勇者育成学校でトップの自称パンピー【凍結】

決事

第二話 俺ってばパンピー過ぎ

どーもー。
前世15歳プラス今世15歳で計、精神年齢30歳のミネル君だよ☆
ギルソタ勇者育成学校に入って3年目の春です。
つまり俺は3年生になったのです!
いやはや時が経つのは早いものだ。
今年も平穏無事に過ごせますよーに。
二礼二拍一礼するべきかな?


「よう、相変わらずお前起きるの早いな」

井戸の水で顔を洗ってから部屋に帰るとルームメイトが此方を見て笑った。

「おはよう、マース」

彼は父親も母親も農民だそう。
子供の時から勇者になることを夢見ていたため、両親も貯金をしてくれていたんだとか。
なんと美しい家族愛。
対して俺は特にそういう心意気は無し。
そこそこの商家に生まれてこのかた15年。
パンピーとして産まれ、パンピーの矜恃を持って育ち、パンピーらしい道を順調に歩んできた。
まさにパンピーのパンピーによるパンピー人生。
素晴らしい!わんだほー!

「おーい、朝食食いに行こうぜー」

あわよくば、このままパンピー人生を積み重ねていけますように。
…使い方、あってる?

「分かった。今日のご飯は何だろうな?」


「食堂の飯、なかなかに美味いんだ。しかもタダ」
「ミレ、お前は食い過ぎだ」

ちょっぴり食べ過ぎてしまった今日の朝の献立はこちら!
白米!鮭!海苔!味噌汁!
ザ・これぞ和食!
異世界ってもっとこー、なんかないのだろか。

「マースは少食だから俺が大食いに見えるんだ」

食わないと大きくなれないぞーと言ってマリセの頭をポンポン叩く。

「なっ!」

みるみる首から額まで真っ赤になって襲いかかって来た。
それをさっと避ける。

「おとなしく捕まれ!」
「え、なんで、やだ」
「くそっ、なんで掠りもしないんだ〜!」

拳を振り回すマリセから逃げつつ教室へ向かった。


「ーーーであるからして。…はぁ、ハンフリー!聞いているのか!」
「え、ああ、はい」

クスクスと控えめな笑い声が聴こえる。

「そんなんだからいつまで経っても成績が伸びないんだ」

先生に注意を受けるが、その言葉には抗議したい。
確かに伸びていないが落ちてもいない。
安定した成績って大事だと思う。

「そうですね」

あ、また溜息吐いた。
先生、幸せ逃げちゃいますよ?


まあ例年通り適度に頑張り適度に怠け、今日も一日の授業が終わる。
マリセとこの後どうするか相談しながら廊下を歩く。
廊下には見慣れない顔の少年少女たちが数多く居た。

「マース。一年生くんたちは随分と笑顔がぎこちないな」
「そりゃそうだ。天下に轟くギルソタにいるってだけで緊張してるんだろう」

そういうものなのか。

フッ

何かの甘い香りが過ぎ去った。
前世で嗅いだような。
マリセは特に気にした様子は無い。

新入生、甘い香り、レベルが高めの奴。
これに注意しておこうか。
俺のパンピー人生に支障が出ないように。

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