、有名人です」


 忘れていた『A級冒険者大魔法使いリッカちゃん』の血がたぎり始める。


「見つけるしかないですね、建物の入口」

「頑張ってください。
 夕飯時には戻ってきてくださいね。
 あと、銀貨1枚は絶対に持ってください」

「はーい!」


 紅茶を一気に飲み干し、席を立つ。
 こんなに面白そうな話があるなんて、もっと早くから知っておきたかった。

 屋敷を飛び出して、走ってすぐの冒険者ギルドに辿り着く。
 城の大きな扉を開けて、大きな広間を見渡す。
 目の前にある階段を昇れば、集会所になっている王の間に行けるが、建物の入口があるという雰囲気ではない。
 島の中を目指すならば……地下だ。

 ギルド宿屋の隣に、小さな脇道を見つけて先に進んでみると、睨んだ通り地下への階段があった。
 なぜか矢印の案内付きだ。

 暗い、狭い階段を降りていくと……。


「お! いらっしゃーい!」


 簡単な屋台とチープな扉の入口、『島の伝説を探れ! 入場料:銀貨1枚』という看板が掲げられていた。

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