異世界転生を司る女神の退屈な日常

禿胡瓜

第50話 「活気付く港街」

 ライン街が世界の中心になるほど発達したわけは、その地形にある。
 文字通り、世界の中心に存在する『島』にある街だからだ。
 大陸から大陸へ移動するより、ライン街を中継したほうが早い。
 商人が、冒険者が、多くの者がライン街を訪れる。
 通常、魔物がやってくることはなく。翼を持つ魔物も海を越えることは難しい。

 ライン街があるカリーカ島へ向かう船は、限られた港からしか出航しない。
 その一つが、『ナイーラ港』だ
 つまり、必然的にナイーラ港も大きな街へと発展した。

 入口で馬車から降ろしてもらい、グレンと共に地に足をつける。
 通りに沿って、赤いレンガの建物が並び、その一つ一つが商店のようだ。
 ずっと奥のほうには青い海が見え、多くの船が行き来している。


「すっごーい!」

「ナーゲル村よりもたくさんの人が居るだろう?」


 確かにその通りだ。
 ナーゲル村とは比べ物にならないくらい、たくさんの人間がいる。
 こんなにも生き生きとした街を見るのは初めてだった。
 天界にも多くの神々が存在し、建物もたくさんあったが
 活気がなく、今思えば寂しいところだった。
 たぶんそれは、天界には『商売』がなかったからだろう。
 ほとんどの物を『想像』で創れてしまうからだ。
 だからこそ、自分が『想像』できない物が売られている商店がとても気になった。


「あの、お店……見ちゃダメですか?」

「うーん。
 先に荷物を宿屋に置いてきてからのほうが良いかな?」

「すぐに出航しないんですか?」

「これだけ多くの人が居るからね。
 二、三日は滞在すると思うよ」


 これは朗報だ。
 すぐに船に乗ってしまうのかと思っていた。
 短くても二日間、この街を堪能できるなんて嬉しい。

 グレンに連れられ、商店通りを歩く。
 たくさんの店に目移りしながらグレンの背中を追い
 海がすぐそばにある建物に入った。


「ちょっと待っててね」


 グレンが宿主と話している間、部屋の内装を見渡す。
 外壁がレンガでも、中からは木製のように見える。
 どうやって建物を建てたのか想像ができない。
 木で建ててからレンガで囲んだ?

 そんなことを考えていると、何か甲高い音が鳴り響く。
 グレンが何かを落としたようだ。
 コロコロと側に転がって来た小さな丸い金属を拾い上げ
 寄って来たグレンに手渡す。


「ごめん、ありがとう」


 グレンは私から受け取った金属を宿主に手渡した。
 あぁ、なるほど。
 あれはこの世界のお金なのか。
 魔力と同じように、お金を消費して対価を得る。
 商売の基本だ。
 つまり、お金が無ければ物を買うことも、宿に泊まることもできないわけで……。
 この世界に来てからの食事や宿はすべてグレンが手配してくれたものだった。

 冒険者というのがどれだけ稼げるのかわからないが
 旅をするのはかなりの費用が掛かるはずだ。
 私という存在が一人増えただけで、その費用は倍近くなるだろう。

 宿主と話を終えたグレンが笑顔で近づいてくる。


「よかった。ちょうど部屋が残り二つだったよ」

「あのグレンさん、その私、今まで何もお金を払ってないわけで……」

「あぁお金のことは気にしなくていいよ。
 不自由してないんだ」


 その言葉に少しだけ救われる。
 だけど、もしかしたら無理に言っているのかもしれない。
 そうでないとしても、ずっと頼りにするわけにはいかない。


「や、でも、いつまでもお世話になるのは良くないです」

「そうかい?
 それじゃあ、今どれくらいお金を持ってるかな?」

「えー……ないです……」

 そもそも、通貨の存在をすっかり忘れていた。
 びっくりするほど無一文だ。
 一銭も持っていない。

 グレンに出会っていなければ私はどうなっていたのだろうか。
 路頭に迷う姿を想像して恥ずかしさに俯く。


「それならお金を手に入れないといけないね」

「でも、私、何もできないです」

「君には素敵な魔法があるじゃないか?
 創れば良い」


 お金を『想像』で創りだすことは容易い。
 だが、それは間違ってると思う。
 天界風に言うと、善良ポイントが減ってしまうと思う。
 私は私が正しいと思う生き方をしたい。


「お金を創るのはいけないと思います」

「そうか!その手もあったか!」


 グレンが手を叩いて驚く。
 考えてたこと違うんですか。


「服でも創って売れば良いんじゃないかなと考えてたんだけどね」



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