デフォが棒読み・無表情の少年は何故旅に出るのか【凍結】

決事

34 そうだ、遠足へ行こう

ゴルテは、ナイケと話したあの夜から考え込むことが増えたように思う。
彼の様子を聞いてきたり、何かあったことは確かだろう。
しかし詮索するのも憚られ、そのままになっている。
そんないつも通りの日常にちょっとした油が注がれた。

「魔物退治に?」
「そ。話してるの聞いちゃったの! 先生たちが行くか行かないかって相談してて、ちょうど朝起きて顔洗って食堂に向かった時に少しくらいいいかな、と」
今度遠足がある、と連絡されたのは三日前。
日程は明後日。
行き先を決めている現場を盗み見てきたというシータの話によると、郊外の“錯乱の森”が目的地になるらしい。
なんでも、霧が出ているとかで迷いやすいのではなく、魔物が群体で暮らす場所のためにそれを目撃して気が動転し、慌ててどんどん奥に這入って自分の位置が分からなくなるから……なんて由来があるとか。
自慢げにそう解説したのはツツラ。
魔物退治と聞いて今から待ちきれない、と顔に書いてある。
「……でも、やっぱり危ない、よね」
アニセラは自分達がそんなところに行くことを危惧していた。
それは俺も同感だ。
対人ではなかなかの力を持っているとしてもそれすらあくまで子供の力。
大人にかかれば文字通り赤子の手を捻るように返り討ちにされてしまう。
まして魔物なんて冗談ではない。
だから先生も即決せず、時間をかけて吟味しているのだし。
「おはよう。さあ席につけ。この前の遠足の要項だ」
よく読んどけよー。
教室に現れた先生は、盗み聞きしたこと、それを又聞きしたことの後ろめたさから肩を大きく揺らした俺たちを退けて、教卓に立った。
彼の持った紙を束にしてまとめた冊子の表紙には手書きで

“そうだ、錯乱の森へ行こう”

と書かれていた。


〜*〜*〜*〜*〜
そうだ、京都へ行こう……ああ、修学旅行で散々迷った思い出が蘇ります。
なんであんなに短い距離の中、あれだけのバス停があるのでしょうか。
あれぞ錯乱、バス停の森((
ではまた次回。

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