異世界転生を司る女神の退屈な日常

禿胡瓜

第18話 「相手のことは見た目で判断していました」

 中央局、転生課、白い白い廊下。
 左右には木の扉が並んでおり、その一つ一つに番号が振られている。
 その果てしなく続く長い廊下を一人の女神が歩いている。


「ふーん、この世界はマナで構成されており…?魔力のことかな?」


 女神リッカは、図書館で借りた魔導書を見ながら仕事場へ向かっていた。
 チラッと扉の番号を確認すると、1002,1003,1004……


「えーっと、魔法陣は空気中のマナを集め、法則に従って宙に浮かべる…。こうかな?」


 リッカは指先に魔力を集め、空間に留まらせようとするが
 魔力はすぐに分散してしまい消滅する。


「魔法陣を覚える前に、こっちのほうを練習しないとなぁ…。」


 リッカは本とにらめっこしながら自分の部屋に入っていった。



「ん……。」

「…ん?」


 暗闇に包まれた私の仕事場。
 私以外いないはずの空間から声が聞こえ、本から目を上げた。

 椅子が二つ並んでおり、片方に水色の羽衣を着た天使が座っていた。
 部屋に入ってきた私のことをジトッとした目で見てくる。
 迷子だろうか?
 普通、天使は中央局、特に転生課に出入りをすることはない。
 ここはしっかりと女神らしく彼女を導いてあげよう!


「えへん。どうしてここにいるのかな~?
 ここはお姉さんたちの仕事場だから入ってきたらダメなんだぞ~?」

「ん…。突然入ってきたと思ったら偉そうなヤツなのです。」


 あれ?
 天使ってもっと可愛げがなかったっけ!?


「む…。て、天使は今学校に行ってないといけない時間だよ?
 サボるのは良くないってお姉さん身をもって知ってるよ!」

「……なんかコイツ失礼な勘違いをしてるようなのです。」


 水色の天使は椅子からぴょんっと飛び降り、リッカに近づいてきた。
 あぁ小さい。私のおなかくらいしか身長がない。
 その天使は、扉をガチャっと開け「ん…。」と指をさした。


「あっちに帰りたいの?」

「…おめでたいヤツなのです。番号番号。」


 天使に言われ、扉に彫られた番号を見てみる。
 ここは私の部屋なんだから1115の番号がそこに……。
 ……1151。
 私の部屋じゃない…。

「……え、えーっと。」

「ここはボクの部屋、ボクの仕事場なのです。
 アナタは自分の番号の部屋に入ることもできない天使以下の知能なのですか?」


 ぐっ…。
 言い返せない。


「ご、ごめんなさぃ…。」

「ん…。大方、本に夢中で間違って入って来たのです。
 仕事の邪魔なのでとっとと出てくのです。」


 水色の天使…。いや、女神なのであろう。
 水色の小さな女神に部屋を追い出される。


「歩き読書。ダメ。絶対。」


 バンッと扉が閉められる。


 ……
 なんとも虚しい。

 私も早く仕事して、新しい娯楽を天界に作ってもらわないと。


 リッカは、自分の部屋の番号を何度も確認して持ち場に着いた。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 仕事を終えたリッカとエリカは、食事をしてから図書館に来ていた。
 リッカが魔法陣を描く練習の参考になる本がないか探しに来たのだ。


「ほら、これなんかどうだ?」


 エリカが取り出した本は、比較的綺麗な魔導書だった。


「子供向けの魔導書みたいだね。どれどれ…。」


 魔法の基礎について書かれたその本は、魔法陣を書く練習にも使えそうだ。
 リッカ達はほかにも何冊か手にして席についた。


「それで?どうして今更魔法を覚えるんだ?」

「私もエリカちゃんの護身術みたいにモノを覚えたいな~って思ってさ。」

「だからって、こんなめんどくさい魔法を覚えなくてもアタシ達はイメージしただけで使えるだろ?」

「ふふん、それには深いわけがあるのだぁ~!」


 リッカはパラパラと魔導書をめくり、ある魔法陣の載ったページを見せる。


「エリカちゃん、これやってみて。」


 リッカが見せたページの魔法は『筋力強化』
 対象の筋力を強化し、運動能力を増すことができる魔法だ。


「よっしゃまかせろ。」


 エリカは衣の袖を捲り、右腕を露わにする。
「ふんっ。」と魔力を込めると、エリカの腕がムキムキと筋肉質になる。


「どうだー!」

「気持ち悪い!」

「ひどい!」


 エリカは恥ずかしそうに腕を元に戻した。

「私の思った通りだねエリカちゃん。」

「何がだ?」

「『筋力を強化』と聞いてイメージするのがムキムキってことだよ。
 じゃあエリカちゃん。次はムキムキにならないで筋力強化の魔法をやってみて?」


 エリカはしぶしぶと魔法の準備をする。
 少しの間考えてから魔力を込める。
 エリカの腕には何も変化が訪れない。


「…できた?」


 リッカの問いかけに、エリカは指をちょいちょいと手招きをする。
 近づいたリッカの頭をエリカは小指で叩いた。
 ゴンッと鈍い音がして、リッカは机に頭を打ち付ける。


「イッタイ!イタイッ!本当に痛い!」

「はっは。さっきのお返しだぜ。」


 リッカは涙目になりながら、おでこと頭をさする。


「私にはね、それができないの。
 ムキムキにはできるけど、ムキムキにならずに筋力強化ができない。」

「魔力はあるのに頭が悪いのか?」

「違う~!イメージするのが苦手なの!」


 リッカはエリカのおちゃらけに夢中で反論したため、近づく者に気づいていなかった。


「ん…。そこの二人さっきから五月蠅いのです。
 図書館は静かに本を読むところなのです。」


「は、はい。ごめんなさい!…って。」


 そこに居たのはリッカが間違って入った部屋の主
 水色の小さな女神だった。






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