異世界転生を司る女神の退屈な日常

禿胡瓜

第113話 「桃色ランチタイム」

 
「確かに、確かに協力するって言ったわ」


 太陽が空高く昇った頃、私はパームを連れてグレンの家の前に居た。


「アナタの仲間だとはいえ、いきなり人間の家でご飯を食べるってのはちょっと……。
 しかもお金持ちの人なんでしょ?
 すごくその、緊張するから心の準備とかが欲しいっていうか……」

「もしかしてパームちゃん、結構人見知りですか?」

「ち、違うわ!
 ただプライベートで誰かと接する機会があまりなくて……あまりないの!」


 パームに構わず、屋敷の門を押し開けて庭を進む。


「ちょっと待って!
 せめてココは誰の屋敷なのか教えてほしいわ」

「ココはグレンさんの屋敷です!」

「グレンって誰!?」


 困惑するパームを引き連れて屋敷の中に入った。


 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 食堂の長テーブルには、パームを含めて4人。
 右端に私、グレン、カイルの三人が居るのだが、なぜかパームだけ左端に一人で座っている。


「リッカ、屋敷の主はグレンって言ったじゃない」

「はい、言いましたね」

「なんで『税務官』のカイルが居るのよ」


 嫌そうな顔をしながらカイルのことを指さす。


「カイルさんはグレンさんのお父さんです」

「じゃあ屋敷の主は『カイル』じゃない!」


 パームが頭を抱えながら叫んだ。


「カイルさんって外交官じゃないんですか?」

「父上は税務官も務めているんだ。
 国が統一されてから外交官は仕事がほとんどないからね」


 そういえば税金がどうのこうのという話を聞いた気がする。
 意外とお仕事が多くて大変そうだ。


「リッカ、私はカイルに協力するなんて嫌よ。
 いつもしつこくお金を徴収してくるんだから!」

「仕事をしているだけなのだがね……。
 パームさん、今日は税務官としてではなく外交官として話をしたい」

「そんなの知らないわよ」


 二人の因縁は深そうだ。
 まぁ、話を聞く限りパームが一方的に嫌っているようだが……。


「とりあえずご飯食べましょう?
 せっかくの料理が冷めちゃいますよ!」


 各々がフォークを手に取る中、私はお皿を持って一人寂しそうなパームの隣へ移動する。


「アナタ、なんであの人たちと知り合ってるの?」

「魔物に襲われているところを助けてもらいました!」

「命の恩人ってワケね……」


 パームが顔近づけて小声で話す。


「正直乗り気じゃないわ。
 アナタ騙されてたりしないわよね?」

「グレンさん達はそんな悪い人間じゃないですよ。
 私自身、とっても里に行きたいんです!」

「分かった分かったわ。
 協力するけど、リッカの為なんだからね!
 アナタたち人間の為じゃないんだから!」


 パームがグレンたちにそう宣言する。


「だってさ父上。
 税金を減らすとか交渉しなくて良さそうだよ」

「それは助かりました。
 是非、よろしく頼むよ」

「ちょ、ちょっと待って! 前言撤回よ!
 税金を減らしてくれたら手伝う!」


 慌てて訂正するが、もう遅いようだ。
 グレンたちは満足そうな顔をしながら食事を楽しんでいる。

 あまり仲良くいかなそうだが、パームの協力を正式に取り付けることが出来た。

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