底辺冒険者
第五話 その男、初依頼に尽き
イルム王国 マタリア近郊の森ーー
やぁ、アルドだよー。今はマタリアから少し離れた森の中にいるよー。ここの森はねー、頭から花を咲かせた、頭花熊って名前の森の熊さんが出てきたり、真っ黒で三つの眼がある黒犬と愉快に追い駆けっこができる不思議の森だよぉー。おっと、今度は溶解液を吐きかけてくるデッカい蛇、溶液蛇が出てきたよぉー。大きいお口だねぇー、オレなんて、一飲みで食べられちゃうぐらい大っきいよぉー。
「じゃ、ねぇだろうが、クソッたれがぁぁぁぁぁぁ!!!」
さっきから出てくる魔物はC級ばっかじゃねぇか!オレは昨日、F級冒険者になったばかりなのに、あのオッサンに嵌められた!何が簡単な薬草採取依頼だよ!それに、支援って言っても、依頼を優先的に見繕って、下級回復薬を少しと簡単な装備だけ渡して終わりじゃねぇかよ!!ギルドに戻ったらあのオッサン、ぶん殴ってやる! っとやっと撒けたか…ハァ……こんなんで本当に魔力が上がんのかよ…。
アルドが今いるのはマタリア近郊の森の奥地。その奥地に泉があり泉の近辺に咲く、下級回復薬の素となる蒼癒草、二十本を採取するのが初めての依頼になる。
依頼報酬は蒼癒草一本につき、鉄貨1枚。依頼で二十本採取だから、銀貨2枚だ。それ以上に持って行っても、ギルドで買取して貰えるみたいで多めに採取しようとアルドは考えていた。
「これだけ探してんのに何処にも見当たらないな。地図だと、ここら辺のはずなんだけどなぁ…」
探しても見つからず、探せば探す程に魔物に遭遇する為、アルドは疲労困憊でいた。だが、少し地図から外れた所に泉で在った場所を見つけた。そう、泉で在った場所だ。今や泉は枯れ、その周りには枯れ、朽ちた草花が落ちていた。
「死ぬ気でここまで来て…ハァ……」
アルドは地面に背面から倒れ天を仰ぎ見ながら、深い、深いため息をついた。半日近くも時間を掛け、見つけ出したが、枯れ果てており、アルド自身も枯れそうだったのだ。しかし、このままでは、埒は空かない為、来た道を帰そうとしたその時、泉の奥、木々が生い茂り大樹が堂々と佇むその隣に不自然にも洞窟があった。地図を確認したが、洞窟があるなどの記載はない。気になるが、こう言う時に洞窟に入るなど、よくないフラグが立つのはアルドも承知でいたーーだが、アルドも冒険者、好奇心には勝てずに洞窟の前まで行き、中を覗いた。が、そこにはただただ暗い洞窟が続くのみだった。息を吐き出し、深呼吸をして、洞窟内に一歩踏み出す。少しカビ臭く、肌に纏わりつく様にジメッとしていたが、それ以上にアルドの勘がこれ以上は進んではいけないと本能に語りかけてきた。すぐさま洞窟から出てギルドへと脚を速らせた。
夕刻ーー
アルドはギルドへ到着し、依頼が失敗した事と、地図には載ってない洞窟の事をギルドの受付嬢に伝えると、ギルドマスターのルーファスが執務室にて待ってると、言伝を聞き、執務室へと向かった。
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