底辺冒険者

あちこち

第ニ話 その男、模擬試験に尽き


イルム王国 準都市マタリアーー




彼、アルドは街の中央にある冒険者ギルドを訪ねていた。
冒険者は粗野で野蛮な者が多く、新入りに絡むイメージがあったがそんな事はなく、ギルドに足を踏み入れた時もこちらをチラッと見ただけで、すぐに興味を無くしたかの様にみな、各々の元の目線に戻った。そもそもまだ朝早く、ギルドの冒険者も10人程度しか居なかったのも原因の一つだった。

アルドはギルドの受付へ進み、冒険者登録をしたい旨を話すと

「かしこまりました。冒険者登録をする上で実戦形式の模擬試験を受けて頂き、試験に合格すると冒険者登録をする事ができますので最初に早速、模擬試験を行いますので試験会場までご案内いたします。」

と、冷たく、機械的に言われた。
アルドは試験がある事を知らなかった。ただ受付に行き冒険者登録出来るものと思っていたのだ。
自分の無知を恥るが、ここで引くわけには行かず、オドオドしつつ受付嬢の後に着いて行き試験会場に入ると、そこには三十後半程の上半身が裸で筋骨隆々な男がいた。


怠気にこちらに眼線をやり、男が口を開く。
「俺が試験官のダリルだ。一応元A級冒険者だが、気は張らなくていいぞ。あくまでも、冒険者になるに相応しい素質を実戦形式で評価するだけだからな。素質がないのに冒険者になって死ぬ奴が多くて去年から試験を行う事になったんだ」
と見た目とは裏腹に優しくも、素質がなければ不合格になると告げられた。

アルドも、負けじと挨拶を返す。
「オレの名前はアルドです。お手柔らかにお願いします」と挨拶をすませた。
するとダリルが試験内容を告げた。

「俺は剣を使うが、お前は得意な武器を使って良いぞ。部屋の隅にほぼ全種類の武器があるから好きに使え。それか、自前の物があるならそれを使ってもいい。魔法が得意なら魔法を使っても大丈夫だ。」

アルドは貧民街で生き抜く為に体は鍛えていたが、武器の類いは使った事がなく、また魔力が少なく魔力が使えず、いつも素手かグローブであった。
アルドは部屋隅へ移動し武器を漁るが、グローブが無く諦めかけたが籠手を見つけそれを装備し、元の位置に戻るとダリルが驚いた様子で話しかけてきた。

「籠手を使うのか?そいつは格闘相手や魔術師相手の接近戦でなら有効だが、剣相手だとかなり不利になるぞ。まぁ お前が構わないならそれでもいいが」

「武器を使った事が無いし、魔法も使えないからこのままで大丈夫です。それに少しは鍛えてますから」

とアルドが答え、ダリルが納得して試験が開始した。

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