異世界はチートなカードで乗り切ろう!?
66.VS 5年生チーム 前編
個人戦が終了した翌日から3日間、学年対抗の団体戦が開始された。団体戦は3人1組で行われ、先に2勝した方が勝ちとなっている。
2年生チーム、3年生チームにはムルドフとシストリナだけで勝利できたが、4年生チームにはハルトも出ることになったが、無事勝利した。
『今年は大波乱のまま最終日を迎えております!1年生チームが例年にない練度で上級生に喰らいつき勝利を収めています!最高学年の5年生は果たしてこれを止められるのでしょうか?!』
学園が始まってから前例のない1年生チームによる下克上は観戦者達に熱狂をあたえる。
例年通りであれば、新入生はこの場で上級生との格の違いを見せつけられ、自分達もいつか先輩と同じ強さを…そう思い、学園で日々努力していくはずだった。
しかし、今年はハルトとシストリナという規格外とそれに鍛えられた1-Sクラスの面々によって例年通りとは行かなかった。
そして、開始線には先鋒のサカキとムルドフが立っていた。
「両者見合って!……試合、開始!」
両者は開始と共に【魔纏い】を発動し素早く間合いを詰め始めた。
試合が開始されたちょうどその頃、ハルトは控え室でラヴァールと話していた。
「いやぁまさかここまでとはね。ハルトくんちょっと強くしすぎじゃない?」
「いえいえ、これでもまだ騎士団の小隊長たちには敵わないのでそこまでじゃないですよ」
「数ヶ月で並の騎士じゃ太刀打ちできないほど底上げする方が異常なんだけどな…」
「色々と手を入れましたからね。これくらいにはなりますよ。ちなみにフィレリアさんがやった場合は今の状態より強くなれますが、体より心が先に限界をむかえますよ」
「何をどうしたらそうなるのか想像がつかないね」
「そりゃもう恐ろしいところに放り込まれてひたすら戦闘ですよ。不眠不休でいつ襲ってくるかも分からない魔物に怯えながら三日三晩過ごすんですよ」
「それは遠慮願いたいね…」
ラヴァールさんは思っていたよりもハードな内容を聞いてドン引きしていた。まあ、これ以上に酷いのもあるんですけどね。それは言わない方がいいだろう。主に僕の精神を守るためにも。
「それにしてもサカキは少し力をセーブしていないかい?」
ショックから立ち直ったラヴァールが中継画面を見てそう言った。
「そうですね。普段よりも剣にキレがないように見えます。様子見しているみたいですね」
「普段ならそんなことするような人間じゃないと思うんだけど」
後輩だから最初は手加減しているのだろうかとラヴァールが言っているが、ハルトは油断させてから一気に叩くためにやっているのではと思っている。
そしてその読みは当たらずとも遠からず、といった感じだった。
サカキと何度も打ち合っているムルドフは妙な違和感を覚える。
あのアルフォード家の長男が俺と同じくらいの強さなのか?手を抜かれてる…のか?
アルフォード家はその立地上、有事の際に領主自らが戦えるように小さい頃から教育される。しかし、今戦っているサカキはそういった教育を受けたとは思えないほどに剣にキレがなかった。
…舐められてるってより探られてるって感じだな。少しずつ速度もキレも上がってきてる。それに、キレがないだけで構えは気持ち悪いほど綺麗だ。
ムルドフは隙のない構えから繰り出される微妙なキレの攻撃というギャップに苦しんでいた。
一方で、サカキは心の中でハルトに毒づいていた。
何をどうしたらここまで強くできるんだか…予想以上に手強くなっているせいで僕も攻めにくい。とはいえ最上級生として負ける訳にはいかないし、そろそろ攻め方を変えてみようか。
 サカキは自身にかけていた枷を1つ解除する。それだけで相対していたムルドフだけでなく観戦していた者ですら分かるほど動きが変わった。
これまでの剣撃を繰り出していた人間と同一人物だとは思えないほど、その一撃は速く鋭くそして重くなっていた。
「今ので仕留められないのか。自信なくしちゃうな」
ギリギリのタイミングとはいえ切り替え直後の一撃を耐えられたため悲しげにそう言った。
「ハルトの剣を受けていなければやられていましたよ」
 先輩であるため、普段の粗暴な言葉遣いではなく丁寧な言葉遣いでそう答えた。
「ああ、そうだったね。ハルトのはもっと速いし重いか。弟に負けてるのもなかなか堪えるなぁ…先輩面するためにも尚更負けられないじゃないか」
実戦経験の量が自分達よりも圧倒的に上の最高学年で、さらにあのアルフォード辺境伯家の長男ともくれば下手な鍛え方はしていないだろう。もちろんムルドフも子爵家の嫡子であるため相応の稽古は積んでいるが、辺境伯家とは比べ物にならないほど低いレベルである。いくらハルトの特訓をしているとはいえこれまでの積み重ねの量が違うためこれ以上の攻撃に対応するのは難しい。
今も剣とメイスで打ち合っているが、ムルドフの振るうメイスが剣に弾かれている。両者には圧倒的な重量差があるにもかかわらず、そうなっているのは【魔纏い】の練度の差である。重さ以上に力の差が激しいのだ。
きっとこの一撃で決めてくるつもりなのだろう。これまでより一層速いスピードで迫ってくる。ムルドフは相手が近付けないように魔法による弾幕を作るが、サカキは魔法を切り裂きながら進んでくる。
魔法が切れるってことは武器にも【魔纏い】をやれるってことか…こりゃ一朝一夕じゃ追いつけねぇな。それに、こんだけやり合ってるのに息を荒くしてる様子もねぇ。アルフォード家だからなのか最上級生だからなのかはわかんねぇけど…
そう思いながら攻撃に対処しようとして吹き飛ばされた。一瞬何が起きたのか分からないまま壁にぶつかる手前でメイスの柄を地面に突き立て踏みとどまった。
「な、何が…?」
「あれ、ギリギリ耐えたのか…ますます嫌になってきちゃうな。でももう1回やればさすがにいけるよね?」
サカキがやったのは剣で切ると見せ掛けて風魔法で相手を吹き飛ばすというシンプルなものだった。
何をやられたのか全くわかんねぇ!もう1回こられたら今度は確実に壁にたたきつけられる!
相手が何をやったのかわからずとにかく接近されないように動き回ろうとしたが、ムルドフの体力は限界に近く足がもつれてしまった。
「しまっ…」
サカキがその隙を見逃すはずもなく、ムルドフの頭上に剣先を突きつける。
「そこまで!勝者、サカキ!」
勝敗が決した瞬間、大歓声がわき起こる。
『決まったぁぁぁぁぁぁぁぁ!勝敗を分けたのはやはりこれまでの経験の差でしょう。とても素晴らしい戦いでした!続いて、中堅戦に移りたいと思います』
お久しぶりです。内容が上手くまとまらず、ズルズルと引きずっていたら1ヶ月ほど空いてしまいました…申し訳ありません。先月3話投稿したのに今月は1話なので平均すると2話になるんでいつも通りですね!!!!!(おい)
お気に入り登録者様が259人、いいねが508件になりました。ありがとうございます!
誤字脱字等ありましたらご報告してくださると嬉しいです。書いてるとなかなか気づかないので…
2年生チーム、3年生チームにはムルドフとシストリナだけで勝利できたが、4年生チームにはハルトも出ることになったが、無事勝利した。
『今年は大波乱のまま最終日を迎えております!1年生チームが例年にない練度で上級生に喰らいつき勝利を収めています!最高学年の5年生は果たしてこれを止められるのでしょうか?!』
学園が始まってから前例のない1年生チームによる下克上は観戦者達に熱狂をあたえる。
例年通りであれば、新入生はこの場で上級生との格の違いを見せつけられ、自分達もいつか先輩と同じ強さを…そう思い、学園で日々努力していくはずだった。
しかし、今年はハルトとシストリナという規格外とそれに鍛えられた1-Sクラスの面々によって例年通りとは行かなかった。
そして、開始線には先鋒のサカキとムルドフが立っていた。
「両者見合って!……試合、開始!」
両者は開始と共に【魔纏い】を発動し素早く間合いを詰め始めた。
試合が開始されたちょうどその頃、ハルトは控え室でラヴァールと話していた。
「いやぁまさかここまでとはね。ハルトくんちょっと強くしすぎじゃない?」
「いえいえ、これでもまだ騎士団の小隊長たちには敵わないのでそこまでじゃないですよ」
「数ヶ月で並の騎士じゃ太刀打ちできないほど底上げする方が異常なんだけどな…」
「色々と手を入れましたからね。これくらいにはなりますよ。ちなみにフィレリアさんがやった場合は今の状態より強くなれますが、体より心が先に限界をむかえますよ」
「何をどうしたらそうなるのか想像がつかないね」
「そりゃもう恐ろしいところに放り込まれてひたすら戦闘ですよ。不眠不休でいつ襲ってくるかも分からない魔物に怯えながら三日三晩過ごすんですよ」
「それは遠慮願いたいね…」
ラヴァールさんは思っていたよりもハードな内容を聞いてドン引きしていた。まあ、これ以上に酷いのもあるんですけどね。それは言わない方がいいだろう。主に僕の精神を守るためにも。
「それにしてもサカキは少し力をセーブしていないかい?」
ショックから立ち直ったラヴァールが中継画面を見てそう言った。
「そうですね。普段よりも剣にキレがないように見えます。様子見しているみたいですね」
「普段ならそんなことするような人間じゃないと思うんだけど」
後輩だから最初は手加減しているのだろうかとラヴァールが言っているが、ハルトは油断させてから一気に叩くためにやっているのではと思っている。
そしてその読みは当たらずとも遠からず、といった感じだった。
サカキと何度も打ち合っているムルドフは妙な違和感を覚える。
あのアルフォード家の長男が俺と同じくらいの強さなのか?手を抜かれてる…のか?
アルフォード家はその立地上、有事の際に領主自らが戦えるように小さい頃から教育される。しかし、今戦っているサカキはそういった教育を受けたとは思えないほどに剣にキレがなかった。
…舐められてるってより探られてるって感じだな。少しずつ速度もキレも上がってきてる。それに、キレがないだけで構えは気持ち悪いほど綺麗だ。
ムルドフは隙のない構えから繰り出される微妙なキレの攻撃というギャップに苦しんでいた。
一方で、サカキは心の中でハルトに毒づいていた。
何をどうしたらここまで強くできるんだか…予想以上に手強くなっているせいで僕も攻めにくい。とはいえ最上級生として負ける訳にはいかないし、そろそろ攻め方を変えてみようか。
 サカキは自身にかけていた枷を1つ解除する。それだけで相対していたムルドフだけでなく観戦していた者ですら分かるほど動きが変わった。
これまでの剣撃を繰り出していた人間と同一人物だとは思えないほど、その一撃は速く鋭くそして重くなっていた。
「今ので仕留められないのか。自信なくしちゃうな」
ギリギリのタイミングとはいえ切り替え直後の一撃を耐えられたため悲しげにそう言った。
「ハルトの剣を受けていなければやられていましたよ」
 先輩であるため、普段の粗暴な言葉遣いではなく丁寧な言葉遣いでそう答えた。
「ああ、そうだったね。ハルトのはもっと速いし重いか。弟に負けてるのもなかなか堪えるなぁ…先輩面するためにも尚更負けられないじゃないか」
実戦経験の量が自分達よりも圧倒的に上の最高学年で、さらにあのアルフォード辺境伯家の長男ともくれば下手な鍛え方はしていないだろう。もちろんムルドフも子爵家の嫡子であるため相応の稽古は積んでいるが、辺境伯家とは比べ物にならないほど低いレベルである。いくらハルトの特訓をしているとはいえこれまでの積み重ねの量が違うためこれ以上の攻撃に対応するのは難しい。
今も剣とメイスで打ち合っているが、ムルドフの振るうメイスが剣に弾かれている。両者には圧倒的な重量差があるにもかかわらず、そうなっているのは【魔纏い】の練度の差である。重さ以上に力の差が激しいのだ。
きっとこの一撃で決めてくるつもりなのだろう。これまでより一層速いスピードで迫ってくる。ムルドフは相手が近付けないように魔法による弾幕を作るが、サカキは魔法を切り裂きながら進んでくる。
魔法が切れるってことは武器にも【魔纏い】をやれるってことか…こりゃ一朝一夕じゃ追いつけねぇな。それに、こんだけやり合ってるのに息を荒くしてる様子もねぇ。アルフォード家だからなのか最上級生だからなのかはわかんねぇけど…
そう思いながら攻撃に対処しようとして吹き飛ばされた。一瞬何が起きたのか分からないまま壁にぶつかる手前でメイスの柄を地面に突き立て踏みとどまった。
「な、何が…?」
「あれ、ギリギリ耐えたのか…ますます嫌になってきちゃうな。でももう1回やればさすがにいけるよね?」
サカキがやったのは剣で切ると見せ掛けて風魔法で相手を吹き飛ばすというシンプルなものだった。
何をやられたのか全くわかんねぇ!もう1回こられたら今度は確実に壁にたたきつけられる!
相手が何をやったのかわからずとにかく接近されないように動き回ろうとしたが、ムルドフの体力は限界に近く足がもつれてしまった。
「しまっ…」
サカキがその隙を見逃すはずもなく、ムルドフの頭上に剣先を突きつける。
「そこまで!勝者、サカキ!」
勝敗が決した瞬間、大歓声がわき起こる。
『決まったぁぁぁぁぁぁぁぁ!勝敗を分けたのはやはりこれまでの経験の差でしょう。とても素晴らしい戦いでした!続いて、中堅戦に移りたいと思います』
お久しぶりです。内容が上手くまとまらず、ズルズルと引きずっていたら1ヶ月ほど空いてしまいました…申し訳ありません。先月3話投稿したのに今月は1話なので平均すると2話になるんでいつも通りですね!!!!!(おい)
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