勇者育成学校でトップの自称パンピー【凍結】

決事

第三十一話 自称強い少女さんが立ち塞がりました

鋭い、真っ黒に塗り潰された爪が突き出される。
それをそこらに落ちていた剣で弾いて爪を叩き折った。
次にやってくるのは二体の魔物から繰り出される四本の手。
一本目と二本目を受け流し、三本目を肘の関節を下から打って飛ばして、目障りな四本目を勢いのまま剣の腹で殴る。

「パンピーは、休暇中に魔物とやりあったりしない……」

現状をぼやく俺に次から次へと襲いかかる馬鹿どもの相手をしながら嘆き悲しむ。
ああ、一般人の休暇とは何ぞや。
いと悲しゅうていたり。
皇女さんは完全に戦闘狂バトルジャンキーだし、兵士たちもそれに乗っかってイイ笑顔してるし、ここにはまともな奴などいない。

「おいどうした! 手が止まっているぞ!」

そして何故か皇女さんから叱責を受ける。
もう降参する方向で行きましょうや!
そんな俺の願いも空しく、交戦状況はますます苛烈を極める。
というか、これの終わりっていつ?
この魔物の殲滅とか巫山戯たこと言わないよな?
その問いに対する答えは予想外のところから。

「ええとええと……。わ、わたしは魔王の側近である、第一魔衛士、トラストであります!」

正面に、可憐な少女が現れた!
モ○スターボールを投げたりはせず、魔物の攻撃を避け、いなしながら観察。
朱色のボブカットには黄色の水仙に似た花を飾り、足の付け根まで剥き出しにしたショートパンツ、ダボダボのカットソーを身に付けている。
まるで下を履いていないようにも見える。
瞳はおどおどと右往左往していて、なんとも庇護欲をそそる女の子だ。
……て、魔衛士?
なんじゃそりゃ。
少なくとも、前回来た時はそんなものはなかった、と思う。

「わ、わたしは、んと、魔王さま直属の家来で、魔物を守るために来ました!」

魔王はこういう趣味だったのか、と疑いにかかりたくなるこの態度。
取り敢えず、背後に立って言葉をかける。

「じゃ、あんたを倒せばこの場を一件落着ってことか?」

「ひ、ひえ!?」

ババッと腕を交差して身構える様はどう見ても、人間の町娘といった風。

「あ、あなたは一体誰ですか! わ、わたしはこれでも魔衛士の中で5番目に強いんですよ!」

情報をボロボロ漏らしていって大丈夫なのだろうか。
思わず心配してしまう。
それにしても、魔衛士の中で5番目というと、強くなるにつれて数が増えるって解釈を取ればいいのか。
つまり、魔王の前にはこいつも含めた中ボス5人がいると。
定番過ぎて面白みに欠けるが、前よりは、ということで及第点をやろう。


「第一魔衛士とやら……この女、皇女さんがお相手しようじゃないか!」

〜*〜*〜*〜*〜
相も変わらず他力本願ですな、こいつ。
どうにも、俺には自力で物事を解決しようという意欲にあふれた主人公は書けないようです。

自分の書いている作品の話数が合計、記念すべき100話に達しました。
今までご愛読して下った皆さま、これから読んでくれる方々。
これからも精進していきますので、よろしくお願いします。

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