攻略対象外だけど、好きなんです!

藤色

2 「少女は諦めない」

  『四度目の世界で君と』は、巨大飛行船で旅をする十一人の少年少女達の物語だ。主人公をはじめ巨大飛行船の乗船者達は全員、「特殊な能力」を持っている。
 そんな巨大飛行船はある日、襲撃を受け、内側から爆破される。船を狙う外部犯と乗船者の中に内通者がいることが明るみとなり、少年少女達は正体不明の内通者を見つけるため、二人一組でペアを組んでお互いを見張ることとなったーーーー。

 という話だ。ちなみに、ヒロインは三人、攻略キャラは九人いる。

って、あ。 ちょっと待って。

「 ……しまった。ヒロインが三人いたの忘れてた。」

 ヒロインが三人いるということは、 誰に転生するのか分からないのだ。 ヒロインによって、攻略できるキャラが違う。


 まず一人目は、愛日梨だ。
愛日梨は、無知で世間知らずだが母親のように包み込む優しさと誰に対しても敬語で話す礼儀正しさをもった少女だ。特に攻撃力の高い炎を操る能力を持っているが、自分の能力を嫌い、周りには隠している。長い間孤独に暮らしてきたため、自分の名前を忘れてしまうというヒロインだ。

愛日梨の攻略対象は、爽やかな好青年の砂原 隼、引きこもりの緑川 湊、面倒見が良すぎて苦労者な伏見 和樹の三人だ。

 二人目は、入須 雪月だ。
雪月は、公家の出身で、結界を張る能力をもつ少女だ。プライドが高く、高圧的な部分が見えるが責任感が強くしっかりしている。その強い責任感故、自身の中で我慢してしまう所が少々ある。飛行船に乗船するまで、父親や幼馴染の以外の男性と接してこなかったというヒロインだ。

雪月の攻略対象は、幼馴染の美澄 紬、色町出身の神楽 晴翔、襲撃者の逢坂 渚の三人だ。ちなみに、逢坂 渚は飛行船の乗船者ではない。

 三人目は、白井 菜々香だ。
菜々香は、感情を表に出すことが苦手で口数が少ないため、感情が冷淡だと誤解されやすい少女。由緒ある忍者の家系に生まれた。「記憶」を消す能力を持っており、幼い頃は父親の命令でたくさんの人間の記憶を消してきた。
そのため自分の能力を嫌っているヒロインだ。

菜々香の攻略対象は、湊の兄(湊は知らないが)の、東 海斗、酒好きの桐ヶ谷 ロン、犬っぽい乙哉 太一の三人だ。
  
 
私は砂原隼くんが一番好きだったので、愛日梨になって、砂原くんを攻略したいなぁと考えていると、誰かが部屋の扉をたたいた。
 
 「雪月様、お目覚めになられましたか?朝食ができましたので、お着替えが終わられましたら、来てくださいね。」
 「わかりました。ありがとうございます。」

 残念ながら、私は雪月になってしまったようだ。
 でも、私は諦めない。
 それに、雪月の容姿は好きだ。長い黒髪に、茶色の瞳。
 幸い、まだゲーム本編は始まっていないので、巨大飛行船に乗る前までに、砂原くんが好む、愛日梨より魅力的な子にならなければいけない。

 私は考えながら着替えを済ませ、朝食をとりに行った。


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