異世界転生を司る女神の退屈な日常

禿胡瓜

第25話 「天界の下に皆平等」

 

 …………おかしい。



 女神リッカは本日5回目の転生し、仕事を終えた。
 いつもなら30回の転生を目安にするのだが、今日は終えるしかなかった。
 魔力が切れそうなのだ。
 その理由は、今日リッカの元に来た生き物がすべて500ポイント持ちだったからである。

 どんなユニークスキルであっても、与える前にまずは作成しなければならない。
 作成するときに消費する魔力の量が尋常じゃないくらい多いのだ。


 そもそも、数十年に一度くれば良いほうの500ポイント持ちが続けてくるのがおかしい。
 運が良すぎるにもほどがある。


 ここまで考えて、一つの結論に達した。
 昨日発動した『幸運を呼び寄せる魔法』の効果が切れていないのでは?


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 エリカはまだ仕事を終えてないだろう。
 そう考え、一人で研究課の食堂に来ていた。
 研究課で働いているであろう女神を見つけ、声をかける。


「あの、すみません。昨日のメニューにあった『殺戮葡萄』ってまだありますか?」

「えぇ、まだありますよ」

「じゃあ、一つ貰ってよいですか?」

「えぇ……。またあれ食べるんですか?」


 そういうと、女神は食堂の奥に入っていった。
 リッカはテーブルに着き、『殺戮葡萄』の到着を待つ。
 私の記憶にある限り、魔法の効果が一番に現れていたのがあの葡萄だ。
 あの葡萄を3つ連続で甘い物を食べることが出来たら、魔法の効果は切れてないと考えてよいだろう。

 先ほどの女神が皿の上に『殺戮葡萄』を乗せ、やって来た。


「運が良かったですね。研究の為に使用されて、残り一個しかありませんでしたよ。
 もう食べられないと思ったら、また声をかけてください」


 コトッとテーブルの上に『殺戮葡萄』が置かれる。
 この葡萄の辛さを知ってから見ると、なんとも毒々しい赤色だ。
 一粒手に取り、恐る恐る口に運んだ。


 …………甘い。
 甘々だ。

 二粒目、三粒目と口に運ぶ。
 甘くておいしい。
 だが、今日はそれが逆に不安になる。


 なぜ、魔法の効果が切れていないのか?


 魔法の効果というものは、時間経過、集中が切れる、または自分の意思で解除することができる。
 私の場合、半日以上経過、睡眠も取った、そもそも魔法のことを意識していない。
 魔法の効果がなくなっていないとおかしいのだ。

 もしかして、全部甘い実なのではないかと思い、もう一粒口に運ぶ。

 ……そんなことはなかった辛い!


 水で舌を冷やしながら考える。
 幸運であることは悪くない。
 だが、魔法で幸運を呼び寄せるのは何か違う気がする。
 卑怯だとか、ずるいだとか、そんな感じだ。
 この葡萄だって、甘い粒を必ず食べられるのは幸運なんかじゃない。
 何が起こるかわからないからこそ、それが幸運であり、幸せなのだ。
 幸運は、すべての生き物に平等でなければいけない。

 この魔法は使うべきじゃなかった。何とかしてこの魔法を止めよう。
 そう考え、席を立つ。

 私は、どんな時でも救いの手を差し出してくれる人物に会いに行った。

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