攻略対象外だけど、好きなんです!
23 「落ちた桃」(4)
しばらく不在にしてしまい、申し訳ありませんでした!!
これからも不定期ですが、ちょくちょく更新していこうと思います。
これからも見てくださると嬉しいです!
「……着替え、終わった?」
 私は今、菜々香ちゃんの部屋にいる。
 あの後、桃を追いかけ池に落ちた私のところへ、偶然菜々香ちゃんが通りかかったのだ。
 そして、あれよあれよという間に菜々香ちゃんのお部屋で着替えさせられている。
 ……菜々香ちゃん、以外と面倒見がいいのかな…?
「はい。ありがとうございます。お陰で助かりました。」
「雪月さんの役に立てたなら嬉しい。…でも、そろそろ行かないと。」
「?……どこへ、ですか?」
 疑問を口にした私に、菜々香ちゃんは「…トランプ。約束してるから。」とだけ答え、部屋を出た。
 菜々香ちゃんがトランプをする相手と言えば、あの二人しかいない。そう、乙哉くんと神楽くんだ。
(二人と約束してたの引き留めちゃってたんだな…)
 私はお詫びも兼ねて菜々香ちゃんにお菓子を送ろうと決めた。さっきとった桃を使ったお菓子なんてどうだろう。
 ……そうと決まれば、厨房だ!
◆◆◆
「…あれ?雪月?」
 意外にも、厨房には先客がいました。
 そう。彼は、私が大好きな砂原くんだ!いやっほう!
「砂原くん、さっきぶりですね。…桃を剥いているんですか?」
「うん。…よし、出来た。ほら口を開けて?雪月。」
「ええっ?」
「早く。開けないなら、鼻つまんで無理やり開けるよ?」
「そ、それは困ります!」
 別に困りはしない。むしろご褒美だなんて、心の中では言葉と裏腹なことを考えていたりする。
 でも、砂原くんに食べさせてもらえるだなんて、夢のような体験ができるんだから、遠慮するのはもったいない。
 私が口を開くと、砂原くんはポンッと桃を放り込んだ。
 桃は少し大きめで、かじると果汁が口いっぱいに広がった。
 それは今まで食べたことのないほど甘く、私は目を見開いた。
「どう?美味しい?」
 私は桃を飲み込んだ後、とびきりの笑顔で答えた。
「はい!ものすっっっごく美味しいです!!何と言えばいいんでしょうか…。とにかく、今までで一番美味しかったです!!」
「それなら良かった。心を込めて育てた甲斐があるよ。…俺も、食べようかな。」
 砂原くんは微笑んで、桃を口に入れる。
「うん。すごく美味しいね。…雪月と一緒に食べたからかな?」
「何でも、みんなで食べれば美味しく感じますしね!」
 私は砂原くんに同調して答えると、
「……そういうことを言っているじゃなくて…、君とだからって意味だよ。」
「?」
「なんてね、冗談だよ。」
 デ、デスヨネー。
 砂原くんが冗談を言うなんて日常茶飯事だし、気にした方が負けだ。
 私は何も気づかないふりをして、微笑んだ。
「…砂原くん、美味しい桃をありがとうございます!もし、よければその…お礼をさせていただけませんか?」
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