異世界はチートなカードで乗り切ろう!?

田中 凪

65.ハルト VS シストリナ

『一年の部もいよいよ決勝戦です!今年の1-Sはレベルが高く、他学年の先輩方が偵察に来ております!決勝ではこれまで危なげなく勝ち進んできた学年1位と2位の対決となります!一体どれほど激しい法撃戦となるのでしょうか?!想像しただけで興奮が押えきれません!!』
司会が観客を煽り盛大な歓声が起こる。
「両者見合って!……試合、開始!」
開始されると同時にハルトは【空間魔法】を使用する。シストリナ相手に【空間魔法】無しに勝てるとは思っていなかった。
「ズルくないかしら?!」
「リナも【魔眼】を使っているのでお互い様ですよ!」
観客達は序盤から、これまで見てきた以上に高度な駆け引きを目の当たりにし、異常に強い新1年生が多い理由を悟った。
シストリナは【魔眼】で魔力の流れを見て、ハルトの転移してくる場所に魔法を放っている。一方のハルトはそれをギリギリ防御しながら反撃をする。
シストリナもハルト程ではないにしろ魔力量、制御力はそこらの教授達では比にならないほど高く、お互いに攻めきれないまま気がつけば5分以上も法撃戦をしていた。
そんな激しい攻防をクラスメイト達は食い入るように見ていた。

「あの2人がガチでやり合ってるところ初めて見た…」
ムルドフがポツリと呟くと、近くにいたリヴィアも同意する。
「そうね。1度に展開してる魔法の数が私達と模擬戦している時の2倍以上はあるし、バリエーションも多いわ。私の父さん以上に魔法を使いこなしてるわね。ハルトが『少し本気を出すのでよく見て参考にしてくださいね』とか言ってたけど次元が違いすぎて無理ね…」
「そうだな。魔力操作精度が前に比べて格段に上がったから分かるようになったが、あの2人と同じようなことをしようとしたら暴走おこして死んじまう」
力が着いてきたからこそあの2人のいる高みにはまだ全然届いていないのだとわかりなんとも言えない気持ちになった。
「ま、アイツは俺らよりも長く鍛錬してるんだし追いつけねぇのは当たり前か。っと、ハルトが仕掛けるぞ!」

数分ほど激しい法撃戦していたハルトは今の力の解放率で勝つための方策を思いついた。
攻撃を中断すると球形の魔法を自分を囲うように生成させた。そして、勢いをつけてシストリナの方へ突撃して行った。
いきなりの奇行に驚きつつも魔法を使って止めようとするが、放った魔法は弾かれ足止めの魔法はことごとく破壊された。
「ちょっ、それはズルくない?!」
更には回避してもハルトが制御しているのか逃げた方向に追ってくる。
「いえいえ、ズルはしてないですよ。単純に【空間魔法】で異空間を作ってるだけですから」
ありとあらゆる魔法を無効化している上に【空間魔法】を扱える人間がハルト1人であることもあり、他の人間にはとても真似できない。これはもうズルいと言われても仕方がなかった。
「いいわ。その魔法を破壊してあげる」
シストリナはそう言うと火を拳に纏い、逃げずにタイミングを見計らう。そして、魔力の膜が薄いところに向かって拳を突き出す。すると『バキッ』と音を立てて砕け散った。しかし、シストリナは違和感を覚える。他人の暴走した魔力を汗1つかかずにコントロールし、収めることができるようなハルトが魔力を均一に流せないわけがない。
「…まさか?!」
「そのまさかですよ。はい、チェックメイトです」
気がついた時にはシストリナの喉元に刀の刃先が突きつけられていた。
「そこまで!勝者、ハルト!」
審判がそう宣言すると会場に大歓声が響く。
1年の試合にしてはかなりハイレベルな戦いであり、見に来ていた先輩は戦慄していたという…



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今年中には闘技祭を終わらせる予定でいます。

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