異世界転生を司る女神の退屈な日常

禿胡瓜

第106話 「夢の朝」

 
 ふと目を開けると、無機質な白い天井。
 窓からの明かりのせいか、やけに視界がぼやける。

 確か、グレンの屋敷に居たはずだが……。
 屋敷の天井はもっと華やかだった気がする。
 ここはどこだっけ?

 身体を起こそうとするが、鉛のように重く、動かせない。
 僅かに頭だけを持ち上げて部屋を見渡すと、頭のすぐ横に向日葵の入った花瓶が置かれていた。

 なぜかそれを見て、少しだけ安心する。

 瞼が重くなってきた。


 日差しが暖かい。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「ほ!」


 窓からの日差しに照らされて目を覚ます。
 鮮やかな花柄の天井が目に入った。

 ベッドの上には散乱した白紙と魔導書。
 昨晩、なにか魔法を覚えようと思ってベッドの上でゴロゴロしていたが、結局何もせずに寝てしまったようだ。

 寝間着姿のまま廊下に出ようと、扉が開いてグレンが顔を覗かせた。


「やあちょうどよかった。
 朝ごはん食べるよね。ライスとパン、どっちが良い?」

「ん、ライスでお願いします」

「分かった。
 少ししたら食堂に来てね」

「ふぁーい」


 グレンが扉を閉めると、廊下から入って来た良い香りに気付く。
 既にアインは朝食の準備を始めているようだ。

 まだ微睡む瞳をかきながら、大切な事に気が付いた。
 顔、洗ってなかった。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「ごちそーさまでした!
 やっぱり美味しいアインちゃんのご飯!」

「恐れ入ります」


 アインが私たちの食器を重ねて裏に入っていく。

 文字通り、食べようと思えばいくらでも食べられる、
 区切りをつける為に『おかわり』は3回までと決めたが、非常に口惜しい。


「よくそんなに食べれるね、リッカ。
 ご飯は腹八分目が一番だと聞いたことがあるよ」

「何言ってるんですかグレンさん。
 好きなだけ食べるのが一番に決まってるじゃないですか!
 それに『腹一分目』にもなってないですよ」

「これも彼女たちの『特性』か……?」


 カイルがしみじみと私のお腹を見つめてきた。


「紅茶淹れました」


 アインがカップを私たちの前においてくれる。
 すっきりとした香りのする紅茶だ。


「では、今日はこれで失礼しますね。
 代わりの者には引継ぎを済ませてあります」

「あれ? アインちゃんどこかへ行っちゃうんですか?」

「あぁ、今日は街で『研究』を……。
 そうだ。アイン、リッカも連れてってみないか?
 大食いだから役に立つんじゃないかな?」


 食堂から出ようとしたアインが戻って来る。


「ちょっと失礼します」


 そういって、私のお腹をペタペタと触った。


「あれだけ食べたのにお腹が真っ平。
 凄まじい排泄速度……!」

「い、いや、出してないです!」

「では一体どこへ……。
 まぁ良いです。是非お手伝いをお願いしたいです」


 美味しいごはんを食べさせてくれる人のお願いを断れるワケがない。
 困惑しながらも、うなずいて了承した。


「で、でも何をするんですか?」


 グレンが紅茶を飲んでいた手を止め、ぽつりとつぶやいた。


「『冒険』……かな」

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